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受賞者氏名:柴田 康行
受賞年月日:平成18年6月21日
賞の名称:第15回環境化学功績賞(日本環境化学会)
受賞対象:環境中の砒素の化学形態及び放射性同位体元素の環境化学研究への
          応用
受賞者からひとこと:
  長寿命放射性同位体分析,並びに元素の化学形態分析の環境研究への応用に関して,表記の賞をいただきました。加速器質量分析法は,宇宙線により地球上で作られる放射性炭素14Cなどの極めて高感度な測定方法です。14C測定というとまず年代測定が頭に浮かびますが,ここでは生きている生物あるいはそれから作られた木材,紙製品などが14Cをわずかながら含む一方,石油石炭などの化石燃料や石油化学製品などには含まれないという違いがあることを利用して,環境中の汚染物質の含む14Cの測定からその主な発生源を探る研究を行いました。特に,環境中の特定の化学物質ごとの14C測定を行うことで,それぞれの化学物質がどのような発生源を持つか,あるいは環境中をどのように動いているかを追跡できる新たな手法の開発と応用を進め,特別研究の推進等にも役立ててきたことが評価されたと思います。一方のヒ素の化学形態分析では,自然界,特に海洋生物に多いヒ素の化学的な構造を明らかにするとともに,人為的な有機ヒ素化合物との区別に関する研究等を行ってきました。これらの研究は森田昌敏前統括研究官の指導のもとに開始されたものであり,感謝の意を表します。

受賞者氏名:長谷川 就一,若松 伸司(現・愛媛大学),田邊 潔
受賞年月日:平成18年9月21日
賞の名称:論文賞(社団法人大気環境学会)
受賞対象:大気環境学会誌第40巻第5号に掲載された原著論文「同一大気試料を
         用いた熱分離法および熱分離・光学補正法による粒子状炭素成分分析
         の比較」
受賞者からひとこと:
  本論文は,大気中の粒子状物質の主要成分である炭素成分の分析法について比較検討したものです。炭素成分の分析では,元素状炭素(煤粒子の主な成分)と有機炭素(数千種類の有機物が含まれるといわれている)を揮発温度の違いによって分別しますが,従来の熱分離法では有機炭素の一部が炭化するため元素状炭素を過大評価することが問題となっていました。一方,近年開発された熱分離・光学補正法は,試料の光反射度・光透過度によってその過大評価分を補正する方法です。しかし,2つの方法の測定濃度がどの程度異なるか十分な知見がありませんでした。本論文では,都市部と郊外で採取した大気試料をそれぞれ2つの方法により測定し,分析法による測定濃度の違いを定量的に明らかにしました。また,大気試料の採取時期(季節),採取地点の周辺環境,粒径範囲や,サンプラーによる測定濃度の違いについても詳細に検討し,大気中における粒子状物質の挙動解明に重要な要因を明らかにしたと評価されました。炭素成分の分析は長年にわたり検討されてきていますが,本論文が当該研究分野の発展に貢献できれば幸いだと思っています。

(長谷川)


受賞者氏名:松本 幸雄・上原 清・林 誠司・若松 伸司・山尾 幸夫
受賞年月日:平成18年9月21日
賞の名称:論文賞(社団法人 大気環境学会)
受賞対象:大気環境学会誌第40巻第6号に掲載された原者論文「風洞実験によ
         る沿道濃度分布の状況把握と高濃度の低減手法の検討 —事例研
         究—」
受賞者からひとこと:
  この論文は,松本幸雄氏((社)国際環境研究協会),林誠司氏(日本自動車研究所),山尾幸夫氏((株)フォーラムエンジニアリング),若松伸司氏(愛媛大学)との共著です。地域密着型環境研究の一環として,2002~2004年度の3年間にわたって行われた「ディーゼル車排出ガスを主因とした局地汚染の改善に関する研究」初年度の風洞実験をまとめました。川崎市池上新町交差点周辺を対象に,高架道路に覆われた幹線道路とその周辺の市街地を簡略に模型化して,高架道路の高さや幅員,高架道路の下に設置された防音壁などが,道路内部や市街地の大気汚染濃度にどのように影響を及ぼすのかを調べたものです。続く2年間,様々な角度からこの地域の大気汚染を調べました。その結果,沿道大気汚染が道路やその周辺にどのように分布しているか,また,沿道の高濃度大気汚染をどのような方法で軽減できるかが分かってきました。

(上原)