ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

第42回セメント協会論文賞

  • 受賞者:
    山田一夫
  • 受賞対象:
    熱力学的相平衡物質移動モデルを用いたスラグ系セメントの耐硫酸塩性メカニズムに関する検討(Cement Science and Concrete Technology,67,340-347,2013)
  • 受賞者からひとこと:
    コンクリートが、硫酸イオン濃度が高い環境に置かれると、あるいは石膏を多量に含んだ廃棄物に接するとエトリンガイトと呼ばれる針状結晶を生成し、膨張破壊します。この作用機構を抑制機構とともに解析し、熱力学的平衡を考慮した多元素物質移動モデルと組み合わせて、解析した結果が評価されました。石膏系廃棄物の処分や再利用にコンクリートを用いる際には注意すべき問題です。この研究は、私が太平洋セメント中央研究所セメント化学チームリーダを務めていたころ、基本的な実験を始め、解析モデルを太平洋セメント(株)の細川佳史博士とともに整備し、その後、(株)太平洋コンサルタントの小川彰一氏が実権を引き継いでいたものです。東京工業大学の坂井悦郎教授の指導も受けました。

平成25年度土木学会吉田賞

  • 受賞者:
    山田一夫
  • 受賞対象:
    セメント系材料により生成される水和物の相組成とASR膨張抑制効果の関係(土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造),69(4),402-420,2013)
  • 受賞者からひとこと:
    可溶性塩類を多量に含有する焼却飛灰などの廃棄物を遮断型処分場で最終処分する際のコンクリートには遮水性が求められますが、コンクリートの癌とも呼ばれるアルカリ骨材反応(ASR)によるひび割れ発生の長期的抑制は現在も課題です。鉄筋コンクリートは結合材であるセメントがもたらすアルカリ性により鋼材腐食が防止される一方、ある種の骨材はアルカリで反応しASR膨張します。このASRの抑制には高炉スラグ微粉末や石炭火力発電所からの焼却灰などのポゾラン物質が有効ですが、その効果をコンクリート空隙水中のpHを熱力学的平衡計算により求め、統一的に説明したことが評価されました。九州大学で実施してきた研究成果を、港湾空港技術研究所の川端雄一郎博士と一緒にまとめました。川端博士が在学中の指導教官松下博通教授(故人)との連名です。

平成26年大気環境学会進歩賞

  • 受賞者:
    森野悠
  • 受賞対象:
    地域スケールにおける広域大気汚染の化学輸送モデリング
  • 受賞者からひとこと:
    モデリングと観測を統合して都市・広域大気汚染の発生機構を解明する研究における業績に対して、大気環境学会から進歩賞をいただきました。今回の受賞は、これまでのPM2.5や二次有機エアロゾル、揮発性有機化合物、窒素・硫黄沈着、放射性物質などのモデリング研究における成果を評価していただいたものであり、光栄に受け止めています。これらの研究は共同研究者に恵まれたおかげであり、お世話になった方々に感謝するとともに、今後の大気環境モデリング分野の進歩に向けてますます努力していく所存です。

平成26年大気環境学会進歩賞

  • 受賞者:
    伏見暁洋
  • 受賞対象:
    微小粒子・ナノ粒子の起源・動態解明のための高感度有機分析法の開発と適用
  • 受賞者からひとこと:
    〔授賞理由より〕微小粒子・ナノ粒子の起源・動態解明のための高感度有機分析法の開発と適用に関する研究に積極的に取り組み、学術上優れた業績をあげてきました。特に、極微少量の粒子試料の有機分析法の開発、組成分析に基づく微小粒子・ナノ粒子の起源・動態解明において顕著な研究業績をあげました。加熱脱着GC/MS法による高感度有機分析法を開発し、ディーゼル排気、沿道及び後背地大気中の微小粒子・ナノ粒子の組成を調査し、エンジンオイル主体のナノ粒子がディーセル車から排出され、大気中で徐々に揮発・消滅することを解明しました。PAHやホパンの多成分高感度定量法を開発し、金属成分分析と組合せて、ディーゼルナノ粒子に対する軽油とオイルの寄与率を求めました。また、世界に先駆けて加熱脱着GC×GC-MS/MS法を用いてニトロ-PAHなど多環芳香族化合物の多成分超高感度定量法を開発し、これらの組成は走行条件で大きく変わるが粒径による違いは少ないことを明らかにしました。

2014年度環境科学会論文賞

  • 受賞者:
    一ノ瀬俊明
  • 受賞対象:
    黄河全流域における水資源需給構造の分類-地下水と地表水のバランスに注目して-(環境科学会誌,26(2),167-179,2013)
  • 受賞者からひとこと:
    研究対象となった黄河流域で関連の調査を開始してから10年以上がたちました。バックパッカーのようなフィールド調査もあり、データ入手の制約など難しい局面も少なくありませんでしたが、このような形で研究成果をご評価いただけましたことは至上の喜びであり、研究推進にあたりお世話になった中日両国の皆様に、心より感謝申し上げます。今回受賞対象となったのは水資源に関する研究ですが、これは私のメインテーマではありません。最近世間では、陸上短距離の選手がボブスレーでオリンピックの代表になったりすることもありましたが、分野を問わず、すべてのサイエンスに共通する方法論、価値観といったものがあることを改めて実感いたしました。また、受賞論文の研究には、最新の知見や技術がたくさん使われているわけではありません。既存の知見や成果をフルに活用し、組み合わせたことで今回の成果が得られたものと感じております。いい論文というのは、難しいことをやるとか、最新の技術を使うとかではなく、誰でも知りたいと思っているのに、誰も手をつけなかったエッセンスについて、単純明快に答えを示すということが大切なのだと思います。

第33回日本自然災害学会学術発表優秀賞

  • 受賞者:
    多島良、平山修久、大迫政浩
  • 受賞対象:
    災害廃棄物処理に求められる自治体機能に関する研究—東日本大震災における業務の体系化を通じて—(第33回日本自然災害学会学術講演会, 2014)
  • 受賞者からひとこと:
    災害廃棄物の処理に係る技術的知見は蓄積されつつありますが、マネジメントの観点からはこれまで十分に検討されてきませんでした。円滑で適正な災害廃棄物処理に向けた準備を発災前に進める上で、発災後に求められる災害廃棄物処理関連機能の全体像の把握が重要と考え、地道な社会調査の結果を理論枠組みに当てはめて一定の整理を行いました。なかでも、米国の標準的危機対応システムであるICSを出発点とした枠組みにより、災害廃棄物処理に係る業務を分かりやすく整理することが可能であるということは、一つの発見でした。他にも、実務上参考になる具体性と、研究としての今後の応用可能性を評価していただいたものと推察しています。今後とも、東日本大震災をはじめとした災害経験に基づく実証研究をつづけ、レジリエントな(廃棄物処理・資源循環を含む)社会システムの構築の一助となるべく努力いたします。

平成26年度日本環境共生学会論文賞

  • 受賞者:
    森保文、根本和宜
  • 受賞対象:
    環境配慮行動に与えた東日本大震災の影響とその機構(Journal of Human and Environmental Symbiosis, 24, 43-53, 2014)
  • 受賞者からひとこと:
    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災の後、家庭において節電行動が普及し消費電力量が減ったことが報告されています。ここで三つの課題が浮かび上がります。一つは家庭における節電行動が今後も継続されるのか、二つには、変化したのは節電行動だけなのか、三つには、節電行動の変容が震災に起因するいかなる要因によってもたらされたのかという点です。特に三つ目については、人の行動を変えることは困難とされていますから、この行動を変化させた人がいかなる要因によって行動を変化させたかを知ることは極めて重要です。本研究は、2009年から2013年にかけて実施した3回のWebによるアンケート調査を用いて、節電行動を含む9種の環境配慮行動について、その変化の有無、変化の原因および行動を変化させた人の特性について分析したものです。従来の理論だけでなく、ボランティアについての新しい理論を適用した、固定観念にとらわれない解析が評価されたと考えています。