- 予算区分
- BA 環境-推進費(委託費) A-1202
- 研究課題コード
- 1214BA004
- 開始/終了年度
- 2012~2014年
- キーワード(日本語)
- 大気メタン,気候変動,人工衛星観測,インバースモデル
- キーワード(英語)
- atmospheric methane, climate change, satellite measurement, inverse model
研究概要
メタンは二酸化炭素に次ぐ第二位の温室効果ガスであり、大気中濃度は産業革命までは最大で700 ppb程度であったと考えられているが、現在では約1770 ppbへ増加している。これまでに地域・起源毎に放出量のボトムアップインベントリーが作られているが、メタン発生源の多くが生物由来であることから、これらの推定には大きな不確定性が伴い、実態は十分理解されていない。地上観測などで全球的なメタン分布についてはある程度わかってきたが、発生源のある内陸も含めた全球的メタン分布は、衛星観測が行われるようになって知られるようになった。
我が国では2009年に温室効果ガス観測に特化した世界初の衛星GOSATが打ち上げられた。GOSATは放出源付近のメタン濃度の情報を含む気柱平均濃度と、上空に輸送されたメタン濃度の鉛直分布を同一の視野で観測できる唯一の衛星であり、現在まで順調にデータを取得している。また、国立環境研究所では、これまでに航空機、タワー、船舶などを用いて大気中メタン濃度の観測を行い、長年にわたってデータを蓄積してきた。現在では、衛星と直接観測データを利用したインバース解析(大気濃度から排出吸収量を逆計算する解析手法)が可能になっている。このような背景から、本研究では、衛星で観測される大気中メタン濃度の情報を最大限活用し、これに直接観測で得られたメタン濃度データを加えてインバース解析を行い、メタンの放出分布とその変動を早期検知するためのシステムを構築することを目的とする。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本課題では、GOSATなどの衛星センサーで観測される大気中メタン濃度の情報を最大限活用し、これに大気の直接観測で得られたメタン濃度データの解析を加えることにより、全球的なメタン濃度分布を把握する。特にシベリア域およびアジア域から放出されるメタンの、大気中における輸送過程や化学反応過程などの動態を把握し、大気中メタン濃度の変動を検出する。その結果を元にインバースモデルによる解析を行い、メタンの放出分布とその変動を早期に検知するためのシステムを構築する。
国立環境研究所が担当するサブテーマでは、以下を行う:シベリアでのタワー観測と航空機観測、ならびに西太平洋での船舶観測を継続して実施し、新規アジア大気サンプルのメタン濃度分析を行う。GOSATメタンデータと本研究で得られたメタン観測値を用いてインバースモデルによる解析を行い、シベリア・アジア域からのメタン放出量の分布とそれらの年々変動を検出する。また、算出したインバースフラックスをインベントリフラックスと比較し、本研究で構築したメタン放出量推定システムの評価を行う。
今年度の研究概要
地上サイトで採取された大気サンプルのメタン濃度分析を行う。新たなセンサーをシベリアのシステムに組み込み、既存のシステムとの比較実験を行う。航空機・船舶観測は引き続きサンプリングを継続する。インバースモデルに導入するGOSATメタンカラム濃度の緯度経度に依存するバイアス補正を行うとともに、成層圏成分の寄与を推定するための検討を行う。また、ツンドラと北部湿地帯の永久凍土からのメタン放出量情報の収集を行う。
外部との連携
共同研究機関:奈良女子大学(課題代表者 林田佐智子)、千葉大学環境リモートセンシング研究センター、千葉大学大学院園芸学研究科
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