環境研究への期待
国務大臣・ 環境庁長官 広中 和歌子

今日の環境問題は,我々の暮らしに関わる身近な問題から地球環境問題にまで広がり,我々の子孫の世代までをにらんだ様々な対策が必要となっております。そして,21世紀にどのような形で豊かな社会を残していくのか,自然と人間の協調をどのように図っていくのかという大変重要で難しい問題を解決していかなければならないと考えております。
こうした中で,今後我が国としては,これまでの社会経済システムのあり方や行動様式を見直し,環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を目指すとともに,地球サミットにおける合意の実現に向けて,その経験と能力をいかし,国際的協調の下に地球環境の保全に積極的に取り組んでいくことが必要です。
このため,政府としては,地球環境時代に対応した新たな環境政策の展開に不可欠な環境基本法案の一刻も早い成立に向けて努力しているところであり,今後,その枠組みの下で環境研究をより一層推進し,しっかりとした科学的な基盤に立って環境政策を推進していくことが重要であると考えております。
特に,地球温暖化やオゾン層破壊等の地球環境問題や有害化学物質,先端技術による新たな環境汚染の問題等に適切に対応していくためには,科学技術の開発・振興が不可欠となっております。
また,我が国においては,戦後の急速な経済成長により生じた様々な公害問題を克服してきた経験をいかし,現在,当時の日本と同様の,あるいは,それを上回るとさえいわれる激甚な公害問題に直面している国々に対して,我が国が積極的にリーダーシップを発揮し,これらの問題の解決に当たっていくことが求められており,そのためにも科学技術の果たす役割は,大変大きなものがあります。
こうした状況の中,我が国の環境研究の中枢機関である国立環境研究所の果たす役割は,ますます重要となってきており,皆さんへの期待も従来にも増して大きくなってきているところであります。
所員の皆さんが,今後より一層の研鑚を重ね,さらなるご活躍をされることを期待しております。
目次
- 新任にあたって論評
- バイカル湖と霞ヶ浦論評
- “酸性雨”に関する最近の研究プロジェクト研究の紹介
- 有害廃棄物の処理に伴うリスクの評価プロジェクト研究の紹介
- “Pulmonary Clearance and Toxicity of Intratracheally Instilled Cupric Oxidein Rats.”Seishiro Hirano, Hisae Ebihara, Soichi Sakai, Naomi Kodama andKazuo T. Suzuki:Archives of Toxicology, 67, 312-317 (1993)論文紹介
- “Vertical profiles of temperature and ozone observed during DYANA Campaignwith NIES ozone lidar system at Tsukuba”Hideaki Nakane, Sachiko Hayashida, Yasuhiro Sasano, Nobuo Sugimoto,Ichiro Matsui and Atsushi Minato:Journal of Geomagnetism and Geoelectricity, 44, 1071-1083 (1992)論文紹介
- 特別研究ワークショップ「ディーゼル排気微粒子(DEP)の生体影響」ネットワーク
- 国際シンポジウム「生物多様性−その複雑性と役割」
- 新刊・近刊紹介
- 主要人事異動
- 編集後記