ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2015年6月30日

使用済み電気製品の適正管理に向けた様々な取り組み

研究をめぐって

 有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約は、途上国に使用済み電気製品を不適正に輸入させないために重要な役割を果たしてきました。電気製品が世界中で使われるようになった現在、これらの適正な回収やリサイクルの方法について、行政と研究の両面から様々な取り組みが行われています。

世界では

  世界の NPOは 2002年頃から、先進国からアジア・アフリカの途上国に対して使用済み電気製品が輸出された後、現地で不適正なリサイクルによって発生する環境汚染の問題を指摘してきました。有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約は 1992年に発効しており、使用済み電気製品の輸出入に対しても重要な役割を果たしてきました。これをさらに強化して、先進国から発展途上国への越境移動を禁止するバーゼル条約改正(通称、BAN改正)案が1995年に採択されており、今後、BAN改正の批准国数が必要数を満たせば BAN改正は発効することとなります。

 しかし、使用済み電気製品の発生は世界中で増加しており、もはや先進国だけの問題ではありません。使用済みのパソコンの発生台数の推計例では、2016~2018年に途上国での発生台数が先進国を逆転し、 2030年までには先進国で2~3億台であるのに対して、途上国では4~7億台に達すると予測されています(図 7)。また、携帯電話の保有割合は経済レベルにあまり関係なく一人あたり 1台をほぼ超えており、使用済み機器の発生台数は世界中で増加していることが理解できます。近年はどの国においても、電気製品の利用や廃棄物発生量が増加していることから、輸出入の管理のみならず、リサイクル現場における環境影響の把握や適正管理が求められています。

図7 世界の先進国と途上国における使用済みパソコン発生台数の推計
中国の南海大学のYuらは使用済みのパソコンを例にとって、世界の先進国と途上国における発生台数を推計している。その結果、図に示すように、2016~2018年に途上国での発生台数が先進国を逆転すると予測している。先進国と途上国のそれぞれで、中位推計以外に上位推計と下位推計も示している。(Yuら,2010の図を和訳)

 EUではすべての電気製品を対象として、排出時の経済的な負担がなく、回収・リサイクルする制度が整っています。しかし、日本、韓国、中国以外のアジア諸国では使用済み電気製品の回収・リサイクル制度がほとんど整備されておらず、十分な施設もありません。中国を含めて、フィリピン、ベトナムといった途上国では不適正なリサイクルによる環境汚染が懸念されています。適正なリサイクル施設に集まるような制度と技術面での協力が必要と考えられます。

日本では

 環境省ではバーゼル条約のアジア地域の活動として、アジア諸国の条約担当者を集めた「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」の会合を年 1回開催しています。その中で、各国における使用済み電気製品を含む有害廃棄物関連規制や不法輸出入案件とその対策に関して、最新の情報交換を行っています。

 また、国内ではバーゼル法によって、循環資源の輸出入は管理されていますが、金属スクラップのように不均一な組成のものに対しては規制が困難となっています。環境省では中古電気製品に対して、年式・外観や正常作動性があるかといった5項目の中古品輸出判断基準を2014年4月から適用しています。

 不正輸出の水際の対策だけでは不十分なため、国内での使用済み電気製品の適正な回収・リサイクルにも取り組んでいます。家電4品目、パソコンに加えて、2013年4月には小型家電のリサイクル法が施行されました。政令ではほぼすべての電気製品が回収の対象となっていますが、制度への参加や回収対象・方法などを市町村が独自に決定することになっており、10種類程度の機器を対象としている自治体も多いのです。国内のリサイクルは、制度が複雑でわかりにくかったり、家電4品目の場合は費用負担が求められたりするなど、排出時の負担が課題とされています。

 このため、不用品回収業者のように簡単に引き取ってもらえるサービスが入る余地があるともいえます。中古利用されずに不法投棄されたり、金属スクラップに混入されたりしないよう、業者に対する徹底的な指導や排出者の意識向上が求められています。

国立環境研究所では

 国立環境研究所では、資源循環・廃棄物研究センターが中心となって循環型社会研究プログラムを実施しています。第2期(2006~2010年度)の中核研究プロジェクト「国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築」、第3期の研究プロジェクト「国際資源循環に対応した製品中資源性・有害性物質の適正管理」、ならびに環境省の環境研究総合推進費を用いた関連研究によって、使用済み電気製品の適正管理に関する問題に取り組んできました。

図8 第9回国立環境研究所 E-wasteワークショップ(2013年、バンコク)

 環境省の関係部局に対しても、中古品輸出基準の策定や金属スクラップ対策などを通じて、適宜行政支援も行っています。また、2004年から2013年までアジアのE-wasteに関するワークショップを開催して各国の専門家と積極的に情報交換を行ってきました(図8)。このほか、韓国・中国と研究者ネットワークを通じた情報交換や、フィリピン、ベトナム、タイなどと共同研究による現地調査を行っています。

関連記事

関連研究報告書