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定量的生態リスク評価の高精度化に資する数理生態学的研究(平成 27年度)
Theoretical ecological study for developping quantitative ecological risk assessment

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1116AQ005
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
数理生態学,生態リスク評価,生態毒性学
キーワード(英語)
theoretical ecology, ecological risk assessment, ecotoxicology

研究概要

研究目的: 化学物質の生態リスクを、他のリスク要因との比較評価に立脚して総体的に把握する解析方法を発展させるため、その基盤的技術である数理生態学モデリングおよび生態毒性試験法を開発する。また、異なったリスク要因の比較評価のためには、リスク算定値の比較だけでは不十分で、リスク削減のコスト・便益比率の比較が必要であることから、個々の生態リスク因子の費用対効果分析手法を研究する。
研究概要: 環境かく乱要因の生態リスク評価法を、生態学に基づく数理モデルによって高精度化する。生態リスクのエンドポイントに対して生態学上の意味づけをより明確にし、それを定量化することによって、異なった生態リスク因子の大きさを比較評価する理論的な枠組みを研究する。本研究では特に、化学物質を含め、気候変動、侵入生物・遺伝子組み換え生物(GMO)など、様々な環境リスク因子の生態影響を評価する基盤となる数理モデルの研究を行う。さらに化学物質の生態リスクと侵入生物・GMO等その他の生態リスクとの相対リスク評価を目指して、各リスク因子に対する管理コストとリスク削減便益に基づく費用対効果分析手法を開発する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

課題(1)生態リスク推定の高精度化に資する数理生態学的研究: 定量的な生態リスク評価の基盤となる数理的解析手法を、生態学モデルと計算機シミュレーションによって研究する。生物個体群の絶滅過程、遺伝的多様性と個体群存続可能性との関係、侵入種の拡散速度予測、侵入種やGMOによる遺伝子の浸透交雑、化学物質耐性の遺伝変異に基づく集団遺伝学的モニタリング手法の開発、生物群集における環境かく乱因子による機能形質動態、温暖化などの気候変動に対する生物の適応進化モデルなど、多様な生態リスク因子の定量化に必要な生物過程の数理モデリングを主な研究テーマとする。                  
課題(2)複合的生態リスク因子の最適管理手法の研究: 化学物質(農薬)、気候変動、生息地破壊、侵入生物および遺伝子組み換え生物など、異なる生態リスク因子を統一的な基準で定量的に比較評価する方法を開発する。さらに、それらのリスク要因間のリスク比較やリスクトレードオフの解析方法の開発を目指して、各リスク要因の管理コストとリスク削減便益に基づく費用対効果分析によって最適な管理手法を数理科学的に研究する。社会的効用を最大化する最適な管理戦略を、シミュレーションやベイズ統計、動的計画法などのオペレーションズ・リサーチなどの手法を用いて導出する。限られたデータから意思決定を行う必要がある場合には、Information-Gap理論によって、最も不確実性に頑強な管理手法を導出するための新たな理論を提示する。

今年度の研究概要

課題(1)化学物質の複合影響(複数の化学物質による混合毒性)を毒性データから解析し、予測するための数理モデル的アプローチを、濃度加算モデルを一般化することによって考案する。化学物質の耐性に遺伝的変異が個体群内に存在する場合、耐性の小進化によって個体群が被る生態リスクや存続可能性が受ける影響を数理モデルによって解析し、耐性の進化を考慮することによって化学物質の生態リスク評価を修正しなければならない要因を整理する。
課題(2)外来生物が侵入した時期・場所の不確実性を考慮し、複数の対策シナリオのもとでの分布予測を行い、対策の費用対効果を算出する。さらに、内的自然増加率や環境収容力、捕獲効率、分布拡大速度に不確実性がある場合に最も不確実性に頑強な捕獲努力の配分シナリオを選定する。

課題代表者

田中 嘉成

担当者