平成11年度国立環境研究所関係予算案の概要について
只見 康信
平成11年度の国立環境研究所関係予算は,平成10年12月25日に閣議決定の政府案で総額92.7億円とされています。これは,10年度当初予算に比べて5.4億円,率にして6.2%の伸びです。
ここでは,来年度から新たに開始される研究課題を中心に,その予算案の概要を紹介します。
1.研究予算の拡充
(1) 内分泌撹乱化学物質総合対策研究費の創設
(11年度362百万円(新規))
いわゆる「環境ホルモン」問題に対する環境対策の科学的基礎として,(1)新たな計測手法に係る開発研究,(2)環境中動態解明に関する研究,(3)環境影響評価に関する研究,(4)環境ホルモン対策の総合化研究を開始します。
(2) 特別研究の推進
(10年度299百万円→11年度213百万円)
現在の社会的要請に基づく環境研究課題として,継続の6テーマに加えて,次のテーマに関する研究を開始します。「空中浮遊微粒子(PM2.5)の心肺循環器系に及ぼす傷害作用機序の解明に関する実験的研究」(H11〜13)
粒径2.5μm以下の空中浮遊微粒子(PM2.5)の健康影響のうち,心疾患等につながる心肺循環器系に及ぼす傷害作用を明らかにするため,動物暴露及び細胞培養試験等を行います。
(3) 国際・国内的な各種研究プロジェクトの推進
(10年度263百万円→11年度222百万円)
国内外の各種の重大な環境問題に対処していくため,10年度に引き続き,「開発途上国環境技術共同研究費」の2課題,「重点共同研究費」の2課題(巨大河川・干潟生態系に関する環境研究),「革新的環境監視計測技術先導研究費」の1課題,「環境修復技術開発研究費」の1課題(海域の油汚染修復)について,研究を行います。
2.環境情報センター事業の推進
(10年度523百万円→11年度514百万円)
国民の自主的な環境保全活動を促進するため,環境基本法により,環境に係る情報の収集・整備・提供が国の責務とされています。本研究所では,環境情報の収集・整備に加えて,パソコン通信(平成8年3月〜),インターネットのWWW(平成9年1月〜),ファックス通信(平成10年10月〜)により環境情報提供システムを管理,運営します。
3.地球環境研究センター事業の推進
地球環境研究の推進のために,引き続き,以下の事業を行います。
(1) 衛星による地球環境観測
(10年度877百万円→11年度869百万円)
平成12年度打ち上げ予定の次期衛星センサーILAS−II(改良型大気周縁赤外分光計II型)のデータ処理運用システムの整備等を行うともに,その後継機に係る基礎調査を開始します。
(2) 地球環境研究データベースの拡充
(10年度159百万円→11年度192百万円)
従来からの事業に加えて,我が国を含めた東アジア地域の熱帯林から寒帯林に関するデータベース(「東アジア・太平洋地域の森林による二酸化炭素吸収量推定のデータベース」)の構築を開始し,衛星画像データ処理により,当該地域の森林による二酸化炭素吸収量の推定を行います。
(3) 地球環境研究モニタリングの拡充
(10年度592百万円→11年度720百万円)
従来からの事業に加えて,北方落葉針葉樹林での温室効果ガス長期観測(「北方林の温室効果ガスフラックスモニタリング」)を開始し,観測手法・体制の確立を図ります。
(4) 地球環境研究の支援等
(10年度844百万円→11年度844百万円)
地球環境研究者の交流の推進,スーパーコンピュータによる研究支援を引き続き行います。
目次
- 環境研究者の人事交流を促進させる
- クロスメデイア型環境問題への展開
- ディーゼル排気による慢性呼吸器疾患発症機序の解明とリスク評価に関する研究研究プロジェクトの紹介(平成9年度終了特別研究)
- 化学物質の生態影響評価のためのバイオモニタリング手法の開発に関する研究研究プロジェクトの紹介(平成9年度終了特別研究)
- 廃棄物埋立処分に起因する有害物質暴露量の評価手法に関する研究研究プロジェクトの紹介(平成9年度終了特別研究)
- PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)環境問題豆知識
- ケンブリッジ(イギリス)滞在記随想
- デファレンシャルGPSを活用した湖沼調査法−尾瀬沼における事例−研究ノート
- 平成11年度地方公共団体公害研究機関と国立環境研究所との共同研究課題について
- 植物との語らい研究ノート
- 新刊紹介
- 表彰
- 人事異動
- 編集後記