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2017年2月15日

第2回NIES国際フォーラム/2nd International Forum on Sustainable Future in Asia の開催報告について(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)

    
平成 29年 2月 15日(水)
国立研究開発法人 国立環境研究所
 研究事業連携部門
    部門長   原澤 英夫
    連携総括  藤田 壮
    事務局   芦名 秀一
 

 国立環境研究所(NIES)は、アジア地域での研究機関や政策担当者等との連携強化を目的に、2017年1月26日(木)~28日(土)にウダヤナ大学(インドネシア)において、第2回NIES国際フォーラム/2nd International Forum on Sustainable Future in Asiaを開催しました。本フォーラムでは、アジア地域において注目される5つのテーマ(環境モニタリング、環境リスクと健康、廃棄物管理とリサイクル、生物多様性、気候変動への適応と緩和策の連携)について講演と議論を行いました。
 また、COP22期間中に山本環境大臣より発表された「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」の実現に向けて、NIES、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、アジア工科大学院(AIT)の三者にて、気候変動に関する研究連携をいっそう強化することを目指した共同声明を発表しました。

1.概要

 国立環境研究所(NIES)は、インドネシアのデンパサールを拠点とするウダヤナ大学(UNUD)において、ウダヤナ大学の他、ボゴール農科大学(IPB)、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、アジア工科大学院(AIT)を共催機関として、第2回NIES国際フォーラムを開催しました。

 2016年4月に開始したNIESの第4期中長期計画では、研究ネットワークを更に発展・充実させるとともに、蓄積された科学的知見を適切に発信することを掲げています。その一環でもある本フォーラムは、2015年に採択されたパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)を受け、世界中が持続可能な社会の実現に向けて動きを強めているなかで、これらの取り組みにとってアジア地域が重要な役割を担うものであり、アジア地域の研究機関や政策担当者等との連携を強化することを目的に、アジア各国でNIES、東京大学及びAITが中心となって最新の研究成果や政策動向の共有とともに、科学と政策との協働のためのプラットフォームを構築するために2015年度から年に一度開催しているものです。

 今回のフォーラムでは、アジア地域でも注目されている5つのテーマ(環境モニタリング、環境リスクと健康、廃棄物管理とリサイクル、生物多様性、気候変動への適応と緩和策の連携)を取り上げ、様々な分野の専門家を招いての講演と、来場者との議論を実施しました。各テーマとも、主催共催機関の研究者のほか、インドネシアの政府機関や行政セクターなどから最新の知見の発表をするとともに、それに基づいて来場者も含めて多様なステークホルダー間での活発な意見交換がなされました。また、42件のポスター発表も開催されました。

 また、COP22期間中に山本環境大臣より発表された「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」の実現に向けて、フォーラムの最後にNIES、東大IR3S、AITの代表者によって、アジアにおける今後の気候変動に関する研究連携の強化に向けた共同声明を発表しました。(共同声明の内容については、3.共同声明を参照のこと。)

2.開催概要

日時: 2017年1月26日(木)~28日(土)

主催: 国立研究開発法人 国立環境研究所(NIES、日本)

共催: ウダヤナ大学(UNUD、インドネシア)
ボゴール農科大学(IPB、インドネシア)
東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S、日本)
アジア工科大学院(AIT、タイ)

会場:ウダヤナ大学
Udayana University Post Graduate Building, 3F
PB Sudirman Street, Denpasar, Bali, Indonesia

総参加者数:約150名(講演者を含む)

参加者の集合写真
開会式でのNIES住理事長の挨拶の様子

3.共同声明

 山本環境大臣がCOP22期間中に発表した「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」(2016年11月11日発表)では、適応に関する国際連携を含め、気候変動対策に関する日本の取組や意欲が示されています。この実現に向けて、NIES、東大IR3S、AITがアジアにおける今後の気候変動に関する研究連携の強化に向けた取り組みを加速させることを目指し、(1)気候変動の影響、適応、緩和に向けた多様な研究情報とソリューションから成る知識共有プラットフォームの構築、(2)アジア太平洋地域の国々や都市の気候変動の脆弱性に取り組むための統合評価モデルの開発、(3)アジア太平洋諸国の発展に寄与する国別の気候変動適応研究ネットワークと戦略的知識ネットワークの構築、(4)アジア太平洋地域の気候変動政策に関する意思決定者を対象にした、気候変動分野における体系的、組織的なキャパシティビルディング・スキームの確立、を中心とする共同声明を発表しました。

研究連携のための共同声明(仮訳)

国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)
アジア工科大学院(AIT)
東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)

 グローバルな気候変動の影響が目に見えて拡大し、特に発展途上国での工業化と都市化の進展による環境資源の悪化が進むなか、世界全体で各国と地方自治体は、環境問題への取り組みを実際の行動に移そうと積極的に動いています。これらの国や自治体の目標を達成し、社会の変革を支援するためには、科学的なデータと手法を提供するために世界中の学術機関が連携を強化し、革新的テクノロジーの開発と適切な政策提言を行うことがひとつの鍵となります。

 アジア太平洋地域の発展途上国では、人口の増加に加え、食住の生活必需品の需要が高まっているため、環境問題への取り組みをめぐる状況はより切迫しています。経済の課題と政治力学の変化も、世界の気温上昇を産業革命前に比べて摂氏2度未満に抑えるという地球温暖化対策の目標に影響を与える可能性があります。

 こうした状況を踏まえ、アジア太平洋地域における共通の目標と利益のために連携することは学術機関の責務といえます。また、適切な行動を促進する一方、ネットワークを通じた適切な対策の強化と、そうした協力態勢を通じた脆弱性の軽減をどのように実現していくのかについての新たなメカニズムにも注力する必要があります。

 気候変動への取り組みにおける学術ネットワークの重要性を踏まえ、国立研究開発法人国立環境研究所、アジア工科大学院、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構は、2016年にタイ・バンコクのアジア工科大学院で開催された第1回国際フォーラムにおいて、発展途上国が世界的な環境の枠組みに関わる要件を満たせるよう、共同研究を通じてこれらの国々を支援すると宣言しました。参加機関はこれまでも政策を研究を通じて支援してきており、このネットワークは、科学を実際の行動に変えるうえで、政府、産業界、学術界その他のステークホルダーを強力に結びつける橋渡し役となることができます。ネットワークは今後、アジア太平洋地域で以下の活動をさらに展開していきます。

1. 気候変動の影響、適応、緩和に向けた多様な研究情報とソリューションから成る知識共有プラットフォームを構築します。情報システムとデータセット開発プロセスを戦略化、自動化、体系化するため、リモートセンシング技術や人工知能などのさまざまなICTツールを共同開発・共同利用します。

2. アジア太平洋地域の国々や都市の気候変動の脆弱性に取り組むための統合評価モデルを開発します。この評価モデルでは気候変動のみならず、暴露、都市化、経済成長といった社会経済的要因も考慮されます。

3. インドネシアやタイなど、アジア太平洋諸国の発展に寄与する国別の気候変動適応研究ネットワークを構築し、それによって国際的な著名大学、学術機関と協力してアジア太平洋地域の戦略的知識ネットワークを構築するためのプロセスについて議論します。

4. アジア太平洋地域の気候変動政策に関する意思決定者を対象に、気候変動分野における体系的、組織的なキャパシティビルディング・スキームを確立します。専門家や研究者のほか、市民や企業経営者、政策決定者などに対して研修プログラムを実施します。

 上述の課題に取り組むためのステップとして、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)、アジア工科大学院(AIT)および東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)は、アジア太平洋地域で効果的な行動を行うため、総合的な研究イニシアチブとネットワークの構築に向けた協議を開始しました。このネットワークは、環境に関わる複数の緊急課題に取り組むため、科学、技術、政策領域における有能な人材を育成します。

国立研究開発法人国立環境研究所 理事長 住明正
アジア工科大学院 副学長 山本和夫
東京大学サステイナビリティ学連携研究機構 教授 福士謙介

インドネシア、バリ、ウダヤナ大学にて
2017年1月27日

4.問い合わせ先

国立研究開発法人 国立環境研究所
研究事業連携部門 事務局
芦名 秀一  主任研究員
e-mail: forum(末尾に@nies.go.jpをつけてください。)

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