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国立環境研究所から未来のためのメッセ−ジを期待

大塚 宏

 奇跡中の奇跡と思われる微妙なバランスの中に地球が誕生し,45億年の歳月を経て多種多様の生物が生存する環境が作られた。この気の遠くなるような歳月の中で人類の誕生はわずか数百万年前だと言う。しかも,記録に残っている人類の文明はたかだか数千年でしかない。しかし,この数千年の間,人類の繁栄のかげで絶滅した生物も数多くあると聞く。

 そして,20世紀に入ってからは地球上の環境汚染・破壊が漸次進み始め,特にここ数十年はそれが顕著になってきた。

 地球上の環境破壊は何に起因するのであろうか。どうも人間の数の膨張と高度な文明の発達(というと体裁がいいが,ほんとのところは恐ろしいスピードで生活の利便性の向上を追求した結果に過ぎない)が原因であろうと思われる。1914年にフォードによる車の量産体制の構築に端を発してアメリカにおいてエネルギーと資源の大量消費が始まった。我が国では第2次世界大戦が終了後経済復興を成し得,目覚しい勢いで経済成長を遂げ,世界第2位の経済大国にまでなった。国民の生活水準は飛躍的に向上し,今日ではほとんどの家庭で電気掃除機,冷蔵庫,エアコン,車を持つまでになった。日本も一大エネルギー消費国になったのである。一方この反作用で一時は公害列島と言われるほどに空気・水・土壌が汚れ,国民にも健康被害をもたらすこととなってしまったのである。

 かくして政府は公害の撲滅のため国立公害研究所を設置する必要に迫られた。1974年のことである。それから16年公害被害もかなり改善され研究の知見も蓄積されたので,これを期に国立公害研究所を発展的に地球規模での環境までを対象として研究する国立環境研究所に衣替えした。今日では,空気・水・土壌・生物・化学物質さらには資源リサイクルや社会環境までおよそ環境に影響を与える総てを包括し,国内はもとより諸外国の環境研究機関とも連携して地球規模で環境を研究する研究所となっており,研究水準は高く世界に誇れる研究所となった。

 環境研究は環境が破壊されている事象に着目してその原因を突き止めることによって破壊の要因が取り除かれる方策を提言をし,また,対象によっては修復の手法を確立して環境の回復を手助けすることを使命としている。まだ原因がつかめてない研究事象も数多く存在しているし,修復の手法確立も道半ばというものも多い。

 しかし,世界に目を転じると今日でも環境破壊はいたる所でハイスピードで進んでいる。開発途上国では人口の爆発的増加のため次から次へと森林を焼き農地を増やし,工場をどんどん作り工業化を進め高い経済成長率を達成し,この結果国民の生活水準も向上してエネルギーの高消費国にならんとしている。

 環境保全並びに修復は急がねばならない。地球規模での持続的社会を築くため,適正人口,CO2濃度,資源の使用量,農地の使用面積,森林の面積,水資源の管理,化石燃料の使用量等をグローバルに捕らえた総合的・統合的な研究が必要なのではないだろうか。研究所の研究者がまとめた国立環境研究所の長期ビジョンの中で環境研究の課題として,環境立国(地域)のビジネスモデル作成のための総合的地域研究というのがあり,このなかでアジア地域,日本,県(流域),広域市町村での持続的社会のビジネスモデルを作るということがあげられている。この中で日本を対象とした研究では科学技術立国と環境立国を両立させる道筋を作ることを目指したいと記載されている。これらの研究をグローバルな視点で進めれば,地球規模での持続的社会のビジネス&ヒューマンライフモデルを示せるのではないか。これは将来の人類にとってすばらしいメッセージとなろう。期待したい。

 (おおつか ひろし)

執筆者プロフィール

 公認会計士人生36年,齢60を過ぎた。普通ならSunday毎日のはずがどうしたことか海軍勤務(月月火水木金金)。気力・体力何時まで持つか。でも明日はまた新しい。さあ頑張ろう!