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コラム1「イボニシとインポセックス」

 イボニシは大人の人差し指の第一関節くらいの大きさの貝です。小型の巻貝で、日本では北海道の積丹半島以西から、鹿児島県まで広く分布しています。岩場にごく普通に見られます。市場価値はありませんが食べられるので、地元の人は酒のつまみなどとして採る場合があります。

 イボニシの雄には右の触角の後ろにペニスがあり、輸精管もあります。一方、雌にはペニスも輸精管もなく、輸卵管があります。

 インポセックスは、Imposed sexual organを短縮させた造語であるといわれています。雌の証である輸卵管を持っているにもかかわらず、ペニスか輸精管の少なくとも一つを持っているものとして定義されます。また、ある地点で採集された雌の総数に対する、インポセックスになった雌の割合をインポセックスの出現率と呼びます。

 なお、インポセックスの症状には軽いものから重いものまであり、症状の見方には二つの方法があります。

 一つは相対ペニス長指数(Relative Penis Length Index: RPL Index)。これは雌雄のペニスの長さの比に基づく指数で、RPL={(その地点の雌の平均ペニス長)÷(その地点の雄の平均ペニス長)}×100となります。RPLは0~100の数値で表わされ、たとえば40だとその地点の雌の半数以上が産卵できなくなっています。

 もう一つは輸精管順位指数(Vas Deferens Sequence Index: VDS Index)です。これは輸精管の発達の程度を表わす指数です。ペニスと違い、定性的な評価法ですが1~6に分類されます。数字が大きくなるにつれて症状が重くなり、5と6が産卵できなくなった不妊個体です。

イボニシ写真1
イボニシ写真2
イボニシ写真3
左:オス、中:メス、右:インポセックスのメス