注意喚起の仕組みと判断方法について
コラム3
コラム2にあるように、各地方公共団体は「PM2.5の1日平均値が暫定的指針値(70μg/m3)を超えると予想される場合に注意喚起を行うこと」とされました。暫定的指針値を超えるか否かの判断手法についても指針が示されており、その仕組みについて説明します。
注意喚起の判断は、都道府県もしくはそれらを複数に分割した区域(分割するか否かは各自治体に任されています)において行われています。判断手法は2段階に分かれており、1つは午前中の早目の時間に判断するために午前5時から7時の平均値に着目する方法、もう1つは午後からの活動に備えて判断するために午前5時から12時までの平均値に着目する方法です。前者は区域内で2番目に高い測定局での値が85μg/m3を超えたときに、後者は区域内の最大値が80μg/m3を超えたときに、それぞれ注意喚起を出すとされています。
例えば光化学オキシダントの注意報は、その濃度が120ppb(ppbは10億分の1)を超え、それがしばらく継続すると判断されるときに出すことにされています。そこで、観測値が120ppbを超えるかどうかを注視し、近隣の測定局での値と風向きなどに着目すれば、観測データだけで注意報の必要性を容易に判断することができます。
一方、PM2.5の注意喚起の判断のむずかしさは、その基準が日平均値に基づいていることにあります。つまり、日平均値が70μg/m3を超えるかを判断することは、24時間分の積算値が1680(=70×24)μg/m3を超えるかどうかを判断することです。午前中にいくら低濃度が続いても、午後になって高濃度が続けば日平均値が暫定指針値を超える可能性はありますし、逆に午前中に高濃度が続いても、(その積算値が1680μg/m3を超えて注意喚起の必要性が確定する場合を除き)それ以降ほぼゼロの濃度が続く可能性は否定できません。そのため、数値予測の精度を数年以内に改良し、注意喚起の判断に用いたいと考えています。
目次
- PM2.5の観測とシミュレーション~天気予報のように信頼できる予測を目指して~環境儀 No.64
- 精度の高い微小粒子状物質(PM2.5)の濃度予測モデルを目指してInterview研究者に聞く
- 大気汚染予測の仕組みと改良点コラム1
- 最近のPM2.5の状況(環境基準と暫定的指針値)コラム2
- 大気汚染予測システムVENUSコラム4
- PM2.5の動態把握に関する研究からSummary
- PM2.5の観測および数値シミュレーションに関する動向研究をめぐって
- 国立環境研究所における「PM2.5の動態把握およびシミュレーションに関する研究」のあゆみ
- 過去の環境儀から
- PDFファイル環境儀 NO.64 [5.7MB]
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