編集後記
尼崎の鉄道事故は大変衝撃的なものでした。現在その原因究明が行われています。特に注目されるのは,脱線転覆事故に繋がった直接的な原因だけでなく,JR西日本という企業体質自体に焦点があてられていることです。公共交通の担い手としての企業の使命・モットーの中での「安全性」の軽視,不適切な人材管理,希薄な危機管理,など,企業としては極めて脆弱であったと言わざるをえません。国営企業であった歴史的経緯や,その規模の大きさなども影響していると思われますが,企業体質自身に問題があることは誰の目から見ても明白です。内部の経営者はなぜ,それに気付き,自ら改善することが出来なかったのでしょうか。今後,JR西日本は今回の事故の十字架を背負って,企業体質の変革を余儀なくされるでしょう。しかし,それに気付くには,あまりにも大きな代償であったと思います。
今回の事故を教訓に,自らを再点検すべきと考えた経営トップが多いと思います。私達の研究所も,国からの交付金で運営されていますが,一つの法人としての組織です。社会に対する使命,国の研究所としてのモットー,使命を果たすための運営管理のあり方が問われるのは,法人組織として当然のことです。組織として何か綻びはないか,それが社会に対して負の影響を与えていないか,今回の鉄道事故の問題を縁遠い出来事と感じず,私達組織の問題に投影しながら熟慮していくことが大切だと思います。
(M.O.)