環境研へ来て思うこと
巻頭言
理事 仁井 正夫
7月に環境研に着任して以来,すでに半年近く経っていますが,初めての環境研です。よろしくお願いします。環境研ニュースにページをいただいたものの,何を書いたらいいのかわかりません。申し訳ありませんが。この半年弱で感じたさまざまなことを脈絡なくつづってみたいと思います。
就職して以来30年余ほとんどを行政に従事してすごしておりましたが,学生時代の印象でいえば「研究」という業務はいわば憧れの対象でありましたし,自らは管理業務の担当とはいえ,「研究」という業務がものめずらしく,毎日が未知の世界との遭遇という感じでした。千葉,埼玉,茨城と毎日3県を経由しての通勤ですので,「毎日が遠足」といった感じで,着任1ヵ月ほどは(周囲にどう映ったかはよくわかりませんが)今考えても異様にハイテンションであったと思います。ようやく最近少しは落ち着いてきたのかなと思えるようになってきました。
これまでに印象的なことはいくつかありますが,まずは「着任が今年でよかった」ということです。想像でしかないわけですが,中期計画の改訂,それに伴う組織の再編,非公務員化への移行といった一連の作業というものは本当に大変だったものと思います。多くの議論がなされたでしょうし,限られた時間の中でそれらを整理し決めていくということは厳しい作業だったことは間違いないものと思います。
一方で,そうした変革へのドライブをかけたとすれば,独立行政法人という制度はかなり機能しているのだとも思います。人や組織というものは「昨日またかくてありけり,今日もまたかくてありなむ」といったように,基本的には保守的なものと思います。まったく独自での自己変革ということはよほどの危機に陥ったか,強固な意志と強いパワーのもとでなければなかなかできることではないものと思います。5年ごとにやってくる中期計画の改訂を上手に活用し不易流行を見極めて変革を遂げるということができればと思います。
と,同時に誤解かもしれませんが,やや残念なのは第1期についての組織的な総括が十分とは思えないことです。個々人の思いはありましょうが,組織全体の認識とするには至っていないとの印象です。これは研究活動で生み出すそれぞれの「知」についても同様で,研究成果そのものは個々の研究者や研究グループのものと思いますが,これを組織の知,社会の知にする努力はもっと力を入れるべき部分と感じています。
研究者の環境をめぐる変化には,驚かせられました。遠くで聞いているのとまじかで見るのとは大違いです。研究者を志す者にとって酷な時代になってしまっているなというのが率直な感想です。同時に単に個人に酷なだけでなく,こうした方式が本当に効率的にいい成果に結びつくものかどうかについてはもっともっと考えるべきことと思えます。これから若者が減少していく時代に本格的に突入しますが,研究界全体のこととして考える必要があると思います。
環境研のことで言えば「技術」というものをどう考えるかは大きな課題のように思えます。これまで環境研では機構解明等に中心がおかれ,計測技術を別とすれば技術そのものにやや距離をおいたところがあったように思います。これはその時点では限られたリソースの中で賢明な選択であったと思います。一方で,今後の環境政策においては「この程度のコストなら」といったコストセンス,技術センスが政策決定に極めて重要な要素となる領域が増えていると思います。環境研において技術センスを磨いていくにはどうしたらいいか,これは組織としての大きな課題と思えます。
勝手なことを書かせていただきました。いずれにしても,窓の外のシャラの木を,また遠くには赤松を眺めながら,鳥のさえずりを聞きながら,おかげさまで楽しく毎日を過ごしております。よりよい研究環境を整備することにより,所としてのいい成果につながることを願って努力していきたいと思いますので,所内,所外の皆様方のご指導,ご鞭撻をお願いして雑文を閉じたいと思います。
(にい まさお)
執筆者プロフィール:
昭和49年に厚生省に採用されて以来,環境,廃棄物,水道(水資源を含む)の分野をほぼ1/3のシェアで過ごしてきました。これまで,1年半の青森出向を除き霞ヶ関で過ごしてきたので,つくばでの仕事はきわめて新鮮です。目下の課題は,ここ数年単調増大となっている体重に如何に歯止めをかけ,反転させられるかです。