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NASAラングレー研究センターにて

海外からのたより

横田 達也

 「日本の国立環境研究所からですか、どうしてNASAに?」9か月ほど前に私がここ米国航空宇宙局ラングレー研究センターに着任した際によく受けた質問です。「環境庁が現在開発作成中の、オゾン層観測用人工衛星センサー“ILAS(Improved Limb Atmospheric Spectrometer)”のデータ解析アルゴリズムの研究のためです。」と答えると納得してもらえます。日本人の研究者や留学生がほとんどいない当研究センターに、それも異分野の環境庁から来た日本人というのが珍しいのでしょう。

 米国海軍総司令部のあるノーフォークや、兵器工場と巨大な原爆の貯蔵庫があるニューポートニュースに隣接するここハンプトンは、ヴァージニア州の田舎にある海沿いの小さな町です。湾岸戦争の際にはラングレー空軍基地から多数の戦闘機が飛び立って行き、家々には黄色いリボンが飾られ、独特の緊張感がみなぎっていました。

 ラングレー研究センターの敷地は広大で、アポロ宇宙計画時代の遺物といわれる巨大な実験施設や訓練施設、最新鋭の大型風洞実験施設などがありますが、それらの多くは公開されていないため、いまだに全貌をつかむことができません。また、プライバシーを重んじるアメリカにあって、意外にも郵便物は開封され、検閲を受けてから手元に届くこともあります。

 センター内にはクレイ社のスーパーコンピュータや高速の画像処理機能を有する最新鋭のワークステーションもありますが、私はディジタル社のVAXという中級の計算機を用いて、データ解析用のプログラミング作業をしながら研究を進めています。航空宇宙の機器開発とそのデータ解析の研究については、さすがに経験と実績の豊富な研究機関だけあって、著名な研究者も多く、研究環境もよく整備されています。当センターへの1年間の滞在で、帰国後にILASデータ解析運用システムに十分に活用できるような研究成果を持ち帰りたいと努力しています。

(よこた たつや,地球環境研究グループ衛星観測研究チーム)

NASAの写真