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2017年6月30日

内分泌かく乱化学物質ビスフェノールAの健康への影響:種差はあるのか?

コラム4

 内分泌かく乱物質は、「内分泌系の機能を変化させることにより、健全な生物個体やその子孫、あるいは集団(またはその一部)の健康に有害な影響を及ぼす外因性化学物質または混合物」と、世界保健機関・国際化学物質安全計画で定義されています。これまで、欧米では、内分泌かく乱化学物質とホルモン関連疾患の関係に関して多様な研究が続けられてきました。2015年から、欧州食品安全機関では、内分泌かく乱物質の一種であるビスフェノールA(BPA、図4A)の再評価が始まっています。また、2017年には、米国国家毒性プログラムによるげっ歯類の実験動物を用いた内分泌かく乱物質の発がん試験の結果が公表される予定です。

 内分泌かく乱物質の作用メカニズムの一つとして、核内受容体に作用して転写活性を示すことが知られています。BPAは、動物実験において、最初にエストロゲン受容体α(ESR1)に作用して、エストロゲン様作用を示す活性物質アゴニストであると同定されています(図4B)。また、BPAはESR1だけでなく他の核内受容体の特異的結合物質リガンドにもなりうるため、内分泌生殖疾患の病態の各ステージに影響を及ぼす可能性があります。疫学研究では、BPAの曝露レベルが高くなると、精子数や性ホルモンレベルが低くなるという逆相関の関係であることが報告されています。その曝露レベルは、妊婦の血清、臍帯血、胎児血清、羊水および胎盤で、1-4ng/mL BPA(4-16nM相当)の範囲でBPAが検出されています。インビトロの実験では、BPAがヒト細胞においてステロイドの産生を直接阻害することが示されており、ヒトと動物ではBPAに対する応答性が異なることや濃度によって作用点が異なることなどが、精巣のテストステロン分泌細胞を用いた実験で明らかになっています(一例、図4C)。

図4(クリックで拡大画像を表示)
図4 ビスフェノールA(BPA)の作用機構とテストステロン産生に対する影響
A.ビスフェノールAの化学構造式。
B.内分泌かく乱化学物質の毒性メカニズムにおける初期反応:TCDD, BaP(ベンツ[a]ピレン)、BPAなどは、さまざまな核内受容体に作用し、各核内受容体に特異的な遺伝子発現の誘導を示します。この遺伝子発現の変化がタンパク質レベルの変化、シグナル伝達の変化、細胞機能の変化へと結びついていきます。
C.テストステロン産生における前立腺のヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞におけるBPAの用量作用変化を示したグラフ。*,**は、統計的に有意な変化を示す。

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