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国立環境研究所特別研究報告(SR-24-'98)
「湖沼環境指標の開発と新たな湖沼環境問題の解明に関する研究」(平成4~8年度)(平成10年3月発行)

 最近,日本の湖沼では藻類種や生態系構造の変化,魚の大量へい死など,異常な現象が発生した湖沼も多く,このような問題の解析や解決のためには,新たな現象の解明および従来の湖沼環境指標にかわる新たな指標の開発が必要である。そこで本特研では,流域特性と水質との関係評価に関する研究,湖沼環境指標に関する研究,ピコプランクトンの異常発生機構に関する研究の三課題を行った。その結果,湖沼環境の保全のためには,森林などの管理を含めて流域管理を適切に行うこと,水耕生物ろ過法等による湖沼直接浄化法も効果があることを示した。また,環境基準項目として過マンガン酸カリウム法によるCODを見直すべきこと,有機物の起源,生分解性に関わる特性が化学分析により測定可能であること,DO,pH等のモニターから生物活性が連続測定可能であること,等の知見が得られた。ピコ植物プランクトンに関しては,チオンスルフォリピドという毒性物質を発見し,ピコ植物プランクトンの異常増殖は湖沼の生態系が不健全であることを意味していることを明らかにした。(地域環境研究グループ 松重一夫)

国立環境研究所特別研究報告(SR-25-'98)
「環境中の有機塩素化合物の暴露量評価と複合健康影響に関する研究」(平成4~8年度)(平成10年3月発行)

 有機塩素化合物は,化合物の安定性,化学合成中間体としての有用性から,化学工業製品の中でも種類,割合はきわだって多い。一方,「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づいて規制されている化学物質の多くが有機塩素化合物であり,有機塩素化合物の安定性,殺菌殺虫作用といった有用性が環境中での難分解性,有毒性につながっている。本研究では,環境に残留する有機塩素化合物の健康影響を体系的に評価するために,環境中の多種類の有機塩素化合物の暴露量評価及び健康影響評価に関する研究を行った。暴露量評価に関する研究ではどういう有機塩素化合物がどこに(大気,水,土壌,底質)どれだけあるかの総合評価を目的として,GC/質量分析法による多成分一斉分析,全有機ハロゲン(TOX)測定とその発生源推定,含塩素製品の国内生産量から推定した有機塩素化合物の環境放出量などが示されている。複合健康影響評価に関する研究では,in vitroおよびin vivo試験系を用いて毒性評価を行い,in vivoデータとの比較からin vitro試験系の有用性の検討,および用いる細胞の由来臓器と毒性を評価する化学物質の標的臓器が同一である必要があるかの検討を行った。胎仔毒性(催奇形性)を検出する系では,混合物の相互作用の検討結果を示している。(化学環境部 相馬悠子)

国立環境研究所特別研究報告(SR-26-'98)
「環境負荷の構造変化から見た都市の大気と水質問題の把握とその対応策に関する研究」(平成5~8年度)(平成10年3月発行)

大気編

 上記特別研究の研究成果をとりまとめたものである。このプロジェクト研究は都市構造や生活スタイルの変化が都市の大気環境に及ぼす影響をフィールド研究,室内実験,モデル解析等により把握し,改善対策に関する検討を行うことを目的として実施された。都市域の拡大と自動車の増加による発生源の拡大により大気汚染が広域化していること,これに伴って光化学大気汚染などの二次生成大気汚染の高濃度発生地域が都心から郊外に移動してきていることなどが述べられている。(地域環境研究グループ 若松伸司)

水質編

 生活様式の変化や多様化は排水や廃棄物の質や量を大きく変化させており,特に都市周辺地域における小規模未規制排水による表流水系の汚染が大きな問題となりつつある。環境負荷の構造変化に伴う地域の環境要因の悪化を早急に食い止め,改善に向かわせることが急務である。このような観点から環境負荷の構造変化が都市環境に及ぼす影響の把握とその対応策に関する研究を行った。その結果,水質問題の実態解明に基づく将来予測として,トイレの水洗化に伴い生活排水からBOD負荷が減少するのに対して,窒素,リン負荷,特に窒素の負荷が増加することによるN/P比の上昇により有毒藻類の異常増殖が起こる可能性があること,水環境負荷削減技術開発および水環境改善対策の効果の評価として,嫌気好気生物膜処理浄化槽に循環を組み込んだプロセスによって有機物および窒素の高度処理が可能であり,費用効果から考えても高く評価できること等が明らかとなった。また本技術開発の成果は,建設省の窒素・リン除去型の建築基準法の構造基準に導入され,水改善効果に対する大きな期待がもたれている。(地域環境研究グループ 稲森悠平)

国立環境研究所研究報告(R-136-'98)
「21世紀の私たちの環境を考える—環境庁国立環境研究所公開シンポジウム—」 (平成10年6月発行)

 国立環境研究所が,前身の国立公害研究所として設立されてから,来年で25年(四半世紀)となる。時代は21世紀を目前に控え,環境問題は,地球規模に至る「空間的ひろがり」,世代間の影響のおそれなど「時間的ひろがり」,さらには汚染原因者と被害者の境界の不明確化など「人間社会における関係のひろがり」を持つに至った。一方で,社会全般にわたるリストラの中で,国立研究所の整理統廃合,エージェンシー化の検討など研究所をとりまく環境にも大きな変化が現れつつある。

 こうした状況の中で,毎年環境月間に行う国立環境研究所研究発表会を,今年度は東京・青山の国連大学において,広く市民を対象に研究成果をアピールする「公開シンポジウム」という形態で開催した。本報告書はそのシンポジウムの要旨集という位置付けのものであり,4テーマ8名の口頭発表及び20件のポスター発表の概要が収録されているほか,全研究スタッフの氏名,主要研究課題及び電話番号・E-mailアドレスを掲載している。(研究企画官 笹岡達男)