新刊紹介
国立環境研究所年報 平成9年度(A-23-'98)(平成10年9月発行)
国立環境研究所の平成9年度の活動状況を総括的に紹介したものである。プロジェクト研究を担当する総合研究部門と基盤研究を実施する基盤研究部門における研究成果及びその発表状況,環境情報センター,地球環境研究センター及び環境研修センターの3つのセンターの業務の実施状況,研究施設の利用状況等をとりまとめている。研究活動については,経常研究:131課題,地球環境研究総合推進費による研究:11課題,特別研究:9課題,開発途上国環境技術共同研究:4課題,重点共同研究:1課題,革新的環境監視計測技術先導研究:1課題,環境研究総合推進費による研究:2課題,国立機関公害防止等試験研究:4課題,環境基本計画推進調査費による研究:1課題,国立機関原子力試験研究費による研究:6課題,科学技術振興調整費による研究:29課題,海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費による研究:3課題,災害対策総合推進調整費による研究:1課題,文部省科学研究費補助金による研究:56課題,特殊法人等による公募型研究:10課題,地方公共団体公害研究機関との共同研究:28課題の,合計約300課題の研究の成果が記載されている。
国立環境研究所研究報告(R-139-'98)(平成10年10月発行)
「気候変動枠組条約第3回締約国会議−交渉過程,合意,今後の課題」
昨年12月,京都において,気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開催され,京都議定書が採択された。この議定書は,先進国や旧ソ連,東欧諸国が2008年から2012年までの温室効果ガス排出量について,数量目標を定めている等,今後の気候変動対策の指針となる重要な国際協定となった。しかし,また同時に,排出量取引や森林による吸収量の算定,途上国の参加問題等,さまざまな課題を残す議定書ともなった。
本報告書は,このような重要な議定書が採択されるまでの経緯の詳細を広く普及し,また,今後の交渉担当者や研究者に残すことを目的として作成された。したがって,まずは気候変動問題が国際問題として取り上げられ始めた1980年代から1992年の気候変動枠組条約採択,そして1995年のCOP1 へと,交渉の大きな流れを概説する。次に,COP1からCOP3までの2年間の議定書交渉の詳細を記述した上で,議定書の条項ごとにその意味を解説する。最後に,議定書で詰めきれなかった項目をまとめ,今後の課題としている。先日(1998年11月)COP4が開催され,ブエノスアイレス行動計画が採択されたところであるが,この行動計画で画期的な進展を図るためにも,COP3までの経緯をふまえておくことは重要だろう。
国立環境研究所研究報告(R-140-'98)(平成10年10月発行)
「平成9年度ILAS・RISプロジェクト報告」
環境庁は,成層圏オゾン層の変動機構の解明とその長期変化の監視を目的として,衛星搭載用の改良型大気周縁赤外分光計(ILAS: Improved Limb Atmospheric Spectrometer),及び大気微量成分の測定を目的とした地上衛星間レーザ長光路吸収測定用リトロリフレクタ(RIS:Retroreflector In-Space)を開発した。これらは,平成8年8月に打ち上げられた ADEOS衛星に搭載された。国立環境研究所では,これらの測定で得られるデータの処理・解析のためのILAS・RIS衛星データ処理運用施設を整備し,運用を行ってきた。平成9年6月末に,太陽電池パネルの事故によりADEOS衛星が運用を停止するまでの約8ヵ月の間,非常に貴重な観測データ,実験データを収集することができた。
昨年出版した平成8年度プロジェクト報告が,プロジェクトの全体像を示すことを主眼にまとめられたのに対して,本報告書は主として平成9年度に行ったILAS及びRISデータの解析,及び検証・比較の結果について,データ利用者への基礎情報を提供することを目的に取りまとめたものである。