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2016年10月31日

新たな段階の循環型社会づくりに向けて

特集 新たな段階の循環型社会づくり

寺園 淳

 2016年4月から5年間の国立環境研究所第4期中長期計画期間では、資源循環・廃棄物研究センターが主体となる「資源循環研究プログラム」がスタートしました。名称は第3期の循環型社会研究プログラムから変わっていますが、正式名は「持続可能な資源利用と循環型社会実現のための研究プログラム」であり、循環型社会づくりを目指すことに変わりはありません。今回の特集号では、プログラムの策定や提案に至った考え方を示し、5つのプロジェクトからなる資源循環研究プログラムの概略をご紹介します。

 まず、私たちは第4期のプログラムを行う背景や制約条件をよく認識する必要があります。例えば、国内では2015年の中央環境審議会の答申「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」で示された中長期的に目指すべき社会像とともに、2013年に閣議決定された第三次循環型社会形成推進基本計画も踏まえねばなりません。また、欧州で2010年以降に提示され始めた資源効率向上のための各種政策や、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)のような最近の国際的な動きがあります。今後の国内における人口減少・少子高齢化、世界の人口増加や経済成長のような社会経済の変化と、これに伴う資源・環境制約も考慮する必要があります。同時に、私たちのこれまでの研究実績や、専門分野の多様なメンバーの強みと弱みも無視できません。

 以上のような事柄を踏まえて、私たちが第4期に取り組むべきポイントを4つ挙げてみました。1つめは国際化への対応です。第3期で始めた国際サプライチェーン研究(製品やサービスの供給に必要な国際的な繋がりを理解する研究。 私たちの消費とサプライチェーンを通じた資源の利用参照)を深化させるとともに、アジアの途上国において廃棄物管理技術を高度化させることです。2つめは有害物質・資源性物質への対応があります。資源循環の流れの中で未把握だった物質挙動の洗い出しや、曝露評価を含むリスク評価に向けた挑戦などがあります。3つめは将来の問題を見通した政策シナリオです。国内での政策貢献を強化するとともに、人口減少などの社会変化も意識します。低炭素や自然共生などの政策との調和や評価手法をアジア諸国へ展開していくことも課題です。4つめは、技術システムの高度化・現地適合です。技術システムの高度化を目指す代表例としては、バイオ燃料製造・利用を含む次世代技術があります。国内やアジア諸国での社会実装はこれまでも行ってきましたが、さらに社会変化と技術の高度化を意識してネットワーク展開を図る必要があります。

 そこで、私たちは第4期のプログラムでは国際的な動向や資源循環分野における将来の問題を見通して、3R(リデュース、リユース、リサイクル)をさらに推進する技術・社会システムの構築、廃棄物の適正処理と処理施設の機能向上に資する研究・技術開発、ならびにバイオマス等の廃棄物からのエネルギー回収を推進する技術システムの構築に取り組むこととしました。できるだけ定量的な評価によって対策効果を示し、研究成果をみえる化することもプログラム全体の課題です。

 5つの研究プロジェクト(PJ)は、PJ1「消費者基準による資源利用ネットワークの持続可能性評価とその強化戦略の研究」、PJ2「循環資源及び随伴物質のフロー・ストックにおける資源保全・環境影響評価」、PJ3「維持可能な循環型社会への転換方策の提案」、PJ4「アジア圏における持続可能な統合的廃棄物処理システムへの高度化」、PJ5「次世代の3R基盤技術の開発」となっています。PJ1からPJ3が物質フローや制度提案などのシステム系研究で、PJ4とPJ5が技術開発を中心に据えた研究といえます。PJ1はよりモノの生産のような動脈側に、PJ2はよりリサイクル・処理のような静脈側に焦点を当てたもの、そしてPJ4はよりアジアに、PJ5はより国内技術の高度化に焦点を当てたものになっており、PJ3は全体の評価パッケージやデータの共有も試みます。

 プログラムの実施期間は5年間ですが、社会変化への対応と研究の連続性の両面を考えて、推進戦略でも示されている長期的な社会像でも各種指標や実装などでの貢献につながることを意識しています。災害対応を通じて研究の基礎体力と即応性の意義を認識した第3期の経験も踏まえて、資源循環・廃棄物研究分野の基盤的な調査・研究、および災害環境研究プログラムをはじめとする関連研究とも連携して進めていく所存です。

(てらぞの あつし、資源循環・廃棄物研究センター 副センター長)

執筆者プロフィール:

執筆者 寺園

2014年4月の第3期中途からプログラム総括を仰せつかって2期目に入りました。また最近2回、市民との対話の機会があり、新鮮でした。不得手なまとめ役をしながら、50歳にして市民や現場から学ぶことの大切さを感じています。

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