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有機スズと生殖異常
- 海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響

環境儀 NO.17

堀口敏宏
フィールド調査と実験から内分泌かく乱作用に関する新しい仮説が検証されつつあります。

 有機スズ化合物がごく低濃度で、巻貝のなかの前鰓(ぜんさい)類に影響を与え、雌を雄性化させることが明らかになっています。しかし、メカニズムは不明のままでした。これを巡って、「性ホルモンのアンバランスが雄性化を引き起こす」などを筆頭に、さまざまな仮説が登場しました。そのような中、これまでの視点をガラリと変える「性ホルモンによらない雄性化」の斬新な知見に基づく仮説が国立環境研究所から生まれました。この仮説は、今後の「巻貝の雄性化」の研究を発展させる上で新しい糸口を示しています。国立環境研究所では、『環境ホルモン問題』に対して「重点特別研究プロジェクト」として以前から研究に取り組んでいます。本号では、その中から巻貝に及ぼす「有機スズ」の内分泌かく乱作用について、自然界における影響を明らかにするための個体群を対象とするフィールド研究と、なぜそのようなことが起こるのかを明らかにするための実験室における雄性化のメカニズム研究の最新動向を紹介します。