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2015年3月31日

コラム3大気中の有害化学物質

 環境中に放出される化学物質には、製品としての利用のために合成される化学物質と、燃焼や化学製品製造などの副産物として生成される化学物質(非意図的生成物)の2種類があります。化学製品としての生産量が多く、有害性が知られる462種類の化学物質の環境中への排出量は、PRTR(汚染物質排出移動登録)制度により把握されており、その80%以上が大気に排出されています。この制度は、有害性が疑われる化学物質が、どこから、どのくらい、環境(大気・水域・土壌など)中へ排出されているか(排出量)、廃棄物などとして移動しているか(移動量)を把握し、集計・公表する仕組みです。一方、非意図的生成物の環境への排出量の把握は十分ではなく、健康リスク評価の上で大きな課題となっています。

 わが国では、大気汚染防止法により、有害大気汚染物質は「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある(長期毒性を有する)物質で大気の汚染の原因となるもの」と規定されています。1996年に「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」として234物質、さらにその中から、有害性の程度や大気環境の状況に鑑み健康リスクがある程度高いと考えられる22物質が優先取組物質として選定されました。

 これらの物質は、PRTRの制度化を受け、PRTR対象物質との整合性を考慮し、2010年に見直され、「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」248物質、「優先取組物質」23物質が選定されました。優先取組物質のうち5物質(ダイオキシン類についてはダイオキシン類対策特別措置法に基づき対応)については環境基準が、9物質については指針値が設定されており、様々な排出抑制策がとられています。

 「環境基準」とは、環境基本法第16条により「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」として定められる行政上の政策目標です。大気汚染に係る環境基準として、SO2、PM2.5等のガス及び粒子状物質6物質、ベンゼン等の有害大気汚染物質5物質について基準が設定されています。一方、大気環境指針値は、環境基準とは性格や位置付けが異なりますが、中央環境審議会から環境省に提出された二度の答申に基づいて、人の健康に係る被害を未然に防止する観点から科学的知見を集積し評価することによって設定されることになりました。審議会の答申は、「環境基準が設定されていない優先取組物質についても定量的な評価結果に基づいて環境目標値を定めることが適当である」(2000年)、さらに、「環境目標値の一つとして環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(指針値)を設定する」(2003年)としています。指針値は環境基本法に基づく目標値ではありませんが、健康リスク低減の観点からこのレベルが達成できるように排出抑制に努めるべきものと理解することが妥当とされています。

表1 有害大気汚染物質に係る優先取組物質と大気環境基準・指針値

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