コラム「富栄養化と有毒アオコ」
富栄養化
有毒アオコ
富栄養化に伴い発生するアオコ(ミクロキスティス属やオシラトリア属等の単細胞あるいは糸状の藍藻類(シアノバクテリア)の仲間)は,異常増殖して湖沼等閉鎖性水域の生態系の破壊や有毒物質,カビ臭物質の産生による利水障害などを引き起こします。中には有毒物質を含有する種類も存在し,アオコが原因で家畜や人が死亡する事例も起き,牛,羊,馬などへの被害は開発途上国だけでなく米国やオーストラリア,フィンランドなど先進国からも報告されています。
この有毒物質はアオコの代謝産物で「ミクロキスチン」と呼ばれ,猛毒の青酸カリに比べ60倍も毒性が強いといわれています。アオコがどのようにして有毒物質を生産するようになるのかはまだ解明されていませんが,有毒アオコは世界中の富栄養化した湖沼から頻繁に検出されています。ブラジルのペルナンブッコ州カルアル−市の病院では,自家水道にミクロキスチンが混入し,50人以上が死亡するという悲惨な事故も発生しました。
なおWHO(世界保健機関)は,ミクロキスチンの飲料水質ガイドラインとして暫定基準を1μg/lと定めています。