ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

化石燃料起源二酸化炭素排出量グリッドデータ開発と地上観測による精度評価研究(令和 7年度)
Grid data development on fossil fuel carbon dioxide emissions and their evaluation with surface observations

研究課題コード
2527BE001
開始/終了年度
2025~2027年
キーワード(日本語)
排出量インベントリ,地上観測,都市域,人為起源排出量
キーワード(英語)
emissions inventory,surface observations,urban area,anthropogenic emissions

研究概要

排出削減取組の実効性評価と施策強化へ向けて、本研究課題は自治体や排出源レベルでの化石燃料起
源CO2(FFCO2)排出量評価と削減取組の有効性評価を可能にする事を目的に、日本全域のFFCO2直接排出量を高空間解像度で推計する排出量グリッドデータの開発と、大気観測に基づく推計値評価および精緻化を行う。前者は課題代表者らが独自に開発する積み上げ(ボトムアップ)型排出推計手法を基礎に、センサス情報等の行政機関が公表する各種統計情報、並びに取得可能な空間情報を最大限に活用することにより、日本全域の FFCO2 直接排出量を可能な限り排出源レベルで計算し、1km グリッドデータとして作成・公表する。作成するデータセットは、セクター別、排出源別(点源、線源、面源)に1 kmの空間解像度の排出量を提供し、自治体や個別の排出源レベルの排出量を定量的に評価する基礎情報を提供する。後者は2種類の大気観測から構成され、サブテーマ2が大阪と東京の市街地に展開する渦相関法観測点でのCO2・CH4フラックス観測を、サブテーマ3が首都圏に展開する可搬型フーリエ変換分光計観測点でのカラム濃度観測を実施する。削減効果が期待される都市域において既存の排出量推計値の精度が不確かであることが報告されているため、大気観測から得られる市街地での詳細かつ正確なCO2、CH4排出量情報と、大気輸送モデル(WRF-STILT)を介してカラム濃度観測データから導出する都道府県レベルのCO2、CH4排出量情報を用いて、都市域における排出量グリッドデータの精度を定量的に評価し、排出量推計の精緻化を図る。
本研究では、ボトムアップ型排出推計手法に大気観測情報を活用し、客観性・独立性を確保した統合的な評価・検証手法を開発することにより、透明性が確保された排出量情報を提供するとともに、GOSAT-GW によって取得される大気データを用いた排出量推計のより良い先験情報としての活用も期待される。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

日本における総GHG排出量のうち約90%を占めるFFCO2を削減取組の主要対象に設定し、ボトムアップ型推計手法によりFFCO2直接排出量の詳細分布を明らかにする排出量グリッドデータを開発し、各排出源からの排出量推計精度を高めることで実効性のある施策設計に繋げる。
客観性・独立性を確保した排出量推計値の評価・検証手法の確立と、排出量推計値の精度向上のために、都市域における渦相関法およびカラム濃度観測から市街地および都道府県レベルの排出量を評価し、排出量グリッドデータ推計値の精度評価を行う。また、CO2に次ぐGHGであるCH4の観測を実施し、特定排出源および都道府県レベルの排出量評価に資する情報を整備する。

今年度の研究概要

サブテーマ1
・国勢調査、経済センサス、道路センサス等、ボトムアップ型排出量推計における活動情報となる各種社会経済統計情報の収集、セクター別、排出源別排出量推計、推計値の空間配分処理に必要となる地理情報システム(GIS)環境の整備等、開発基盤を構築し、2010年以降、極力直近の期間までのFFCO2排出量グリッドデータを試作する。
・試作データはサブテーマ2・3に順次提供する。

サブテーマ2
・大阪府堺市および東京都渋谷区(代々木)において渦相関法を用いたCO2、CH4フラックス観測を行い、市街地でのCO2、CH4排出量の日変化、週内変化、季節変化、年次変化を評価する。また、観測データの解析から、排出量の大きなセクターの特定を行い、市街地排出量における寄与率や時間変動を明らかにする。
・サブテーマ代表者らがこれまでに実施してきた、東京都、大阪府における街路でのCH4濃度の車載観測データを用いた排出量推定を行い、市街地における街路レベルでのCH4排出量を評価する。
・都道府県レベルでの排出量推計に必要となる陸域生態系吸収・排出量を、既存の観測データを活用することで、高時空間分解能で推定する。
・本研究課題の評価・検討を踏まえ、新たな地上観測点の立ち上げが必要と判断された場合は、観測地点の選定や観測場所確保のための地方自治体等との交渉、観測システムの構築等に着手する。

サブテーマ3
・大阪府堺市および東京都代々木の既存観測点を活用し、渦相関法を用いたCO2、CH4フラックスを観測し、市街地中心部の排出量の時間変動を評価する。
・国内の渦相関法によるフラックス観測データベース(JapanFlux2024)と人工衛星データを用いた機械学習モデルを構築し、陸域生態系CO2吸排出量を高空間分解能で推定する。

外部との連携

大阪公立大学農学研究科 植山雅仁

課題代表者

齊藤 誠

  • 地球システム領域
    物質循環モデリング・解析研究室
  • 主任研究員
  • 博士(理学)
  • 理学 ,地学
portrait

担当者