国立環境研究所に期待すること
巻頭言
国務大臣環境庁長官 地球環境問題担当 宮下創平

環境行政は,国民の健康を守り,快適な生活環境を確保するとともに豊かな自然環境を保全し,さらに,かけがえのない地球の環境を保全するという重大な使命を有しております。
政府におきましては,こうした使命を果たすために昨年制定された環境基本法に基づき,環境基本計画の策定を始め,様々な施策の推進に取り組んでいるところであります。環境基本計画は,政府全体の環境施策を総合的・計画的に進めるための基本的方向を示すとともに,地方公共団体,事業者及び国民それぞれに期待される環境問題への基本的な取り組みを盛り込み,経済社会を構成するすべての主体の参加の下に,環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を築いていくための道筋を明らかにするものであります。現在,中央環境審議会において,本年末を目途に鋭意ご審議いただいており,去る7月には「環境基本計画検討の中間とりまとめ」が公表され,以後2ヵ月にわたり広く国民の皆さんのご意見をお伺いしたところであります。政府といたしましても審議会からの答申を受けて,早急に計画を閣議決定したいと考えております。
環境問題へ適切に対応するためには,環境の状況の的確な把握,機構の解明等が重要であり,環境基本法におきましても,科学的知見の充実,科学技術の振興など,しっかりとした科学的な基盤に立っていくことの重要性が規定されております。環境基本計画につきましても,環境研究が環境問題の解決のために,今後,より一層有効に機能するものとなるよう策定しなければならないと考えておりますが,その策定に当たりましても国立環境研究所は政府の環境分野に関する頭脳として大いにその能力を発揮していただいているところであります。
私は,就任後約1ヵ月を経た9月12日に国立環境研究所を視察させていただきました。その研究分野は,大気,水質,土壌,生物など非常に多岐にわたっており,地域の問題から地球規模の問題に至る今日の環境問題の多様さの縮図を見るようでありました。国立環境研究所がこうした広範な研究分野について,限られた予算と人員の中で大きな成果を挙げられていることは,個々の研究者の皆さん方の能力の高さとこれがうまくコーディネートされていることの表れであり,視察を終えて大変心強く思った次第です。
人類が地球環境問題という,その生存にかかわる未曾有の危機に直面する中で,今後,国立環境研究所が,環境問題の解決のために不可欠な環境研究に関して,国内のみならず世界の中核として大きな飛躍を成し得るよう心から念願しているところであります。こうした状況の中,所員の皆さんへの期待も従来にも増して大きくなってきており,皆さんが,今後より一層の研鑚を重ねられ,より大きな成果を挙げられることを祈念しております。
目次
- “持続可能な発展”はパラダイム・シフト?論評
- ピグマリオン効果論評
- "The Structure of a local population and dispersal pattern in the Styan's Grassh opper Warbler, Locustella pleskei." Hisashi Nagata: Ecological Research, 8,1-9.(1994)論文紹介
- Biological Effects of Diesel Exhaust Particles. I. In Vitro Production of Super oxide and In Vivo Toxicity in Mouse. Masaru Sagai, Hiroki Saito, Takamichi Ichinose, Masahiko Kodama & Yoki Mori, Free Radical Biol. Med., 14, 37-47 (1993)論文紹介
- 「唐辛子とにんにくのハーモニー」海外からのたより
- 船底防汚塗料・有機スズによる海洋汚染と腹足類(巻貝)のインポセックス研究ノート
- 赤外線水分計を用いた岩石の水分飽和度の推定研究ノート
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記