第15回全国環境・公害研究所交流シンポジウム
-ダイオキシン等有害化学物質に関する環境研究について-
牛場 雅己
平成12年2月16~17日に,「ダイオキシン等有害化学物質に関する環境研究について」というテーマで,第15回全国環境・公害研究所交流シンポジウムを開催した。この交流シンポジウムは,「環境研究に関する研究発表,意見交換を通じて地方公害研究所(以下,地公研)と国立環境研究所(以下,国環研)の研究者間の交流を図り,共同研究等の新たな展開に役立てるとともに,環境研究の一層の推進を図ることを目的とする(全国環境・公害研究所交流シンポジウム実施要領)」という趣旨で,第1回目の昭和61年以来,毎年第4四半期に開催している。
今回も例年通り,当研究所大山記念ホールにおいて,国環研内に設置しているセミナー委員会の主催により開催した。
環境問題の複雑化・多様化が進む中で,国環研,地公研とも,それぞれ研究課題の多様化が著しく,本シンポジウムのテーマ設定に際し,事務局としては毎年頭を悩ませているのが実状であった。
ところが,今年度は,事務局としては大変幸運に恵まれ,事前に地公研に対して行ったアンケート結果において,今,まさに全国的に話題を独占する環境問題の一つであり,国環研,地公研とも緊急な対応が求められている本テーマを希望する回答が多数を占め,比較的迷うことなく,時機をとらえたテーマを設定することができたと考えている。
このようなことから,昨年以上に多数の参加者にお集まりいただくことができ,最新の研究成果を共有するとともに,活発な意見交換により,今後の具体的な本研究の進むべき方向性がより明らかになったものと考えている。
前置きが長くなったが,シンポジウムは,2日間合わせて13件の研究発表と,特別講演2題という構成で行われた。
初日は,第1セッションとして「ダイオキシン類の分析について」,第2セッションとして「ダイオキシン類の監視について」,二日目は,第3セッションとして「内分泌撹乱化学物質について」という各小テーマで,地公研サイドから研究発表を行っていただいた。
特別講演では,国環研の地域環境研究グループ有害廃棄物対策研究チームの安原昭夫総合研究官から「小型焼却炉におけるダイオキシン類の生成要因」,国環研の環境健康部の遠山千春部長から「ダイオキシン・「環境ホルモン」の何が問題か?」と題して,それぞれ廃棄物対策,健康影響評価の立場からの最新の話題が提供された。
シンポジウム終了後には,昨年に引き続き,国立環境研究所の施設見学会も開催し,シンポジウムに参加された地公研の一部の方々に所内の研究施設をご覧いただいた。
シンポジウムの参加者は地公研を含む自治体関係者が141名,環境庁から3名,国環研から35名の合計179名と,前年度に比べ6割増の参加者数であった。
来年度は16回目を迎え,独立行政法人化を目前に控え,国の研究機関として開催する最後の交流シンポジウムとなるが,国環研と地公研の協力のさらなる展開と活性化を目指して,より有意義なシンポジウムとなるよう,開催テーマ等について検討していきたいと考えており,諸兄諸姉からの積極的な提案をお待ちする次第である。
プログラム
平成12年2月16日(水)
開会挨拶…国立環境研究所長 大井 玄
来賓挨拶…環境庁企画調整局環境研究技術課長 勝又 宏
1.研究発表(第1セッション)ダイオキシン類の分析
座長:伊藤裕康(化学環境部計測管理研究室主任研究員)
- ダイオキシン類の揮散に関する検討
- 鈴木 滋(宮城県保健環境センター)
- コプラナーPCB及びダイオキシン類同時定量のための前処理方法の検討
- 村山 等(新潟県保健環境科学研究所)
- 水試料中ダイオキシン類分析のための前処理方法の検討
- 種岡 裕(新潟県保健環境科学研究所)
- 大容量注入装置を使用したイオントラップ型GC/MS/MSによるダイオキシン類分析法の検討
- 中村朋之(宮城県保健環境センター)
- 底質中に含有されるダイオキシン類分析法の検討
- 角脇 怜(愛知県環境調査センター)
2.研究発表(第2セッション)ダイオキシン類の監視
座長:中杉修身(化学環境部長)
- 家庭用焼却炉からのダイオキシン排出状況
- 辰市祐久(東京都環境科学研究所)
- ゴミ焼却炉におけるダイオキシン類の挙動
- 井上三郎(大阪市立環境科学研究所)
- 水生昆虫(ザザ虫)を指標とした河川ダイオキシン類モニタリングの検討
- 村瀬秀也(岐阜県保健環境研究所)
- 食餌試料を通したダイオキシン類(PCDDs, PCDFs)の魚体への蓄積
- 中牟田啓子(福岡市保健環境研究所)
平成12年2月17日(木)
3.研究発表(第3セッション)内分泌攪乱化学物質について
座長:白石寛明(化学環境部計測管理研究室長)
- 固相抽出-電気化学検出器付きHPLC法によるビスフェノールA,エストロゲン一斉分析法の検討並びにその応用
- 橳島智恵子(東京都環境科学研究所
- 環境ホルモン関連物質の多成分分析法
- 劒持堅志(岡山県環境保健センター)
- 都市沿岸域におけるPOPs汚染の現状
- 角谷直哉(大阪市立環境科学研究所)
- 酸化チタン光分解を用いた環境ホルモン物質の処理
- 谷崎定二(北九州市環境科学研究所)
4.特別講演
座長:柴田康行(化学環境部動態化学研究室長)
「小型焼却炉におけるダイオキシン類の生成要因」
安原昭夫(国立環境研究所地域環境研究グループ有害廃棄物対策研究チーム総合研究官)
「ダイオキシン・「環境ホルモン」の何が問題か?」
遠山千春(国立環境研究所環境健康部長)
閉会挨拶…国立環境研究所副所長 合志陽一