第10回全国環境・公害研究所交流シンポジウム
その他の報告
高橋 慎司
今年度で第10回目を迎えた全国環境・公害研究所交流シンポジウムは,当所セミナー委員会(委員長:後藤典弘 社会環境システム部長)の主催により,予定通り平成7年2月21,22日に当所の大山ホールで行われた。今年度のテーマは,「生活排水・閉鎖性水域汚濁水の水質改善」が取り上げられ,水環境改善国際共同研究チーム(稲森悠平 総合研究官)を世話役として,7件の研究発表と総合討論がなされた。また,翌日には,特別講演「水環境保全研究の課題および展望」(講師:須藤隆一 東北大学工学部教授)が行われた。
参加者は,地方環境・公害研究所を含む自治体から57名,環境庁から2名,国立環境研究所から18名,民間から82名,合計159名であった。21日夜の懇親会には,100名以上の参加者があり,総務部の厚意により参加費を集める必要がなかったものの酒も肴も瞬く間もなかった。次年度からは,参加人数を正確に把握しながら会場を設定する必要がある。
以下に,今回のシンポジウムの概要を示す。
1)発生源対策について
汚濁水の発生源対策については,千葉県水質保全研究所,岡山県環境保健センター,神奈川県環境科学センターが代表して発表した。食品工場排水・生活排水に含まれる窒素,リンの除去を効率良く行う方法が報告された。
2)汚濁湖沼対策について
汚濁湖沼として三方湖(福井県環境センター)と児島湖(岡山県環境保健センター)が取り上げられ報告された。閉鎖性水域での汚濁化が進んでおり,積極的に水質改善に取り組むことが必要とされた。
3)直接浄化対策について
水質改善の手法として,植物を用いた除去(広島県保健環境センター)及び人工干潟による方法(東京都環境科学研究所)が報告された。両手法とも,生物を利用した浄化対策であり,生態系への応用が期待された。
以上の研究発表を受けて,総合討論では稲森座長から具体的な提案として,地球温暖化対策用の浄化槽開発計画が示された。
また,須藤教授の特別講演は,水環境研究の過去・現在・未来にわたり,しかも日本からアジアへ向けてのグローバルな水環境保全を提唱した,極めてスケールの大きなものであった。
次年度以降も積極的に交流を深めて行くことを祈念する。
プログラム
平成7年2月21日(火)
(1) 発生源対策
・窒素,リンの食品工場排水処理施設における除去能の現状とその改善
中島 淳(千葉県水質保全研究所)
・窒素,リンの生活排水処理回分式活性汚泥法による除去と操作条件の適正化
山本 淳(岡山県環境保健センター)
・生活排水の循環型流量調整嫌気ろ床・包括固定化担体充鎮ろ過法による窒素の高度除去
井上 充(神奈川県環境科学センター)
(2) 汚濁湖沼対策
・三方湖の汚濁の現状と水質改善対策
石本健治(福井県環境センター)
・児島湖の汚濁の現状と水質浄化対策
村上和仁(岡山県環境保健センター)
(3) 直接浄化対策
・水改善のための生活排水,汚濁湖沼水中の窒素の植物を用いた除去
橋本敏子(広島県保健環境センター)
・人工干潟および海浜における浄化機能と水質改善
−東京都内湾における底生動物の分布と浄化量−
木村賢史(東京都環境科学研究所)
(4) 総合討論
平成7年2月22日(水) 特別講演 水環境保全研究の課題および展望
須藤隆一(東北大学工学部)
目次
- 環境のリスク分析−リスク管理と危機管理巻頭言
- 環境と健康の問題について思うこと論評
- 「第14回地方公害研究所と国立環境研究所との協力に関する検討会」報告
- 水環境における化学物質の長期暴露による相乗的生態影響に関する研究プロジェクト研究の紹介
- 植物は「形」で勝負する − 樹形形成モデルの開発研究ノート
- コンピュータの中の宇宙測定研究ノート
- 歯に衣着せずずいそう
- “Seasonal and diurnal variation of isoprene and its reaction products in semi-rural area” (大気中イソプレンとその反応生成物の季節変化と日変化) Yoko Yokouchi : Atmospheric Environment, 28, 16, 2651-2658 (1994)論文紹介
- 人事異動
- 編集後記