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全国公害研協議会長 岐阜県保健環境研究所長 井口 恒男

 従来,地球環境対策には“Think globally,Act locally”を重視し地域レベルから地道に足元からの省エネ省資源のライフスタイルが要求されております。また,リサイクル等の推進もそれなりに効果をあげております。ところが我が国だけをみても国民も企業も含めた国ぐるみの環境保全志向の動きは未だ小さく,歯がゆい思いを感じます。岐阜県においても「ラブ・アースぎふ運動」が展開されており,隗より始めるべく県が率先して再生紙の使用やブルーリバー作戦などを実践していますが,省エネ対策などをみると地域の活性化と相いれない場合もあり,“Act locally”の難しさを感じます。

 このような中で今一番大切な施策は国レベル,世界レベルでの抜本的な施策であるように思われます。石油に代わるべき低公害のエネルギー開発や低公害車の開発の推進,森林破壊につながる熱帯木材の輸出入の制限,植林の推進,フロンの回収,生態系のサイクルにのった農林業経営の推進,分別回収を始めとするリサイクル社会の構築やリサイクル志向への産業構造の転換など,国レベルや国際レベルで最重要課題として取り組むべきものと考えます。ようやく環境基本法や容器包装リサイクル法の制定,地球サミットなどそれなりの動きがみられており,今後の対応を期待しております。

 ところで国の環境行政を支えているのが国立環境研究所を始めとする国立研究機関ですが,我々地方の研究機関も国レベルのモニター事業である機能として酸性雨,地下水,河川,大気,放射能などの測定に参加しており,今後ともその機能の強化に努めたいと思います。モニター機能の他,地方の研究機関においても各機関が環境改善に向かってそれぞれ独創性のある研究にも取り組んでいるところも多く,その成果は学会,研究会等で発表されております。しかし,予算や人材面で地方の研究機関には限界があり,ニーズの高い環境改善や環境破壊の未然防止に関する研究は国立機関に最も期待したい課題と考えます。地方にも優秀な人材がおり,これらの課題に共同研究として参加することは非常に意義のあることであり,地域密着型研究など地方機関との共同研究もより推進して頂きたいと思います。また,国際協力の上で諸外国の研究機関との共同モニター,研修,技術協力も国立機関の重要機能と思いますが,国環研他皆さんの協力のもとに地方機関も積極的に参加できるような環境整備に努めたいと思います。

執筆者プロフィール:

専攻公衆衛生学
H45年岐阜県職員,S60〜H5衛生環境部長
H5〜現在 岐阜県保健環境研究所長
H7〜 全国公害研協議会長