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加速器質量分析計を用いた環境分析法の開発(令和 2年度)
Development of analytical methods for environmental samples using AMS

予算区分
AP 基盤整備
研究課題コード
1620AP011
開始/終了年度
2016~2020年
キーワード(日本語)
加速器質量分析,放射性炭素,ヨウ素129,ベリリウム10
キーワード(英語)
accelerator mass spectrometry,radiocarbon,129I,10Be

研究概要

加速器分析施設は、環境中に存在する長寿命の放射性核種を質量分析の原理で高感度に測定し、環境研究を推進するための研究施設で、1996年に米国NEC社製AMSによる運用が開始された。その後20年間にわたり、海底堆積物、永久凍土、海水、大気粉じん試料(PM2.5等)、室内汚染物質、大気CO2やメタンなどの温室効果気体等の環境試料中の放射性炭素測定をはじめ、ベリリウム10、ヨウ素129等様々な核種の測定を実施してきた。特に微量測定と環境試料から有機化合物を精製・濃縮に関する前処理技術を組み合わせた自然レベル炭素14をトレーサに用いた環境動態研究の推進においては、最先端を行くもので有り、本施設の特色の一つといえる。加えて、海洋堆積物コアを用いた古気候研究でも、多くの実績を有している。最近では、完新世における北太平洋の中・深層水水循環の復元に成功した(2014年、Scientific Reports誌)。また2011年からは、福島原発事故の発生により環境中に放出された放射性ヨウ素(とりわけ短寿命で健康影響の懸念されるヨウ素131)の分布と環境挙動を解明するため、同時に放出された長寿命放射性ヨウ素129をトレーサーとする手法の開発にも着手した(2016年、EST誌)。一方、装置のコンディションは、2012年より昨年度まで、震災による破損と経年劣化に伴う各種の修繕に加え、最新の機器に交換する奈土の大規模ナアップデートを実施した。2018年度までに、制御ソフトウェアの更新、最新のイオン源の導入、加速管の再生、ビームラインの改造、入射電磁石用大型電源を更新した。2019年度には20年ぶりに大型コンプレッサーのオーバーホールを行なった。一方、環境省からの委託事業により設置されている炭素14測定専用の加速器質量分析装置(CAMS)が立ち上がり、大気COの発生源寄与率推定研究が行われている。現在、既存の大型AMSでは、炭素14の極超微量分析、ヨウ素129の高精度計測ための開発研究ならびに炭素循環研究を中心とした様々な環境試料への応用研究を行っている。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

2016-2018年度は、2016年春までの大改修による大規模アップデートされたAMSについて、1mgCまでの炭素14の測定のための各種条件検討を行う。3年次以降は、炭素14については、微量分析についての検討に入り、環境試料の前処理法の検討とともに実施料への応用を測るものとする。実試料としては、海水、永久凍土、自然・人為起源有機化合物(多環芳香族炭化水素(PAH))、海底堆積物中微化石、大気エアロゾル(PM2.5、ブラックカーボン)中炭素系粒子等を対象とする。

今年度の研究概要

今年度は、14C分析に関連し、AMSのアップデートによるチューニングを引き続き行いつつ、様々な環境試料から高品質なグラファイトを生成するための実験装置を開発するとともに、グラファイトの生成条件等について詳細な検討を進め、環境試料の分析を開始する。さらにヨウ素の分析に向けた準備を開始する。

外部との連携

東京大学、原子力研究開発機構、名古屋大学、筑波大学

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    動態化学研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait

担当者