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湖沼のエコシステム
- 持続可能な利用と保全をめざして -

環境儀 NO.9

高村典子
多種多様な生物が複雑に影響し合う湖沼。その持続可能な利用・保全には生態学のアプローチが大きな役割を担っています。

 地球上には約14億km3の水があるといわれていますが,湖沼にあるのはそのうちのたった0.007%に過ぎません。私たちはその水を飲料水などの生活用水や工・農業用水として,さらに湖沼全体を漁業や観光,レクリエーションの場として利用しています。その湖沼は生活排水などの流入によって富栄養化し,アオコが異常発生するなど各地で問題となっています。さまざまな手法で浄化対策が行われていますが,なかなかうまくいきません。

 湖沼の水質がその流域の人間活動の影響を大きく受けていることはよく知られています。一方で,魚−動物プランクトンー植物プランクトンは,食う−食われるの関係(生物間の相互作用)を通して,湖沼の水質にまで影響を及ぼすことがわかってきました。

 今後湖沼環境を改善し保全していくためには,汚濁物質を物理化学的に削減・除去するこれまでの対策に加え,生物間の相互作用を含めた湖沼生態系の構造と機能をよく理解し,活用していくことが必要になってきます。

 本号では,湖沼の水質が魚の影響を強く受けていた事実を通して,湖沼における生物間の相互作用を明らかにするとともに,生態系を保全・管理しつつ湖沼利用を進めるための道を探りました。