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2020年10月30日

ごみの収集方式

特集 維持可能な循環型社会への転換方策の提案
【環境問題基礎知識】

鈴木 薫

はじめに

 我々研究グループは高齢化や地域コミュニティの弱体化がすすむなか、どのようにごみ収集システムを維持するかの調査研究に取り組んでいます。本稿では、ごみ収集方式の基礎知識として、まずは世界のごみ収集の類型とその中での日本のごみ収集方式の位置づけについて考え、その上で日本の戸別収集とステーション収集の状況についてご紹介します。また、今後のごみ収集の課題について、特に収集箇所の増加にフォーカスしてご紹介します。

世界のごみ収集の類型

 ごみの収集は、私たちの生活環境を衛生的に保つため、そして廃棄物を適切に処理し、資源を循環するために非常に重要な施策です。しかしその方法は、国によって、そして都市によっても大きく異なります。表1は世界のごみ収集手法の類型です。都市化が進んだ地域の家庭ごみの収集手法として一般的なのは1から3のタイプで、1. House-to-Houseは、契約業者が利用者の家までごみを取りにくるもので、その多くは有料です。2. Community Binsは利用者が地域に設置されたごみ容器にごみ出しするもので、ごみは自治体やその指定業者が定期的に取りにきます。3. Curbside Pick-Upは利用者が自宅の前にごみを置き、自治体等が取りにくるものです。

 では、日本のごみの収集は、この類型のどれにあたるでしょうか。日本のごみ収集は大きく戸別収集とステーション収集に分かれます。戸別収集はそれぞれの家の前にごみを置いて収集してもらう方法で、表1の類型のなかでは3. Curbside Pick-Upに一番近いと考えられます。そしてステーション収集は、複数の世帯でごみ集積所(ごみステーション)を共同利用する方法で、決まった場所を複数世帯が使うという点においては、比較的近いのは、Community Binsと思われます。しかしCommunity Binsは自治体やごみ処理事業者がごみの種類ごとに固定式容器を設置・管理するのが一般的です。一方、日本の多くの自治体では、ごみ集積所を設置・管理するのは原則として利用者です。また、一つのごみ集積所の設備で、可燃物、不燃物、資源ごみなどの異なるごみ種を、収集日を変えて収集するという点もCommunity Binsとは異なります。その点では、ステーション収集はCurbside Pick-Upの一類型とも考えられます。どちらにせよ、ステーション収集という日本式の手法は、分類に困る、つまりは珍しいやり方であると言ってよいと思います。

表1 世界のごみ収集手法の類型
1.House-to-House 収集作業員が各家庭を巡回してごみ収集を行う。
利用者は通常、このサービスの料金を支払う。
2.Community Bins 利用者は近所や地域の決まった場所に置かれている
ごみ箱にごみを出す。設定されたスケジュールに従って、
自治体またはその指定事業者がごみを収集する。
3.Curbside Pick-Up 利用者は、自治体のごみ収集スケジュールに従って、
自宅の外にごみを出す。
4.Self Delivered 排出者がごみを直接処分場や中継所に届けるか、
ごみ収集を行う事業者を雇用する。

The World Bank,(2012), WHAT A WASTE : A Global Review of Solid Waste Management. P13より作成

戸別収集とステーション収集の割合

日本の自治体における収集方式の割合の図
図1 日本の自治体における収集方式の割合
(全国の自治体を対象としたアンケート調査(2020年4月)、939自治体)

 私たちが2020年に全国の自治体を対象に行ったアンケート調査によると、回答自治体のうち、ステーション収集のみを行っているのは56%で、高齢者ごみ出し支援等のために一部地域・世帯で戸別収集をしつつステーション収集を行っているのは35%、そして戸別収集が8%と、ほとんどの自治体がステーション収集をベースとした収集システムを選択しています(図1)。戸別収集は、ごみを出す側にとってはごみ集積所にごみを運ぶ手間がなく、利便性が高い手法です。ごみを収集する側にとっても排出者責任が明確になることでごみ出しルールを守ってもらいやすいという利点もありますが、ステーション収集よりも収集効率が落ちるというデメリットもあります。前述のアンケート調査で戸別収集をしていない自治体(ステーション収集および一部戸別収集をしているステーション収集)にその理由を聞いたところ、回答した848の自治体のうち、収集コストが高くなるからが81%、人員・体制の確保が難しいからが79%という結果で、コストと人員の確保が導入のハードルとなっています。図2に、自治体の収集方式と人口規模とのクロス集計結果を示します。人口20万人以上の自治体では一部戸別収集をしているステーション収集が最も多く、人口規模が小さくなるにしたがってステーション収集の割合が増えていくのがわかります。

ごみの収集方式と自治体規模の図
図2 ごみの収集方式と自治体規模
(全国の自治体を対象としたアンケート調査(2020年4月)、939自治体)

 小規模自治体でステーション収集が多い理由としては、前述のコストと人員の問題に加え、人口密度の低さから、戸別収集にした場合に効率低下しやすいことなどが考えられます。今後さらに自治体財政がひっ迫する中で、市民がごみ集積所までごみを運び、市民同士で協力してごみ集積所を管理する、自助・共助によるステーション収集を継続する自治体はまだまだ多いと考えられます。

ステーション収集の歴史と多様な姿

 ステーション収集では、多くの自治体で原則として利用者がごみ集積所の設置・管理を行うことになっています。ごみ集積所の設備の設置をするのは自治会、管理組合、住民グループ、土地の開発事業者、アパートの所有者や管理会社など様々です。ごみ集積所が設置される地域や時代によってその形態も様々なものがあります(図3)。

ステーション収集の設備の形態図
図3 ステーション収集の設備の形態

 ごみ集積所の利用は、1964年の東京オリンピックの前後にごみ収集に自動車が導入されたのが起源になっていると考えられます。それまでは各戸に据え置かれたごみ箱から収集作業員がごみを掻き出し、大八車に集めて運んでいましたが、車による収集を効率的に行うため、ごみをプラバケツに入れ、道路際にひとまとめに置く方法が導入されました。しかしプラバケツは家に持ち帰ったり洗ったりする手間がかかるため、徐々にごみ袋に置き換わり、写真の①路上タイプの姿になりました。ごみ集積所による収集が一般的になると、計画的に造成された住宅地では②の囲いタイプのように、開発当初からごみ集積所の場所が確保されるようになりました。しかし、路上タイプや囲いタイプ、そして上部の空いたカゴタイプなどはカラス等の動物に荒らされることが多く、固定・密閉式の設備を設けるスペースがないところでは、対策として折りたたみ・移動のできる④ネットボックスを導入するところも増えてきています。郊外の農村部等で多いのが⑤小屋型です。大勢で利用するので、家が遠い人は車でごみを運ぶこともあります。最近開発された住宅地やアパートでは、小型で密閉性の高い⑦金属ボックスの利用が増えています。比較的限られた人のみで利用し、動物にも荒らされないので管理が容易です。また、大型のマンションでは、⑧ごみ保管専用室を備えるようになっています。このように、ごみ集積所の設備は、時代や地域にあわせて変化をしてきたのです。

今後のごみ収集の課題—収集箇所の増加—

 ステーション収集は、市民の自助・共助によりごみを効率的に収集する、市民協力型のごみ収集といえるでしょう。一方で、高齢社会においては、「高齢化社会におけるごみ出し」のようにごみ出し困難者への対応が必要となります。また、ごみ集積所の管理を担っていた自治会が弱体化し、ごみ集積所を維持できなくなるケースが増えています。東京都内のある区では、区内の収集箇所(ごみ集積所数と戸別収集世帯数の合計)は、2000年にはおよそ7千カ所でしたが、2019年には2万カ所に増加したそうです。その間、人口は約1割増えたのみでしたが、収集箇所は3倍近くに増えたことになります。急激な変化の要因としては、戸別収集の増加があります。高齢者等を対象とした戸別収集だけでなく、狭小路地でごみ集積所までの距離が遠いところや、ごみ集積所が設置・管理ができなくなったところ、自治会未加入者が地域のごみ集積所を利用できない場合など、様々な理由で戸別収集が行われているそうです。

 加えて、ごみ集積所の数も増加傾向にあります。私たちが2020年4月に行った調査では、回答した390自治体において、ごみ集積所の数は5年間で約7%増加していました。前述のように、新しく開発された住宅地では小型のごみ集積所が導入される傾向にあります。また、都市部では不特定多数が利用してごみ出しルールが守られないごみ集積所を廃止・分散させることがあります。郊外等で利用者が多い小屋タイプのようなごみ集積所はごみ出し距離が長く、ごみ出しができない高齢者が増えれば分散させる必要がでてきます。利用者の利便性を高め、管理を容易にするために、ごみ集積所の小型化と分散は今後も継続すると思われます。

 しかし収集箇所が増加すれば、収集のための手間も増え、そのためのコストや人員も必要になります。財政が縮小し労働人口が減少するなか、どのように収集体制を維持していくべきか、地域の状況に合わせ、長期的な視点をもって検討する必要があるのです。

(すずき かおる、資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム室 特別研究員)

執筆者プロフィール:

筆者の鈴木 薫の写真

街を歩いていても、ついついごみ集積所に目が行ってしまいます。食べられる植物を育てるのと探すのが好きで、先日は研究所内でムラサキヤマドリタケというポルチーニ茸の仲間を見つけて、今干しているところです。