ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2015年6月30日

日本から使用済み電気製品の適正な国際資源循環を考える

Summary

 使用済みの電気製品には有害性と資源性を持つ物質が含まれており、「危ない」と「もったいない」の両方を考える必要があります。日本ではリサイクル制度も整備されてきましたが、「見えないフロー」を通じた不適正な取り扱いや輸出も少なくありません。適正な国際資源循環のあり方を、まず日本から考えることが大切です。

日本の使用済み電気製品のフロー

 電気製品には、有害性や資源性を持つ金属が多く含まれています。有害性を持つ物質としては、鉛、カドミウムなどの金属や、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)のような難燃剤があげられます。人体に直接有害でなくても、地球温暖化やオゾン層破壊に寄与するフロン類が含まれる製品もあります。一方、資源性を持つ金属としては、鉄、銅、アルミのほか、電子部品の中には金、銀のような貴金属があります(図4)。

図4
図4 電気製品に含まれる金属の含有量(横軸)と国内における使用済み製品の年間発生量(縦軸)(有害物質としての鉛(右)と資源性物質としての金(左)の例)
Oguchi et al. 2011. WasteManage, 31, 2150-2160に掲載の図を和訳したもの

 2001年に施行された家電リサイクル法では、家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機)を対象として、製造事業者による回収・リサイクルの仕組みが整えられました。環境省と経産省の調査と推定によれば、2012年度の総排出台数1,702万台の約67%にあたる1,134万台が製造業者等においてリサイクルされています。一方、不用品回収業者による引き取りは265万台に及びます。貿易統計からは、不用品回収業から中古電気製品のリユース(再使用)目的の海外輸出が138万台、金属スクラップとしての海外輸出が130万台分とも推計されています。

中古電気製品の輸出

 貿易統計はすべての輸出台数を反映していない場合があることを考慮しながら、私たちは中古品輸出量を調査し、2006年から2011年まで毎年200万台を超える中古ブラウン管テレビがフィリピン、ベトナムなどの海外へ輸出されていたことを推計しました。地デジ化が完了して2012年以降はブラウン管テレビの輸出は激減しましたが、リユース目的で輸出される電気製品はパソコンなど他にもあります。

 しかし、多くの電気製品については、輸出先、輸出台数や輸出後の状況を理解することは簡単ではありません。私たちの調査で、フィリピンでは日本の中古電気製品に対するニーズがあり、輸出後も多くはリユースされていることがわかりました。しかし、輸入国でそのままリユースされることが疑わしい場合もあるため、水際の輸出管理を強化せざるを得ませんし、国際的にも輸出入規制は強化される方向にあります。その他にも、不用品回収業者が集めた使用済み電気製品がリユースされずに、金属スクラップに混入されたままで輸出されるという問題もあります(図5)。

図5
図5 不用品回収業者のトラック
日本全国で不用品回収業者のトラックやチラシを見かけます。「壊れていてもよい」とアナウンスして、リユースできない家電製品を集めれば、廃棄物の収集になります。ほとんどの不用品回収業者は廃棄物収集運搬の許可を持っていないので、これは違法になります。回収した電気製品はどこでリユースされるかの説明がほとんどされず、金属スクラップに混入されるおそれもあります。

日本からの金属スクラップの輸出の問題点

 金属スクラップは雑品、ミックスメタルなどとも称され、鉄が多いものの非鉄金属なども含む未解体・未分別の廃棄物(スクラップ)です。配電盤、モーターなどが含まれる工業系のものと使用済み電気製品が含まれる家電系のもの、およびそれらの混合系のものに分かれます。貿易統計と現場の調査を総合して、私たちは年間130~200万トン程度の金属スクラップが輸出されていると推定してきました。

 日本からの金属スクラップの輸出先はほとんどが中国で、現地では人の手で金属が種類ごとに選別され、電炉や非鉄製錬に送られて材料としてリサイクルされています。中国における資源利用の高度化は進んできていますが、残渣の処分まで含めた環境汚染や安全管理の観点での課題は残っていると考えられます。

図6 国内の保管施設における金属スクラップ火災
2013年 4月、北九州市内の金属スクラップ保管施設において火災が発生しました。鎮火までに10時間以上かかり、煙害で周辺に大きな影響を与えました。(写真提供:読売新聞)

 国内では、金属スクラップに対して有害物質管理と資源回収の2つの観点から困難な課題があります。有害物質管理については、例えば鉛がバーゼル法の基準を超過すれば輸出を厳しく規制することが可能ですが、実際には不均一な組成のため、混入があっても規制が困難となっています。資源回収については、現在のリサイクル制度では国外への資源流出を抑える有効な手段がありません。

 また、深刻な問題として金属スクラップからの火災の発生があげられます。港湾・船舶において、最近は年間 10件程度の金属スクラップ火災が発生しているとみています。港湾以外の陸上の金属スクラップ保管施設においても同様に火災が発生しています(図 6)。これらの火災による人的被害は幸いほとんど生じていませんが、煙害などの苦情、交通障害、停電を含む多大な影響を周辺に与えています。ほとんどの事例で出火原因が判明しておらず、また消火には数十時間も要する場合があります。そのため、金属スクラップの火災防止も重要な課題といえます。

適正な国際資源循環を目指す

 国内の家電リサイクル法についてはリサイクル費用の回収方式とともに、「見えないフロー」とも呼ばれる不用品回収業者を通じた海外輸出の制御が大きな課題として議論されてきました。さらに、パソコン、小型家電など品目によって異なる複数のリサイクル制度があり、消費者にはややわかりにくくなっていることも課題です。それぞれの制度では回収やリサイクルの基準や責任が求められていますが、結果として不適正な越境移動に至る場合があります。不適正な輸出を防止するためには水際のみでの対策には限界があり、各種制度に基づく国内リサイクルに対する意識の向上と協力を消費者にも求めるとともに、消費者にもわかりやすい制度を考える必要があります。

 自治体の処理施設への負荷軽減やリサイクルの向上を目的とした日本とは異なり、他のアジア諸国では、不適正なリサイクルを防止する目的で使用済み電気製品の対策が進められてきました。日本とアジアのそれぞれで資源循環や越境移動の適正化をめざすのが国際資源循環研究ですが、国内のあり方と海外への助言を日本から考えていくことが大切です。

関連記事

関連研究報告書