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2016年10月31日

ごみのリサイクル率

特集 新たな段階の循環型社会づくり
【環境問題基礎知識】

河井 紘輔

 循環型社会の構築に向け、廃棄物を適正に処理するだけでなく、リデュース・リユース・リサイクルの3Rが重要な課題となっています。環境省は一般廃棄物(以下、「ごみ」といいます。)の排出量、リサイクル率(排出量に対するリサイクル量の割合)、最終処分量に関する国全体の目標値を定めていて、平成32年度における排出量は平成24年度比で約12%削減、リサイクル率は約27%、そして最終処分量は平成24年度比で約14%削減を目指しています(図1)。

図1 ごみの排出量及び最終処分量(左軸)、リサイクル率(右軸)の推移と平成32 年度の目標値(環境省のデータをもとに作成)
図1 ごみの排出量及び最終処分量(左軸)、リサイクル率(右軸)の推移と 平成32 年度の目標値(環境省のデータをもとに作成)

 国民や事業者の努力に加え、人口減少や経済停滞の影響により、ごみの排出量及び最終処分量はこれまで順調に減少してきました。これまでの傾向を踏まえると平成32年度の排出量及び最終処分量の目標値は十分達成可能なものと予想されます。一方で近年のリサイクル率の増加は頭打ち傾向にあり、平成19年度以降は横ばいで推移しています。平成32年度にはリサイクル率27%を目標に掲げていますが、これを達成するためには様々な主体による、より一層の努力が求められます。

 さて、リサイクル率とはどのように計算されるのでしょうか。図2は環境省が定義するごみ処理のフローを簡略化したものですが、リサイクル量とは直接資源化量と中間処理後リサイクル量と集団回収量を足し合わせたもののことを言います。

図2 ごみ処理フロー
図2 ごみ処理フロー

 直接資源化量とは自治体(あるいは委託業者)によって資源化物として収集され、リサイクル業者へ直接引き渡されたごみ量、中間処理後リサイクル量とは焼却処理などの中間処理で発生した残渣のうち資源として利用されたごみ量、集団回収量とは小学校や町内会などの地域団体によって資源物として回収され、リサイクル業者に引き渡されたごみ量のことを意味します。そして、リサイクル率とはごみ排出量に占めるリサイクル量の割合(%)と定義されています(式1)。

式1

 環境省が公開している一般廃棄物処理実態調査(平成26年度)によると、中間処理量のうち、直接焼却された量は国全体で3,347万トン/年で、これはごみ排出量(4,432万トン/年)の約76%を占めることを意味します。ダイオキシン対策や市町村合併により焼却処理の広域化・集約化が進み、20年前に比べればその数も随分減ったのですが、それでも平成26年度の時点で焼却施設は全国で1,162施設あり、世界的に観ても焼却施設数と焼却率は群を抜いています。焼却処理の目的は、減量化及び衛生処理です。ごみを焼却処理すると重量は約6分の1に減ります。最終処分場の確保が困難な日本では1960年代以降、焼却施設が急ピッチで建設され、最終処分量の削減に貢献してきました。また、近年では大型の焼却施設を中心に、余った熱を回収して発電したり、施設内の暖房や給湯での利用、さらには施設外の温浴施設への温水・熱供給を行う施設も増えてきました。発電設備を有する施設は338施設で、全国の焼却施設数の約29%を占めます。

 このように、焼却処理に伴う熱回収・利用はサーマルリサイクルと呼ばれ、一般的にはリサイクルのひとつとして位置づけられるのですが、実は図2に示したリサイクル量には反映されません。環境省が定義するリサイクル率に焼却処理が貢献するとすれば、図2の中間処理後リサイクル量です。ごみを焼却処理すると、処理残渣として焼却灰が発生します。焼却施設によっては溶融施設を併設して焼却灰を1,200℃以上の高温で溶かし、冷却して溶融スラグと呼ばれる固化物を生成して土木資材としてリサイクルされている例もあります。また、ある地域では焼却灰をセメントの原料としてリサイクルしています。このように溶融スラグの土木資材利用や焼却灰のセメント原料化といった、廃棄物を別の用途に原材料として利用することをマテリアルリサイクルと呼び、環境省の統計ではリサイクル量としてカウントされています。つまり、ここで言うリサイクル量(率)とは、マテリアルリサイクルされる量(率)のことで、サーマルリサイクルされる量(率)のことではないのです。今後、電力自由化の動きや再生可能エネルギーの固定価格買取制度などを背景として、技術の高度化や広域化・集約化による施設規模の拡大により、熱回収効率も高まることから、将来的にサーマルリサイクル率は一層増加する可能性があります。しかし一方で、熱回収の重視やコスト低減の観点から溶融施設の設置を見送るケースが多くなっていることから、焼却処理に関するマテリアルリサイクル率の増加はあまり見込めません。

 その他の中間処理におけるリサイクルに関しても必ずしもリサイクル量(率)に反映できていない部分があります。例えば、メタン化という中間処理では、食べ残しや調理くずといった腐敗しやすい生ごみなどを嫌気状態で発酵させ、発生したメタンガスを回収して発電したり、そのまま都市ガス代替として利用することにより、サーマルリサイクルが行われています。メタン化では処理残渣として排液が発生しますが、それを液体肥料(液肥)として農業利用する場合はその利用量がリサイクル量とみなされます。ところが、排液を処理して下水道あるいは河川に放流する場合、リサイクル量はゼロとなります。

 このように、環境省が定義するリサイクル率とはあくまでマテリアルリサイクルを対象とした評価指標であり、サーマルリサイクル(熱回収・利用)といったリサイクルについても評価に組み込む必要があります。また、古紙などは自治体が収集するルートとは別に、業者が独自に回収する(自治体の委託収集ではない)事例も多く、自治体が収集しない場合は排出量及びリサイクル量に反映されません。ペットボトルなどのスーパーなどでの拠点回収も同様で、こういった家庭などから排出されながらも排出量及びリサイクル量に反映されないごみ量も少なくありません。排出量及びリサイクル量は、あくまでも自治体が収集するごみに限定されているのです。個別リサイクル法によっても排出量及びリサイクル量に反映されるものとされないものがあります。例えば、容器包装リサイクル法で対象となる容器包装ごみは自治体が収集することになっていますが、家電リサイクル法で対象となっている廃家電製品は小売業者が引き取ることになっており、排出量及びリサイクル量には反映されません。時代とともに、リサイクル率の分母と分子が変化しているのが実情です。

(かわい こうすけ、資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム研究室 主任研究員)

執筆者プロフィール:

河井紘輔

ベトナムのホーチミン市に高島屋が開店し、つくば市にある西武が閉店するというニュースがありました。人口減少の日本と人口増加のアジア。(廃棄物処理も含めて)様々な業界でアジア展開が加速する時期に突入したのでしょうか。

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