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コラム「自然再生」

 政府が2002年3月に策定した「新・生物多様性国家戦略」では,生物多様性が危機的状況にあることを踏まえ,今後力を入れるべき施策として「保全の強化」「持続可能な利用」とともに「自然再生」を1つの柱に掲げています。政府はこの方針に沿って,開発により破壊された河川や湖沼,湿原,干潟,里山などの自然を積極的に再生・修復する「自然再生事業」を進めることにしています。

 自然再生のモデル事業として,環境省と国土交通省が中心となって乾燥化が進む釧路湿原の再生をめざす事業を2002年度から進めています。ここでは専門家や関係機関による検討委員会が「ラムサール条約登録当時(1980年)の環境への回復」を長期目標,「2000年現在の湿原の状況を維持すること」を当面の目標に,湿原に流入する土砂の制御や地下水の上昇を目的とした河川の蛇行復元などが行われています。またこの事業では調査計画段階から地元自治体や専門家,地域住民,NPOが参画しており,さらに湿原の再生状況や動植物の生息・生育状況などのモニタリングデータを反映しながら,その評価を事業にフィードバックしていく手法がとられています。

 こうしたなか,同事業の基本理念や具体的手順を定めた「自然再生推進法」が2003年1月に施行されました。法律では自然再生事業を自然環境の保全,再生を目的とする地域主導の新たな形の事業と位置づけており,具体的な手順として(1)政府が自然再生基本方針を策定し,(2)地方公共団体やNPOなどの実施者が中心となって自然再生協議会を組織する,(3)この協議会で自然再生全体構想を作成し,実施計画について協議する−−ことなどが盛り込まれています。

釧路湿原の自然再生事業の写真
釧路湿原の自然再生事業。農地跡地の表土をはぎとり,地下水位に近づけることで湿地に戻す。
(写真提供:環境省)
釧路湿原の写真