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コラム「バイオマニピュレーション」

 食物連鎖の上位に位置する魚の捕食の影響が,食物連鎖の構造に沿って段階的に下位の植物プランクトンや水質にまで順に影響することをトロフィックカスケード効果といいます。たとえば大型の動物プランクトンを食べる魚の捕食圧が高いと小型の動物プランクトンが優占するようになり,その結果植物プランクトンに対する捕食圧が減って,植物プランクトンの量が増え,湖の透明度が下がります。逆に魚の捕食圧が低いと大型の動物プランクトンが増え,植物プランクトンが食べられて減少し,湖の透明度が上がります。

 この効果を利用して,人為的な操作によって湖沼の水質浄化や生態系の管理を行うことをバイオマニピュレーション,直訳して生物操作といいます。北米などでは,湖沼にブラックバスなどの魚食魚を放流することで動物プランクトン食魚を減らし,その結果大型の動物プランクトンを増やして植物プランクトンを減少させる試みが実際に行われています。ただし,ブラックバス(外来魚)などが在来の生物に壊滅的な打撃を与えていることが日本で問題となっているように,外来魚が湖沼の生態系に予期しない変化をもたらした例は世界各地で報告されています。外来魚に限らず人為的な魚の導入には慎重な対応が求められています。

図:トロフィックカスケード効果のイメージ