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近藤 次郎の写真

 今年6月27日(金),国立環境研究所で研究発表会があった。これは研究所の研究成果を年一回公開するもので,大山ホールでは学術論文の発表,3階では主としてポスター等による展示があった。研究所の守備範囲は大気,水質,土壌,生物,保健で,近頃はこれに地球環境という課題が加わって,オゾン・ホール,酸性雨,海洋汚染,生物多様性,有害化学物質の越境移動などのほか,気候変動,リサイクル,ダイオキシンなど二次的三次的な問題にまで限りなく拡がっている。それにも拘わらず定員が増えないので大変である。

 さらに昨年8月に打ち上げられ,宇宙からオゾンやCO2を観測できる人工衛星「みどり」のデータなどホットな話題は目白押しである。(みどりの故障は6月30日のことであった。)一方聴衆の方は環境意識の高まりもあって地元の方が増えているのは喜ばしいことである。行政改革の中で国環研の在り方が問われているなか,所側としても,テーマの選定,プログラムの作成,展示物,など一層の努力を望みたい。

 さて発表会が終わって所外の方が退去なさった後,OB(四六)会総会となった。発表会の参加者の過半数が研究所に在籍されたことのある先輩,同僚の諸兄姉であることに驚いた。研究所は昭和49年に創立され,大山ホールを始め,研究本館,トロンなどはOBの方々の在職中に建設された。想い出が深いのも当然である。緑濃き構内は木々が繁って見違える程美しい。久しぶりにみる建屋も懐かしい。そのあと食堂で催された懇親会で旧交を温めることができた。懐かしい友が全国各地で大活躍されているのは嬉しい限りである。

 さて唐突だが,昭和58 (1983) 年10月西安の人民大廈の食堂で,セラミックスの研究で著名な柳田博明さんに出会った。彼は東京大学工学部化学工学の教授で中国の合肥大学の交換教授として旅行の途中であるという。私は東京大学退官後,公害研(現:国環研)に移って5年経った頃で思い掛けずこの地で会えて嬉しかった。

 スモッグ・チャンバーの設計を公害研が支援していたので,北京環境研究所の招きで劉所長とタクラマカン砂漠を視察するために蘭州へ向かう途中であった。日本を遠く離れて,昔の同僚に久しぶりに会うことができたと劉さんに話したら,「桃李満天下」と答えた。

 帰国して広辞苑をひいて見ると,桃李とは門下生,採用した人物,推挙した人材等とあり,満城桃李属春官などという辞句があった。今年の研究会やその後の四六会は正にこれであった。当日,出席できなかった旧友からのコメントも幹事が手際よく印刷して下さった。改めて幹事諸兄に感謝し,今後ますます研究会が盛んになることを祈り,本ニュースの巻頭言とすることを光栄とするものである。

(こんどう じろう)

執筆者プロフィール:

専攻は応用解析学。東京大学名誉教授。国立公害研究所所長,日本学術会議会長を歴任。1993年より,環境庁中央環境審議会会長。