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ディーゼル排ガス由来二次生成有機エアロゾルの生体影響調査(平成 26年度)
Health effects of secondary organic aerosols derived from diesel exhaust.

予算区分
BY 環境-委託請負
研究課題コード
1414BY013
開始/終了年度
2014~2014年
キーワード(日本語)
二次生成有機エアロゾル,生体影響
キーワード(英語)
Secondary organic aerosol, Health effect

研究概要

環境中におけるナノ粒子は、ディーゼル排ガス粒子(DEP)中での存在割合が増加してきているほか、大気中での光化学反応等によりその有機成分が反応・凝集 凝縮して新たに二次生成有機エアロゾル(SOA)の生成に寄与していることが知られている。特に夏季の都市部では、気象条件によってはSOAがかなりの高 濃度に達することが報告されている。SOAは光化学反応により強い反応性が付与されるため、その生体への影響が強く懸念されているが、標準粒子の調製方法 すら確立されていないため国際的にも殆ど知見がない。また、毒性発現のメカニズムもこれまでのDEPとは異なる可能性が高く、別途詳細な研究が必要であ る。こうしたことから、環境ナノ粒子のうち特にSOAについて、その環境中での動態や性状を把握するための調査を行うとともに標準粒子の調製方法を確立 し、細胞や動物お用いた実験等によりその生体影響を調べ、SOAの適切な評価を行うことを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

(1)ディーゼル排気由来SOAの調製法の確立と細胞曝露系を用いた評価を行うことを目的として、ディーゼル排気由来SOAの生成条件の検討、ならびに細胞曝露装置におけるディーゼル排気由来SOAの実効曝露量の推定と細胞への影響を調べる。
(2)ディーゼル排気由来SOAの健康影響評価に関する研究として、ディーゼル排気由来SOAの吸入曝露影響方法に関する研究、ならびに捕集したディーゼル排気由来SOAの生体影響に関する研究
捕ーゼル排気由来SOA二次生成有機エアロゾルをの小動物にへの気管内投与点鼻投与等を行う。
(3)ディーゼル排気由来SOAの性状把握調査として、大気中におけるSOAの野外調査、ならびにディーゼル排気由来SOAのラジカル種の分析実施及び定性・定量の検討を行う。

今年度の研究概要

(1) ディーゼル排気由来SOAの細胞への曝露方法に関する研究
細胞曝露装置を用いたディーゼル排気由来SOAの実効曝露量の推定と細胞への影響
ディーゼル排気由来SOAの粒径領域の粒子について、より現実に近いと考えられる非球形粒子の実測の結果とシミュレーション結果の比較を行い、ディーゼル排気由来SOAの推定沈着量の精緻化を図る。また、沈着効率の高効率化へ向けた曝露条件の確立のための検討を行う。さらに、紫外線照射による酸化反応により生成したSOAの気液界面曝露を行ってオゾン酸化反応により生成したSOAの細胞への影響と比較・分析を行い、各SOAの物理化学的性状の違いによる細胞に対する影響の相違を調べる。オゾン酸化反応により生成したSOAを細胞へ溶液曝露して、生体影響発現に至るメカニズムの検討を行う。
(2) ディーゼル排気由来SOAの健康影響に関する研究
ディーゼル排気由来SOAの物理化学的性状の違いによる生体影響を明らかにするため、オゾン酸化により生成した粒子成分とガス成分の双方を含むディーゼル排気由来SOA、ディーゼル排気、及びディーゼル排気由来SOAから粒子成分を除去したガス成分を含む曝露気質をそれぞれ小動物に吸入曝露させることにより、ディーゼル排気由来SOAの粒子成分における生体影響を評価する。吸入曝露については、呼吸器系・循環器系・脂質代謝系・生殖器系・等への影響を調べるため、心血管障害の出やすい疾病モデル動物を用いて、曝露条件や小動物への負荷条件、曝露期間等を複数段階設定した実験を行い、ディーゼル排気由来SOAの粒子成分への曝露の感受性が高いと考えられる心血管系疾患等をもつ集団に対する生体影響についての検討を行う。
ディーゼル排気由来SOAの物理化学的性状の違いに応じた高感受性期の吸入曝露による生体影響を明らかにするため、オゾン酸化により生成したディーゼル排気由来SOA、ディーゼル排気、及びディーゼル排気由来SOAから粒子を除去したガス成分を含む曝露気質を、感受性が高いと考えられる胎児期から新生児期に吸入曝露を行い、仔動物の脳神経系、循環器系、呼吸器系、免疫系等に及ぼす影響について評価し、そのメカニズムについても検討する。
(3) ディーゼル排気由来SOAの性状把握調査
実験的に発生させたディーゼル排気由来SOAをモニタリングし、また、吸入曝露空気質の性状を調べる。大気環境が異なると考えられる複数地点(発生源に近いと考えられる地点及び発生源から離れた地点を含む少なくとも2地点)に大気環境中におけるSOAの試料(成分分析可能な試料を含む。)を採集するための測定機器を設置し、SOAの生成が顕著になっていると考えられる夏季とその対照としての冬季にサンプリングを行う。それらの試料を用いて大気環境中におけるSOAの質量濃度や成分組成等の物理化学的性状を定性的・定量的に分析するとともに、実験的に生成させたディーゼル排気由来SOAの曝露装置内における粒径や成分組成等との比較・分析を行い、大気環境中におけるSOAと曝露装置内で生成したSOAとの成分組成等を類似させるための手法等に関する検討を行う。
ディーゼル排気由来SOAに含まれる成分の中でも、生物活性が高く生体内の酸化ストレスと関連があり毒性が高い可能性があると考えられるラジカル成分について、生体影響を及ぼすラジカル種の把握等を行うため、SOAに含まれるラジカル種の詳細な構造を同定するとともに、その含有量を定量的に分析する。

外部との連携

横浜国立大学

課題代表者

平野 靖史郎

担当者