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2017年2月10日

「気候変動への適応及び緩和策の連携」

NIES国際フォーラムレポート

写真1 最後のセッションの発表者たち

気候変動への適応と緩和策の連携/Synergizing Mitigation and Adaption Action

登壇者

  • 藤田壮 氏(座長兼発表者) 国立環境研究所 社会環境システム研究センター センター長
  • 福士謙介 氏(座長兼発表者) 東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 教授
  • 渡辺徹 氏 山形大学 農学部食料生命環境科学科 教授
  • 渡辺幸三 氏 愛媛大学 大学院理工学研究科 准教授
  • 肱岡靖明 氏 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 室長
  • Rizaldi Boer 氏 ボゴール農科大学Centre for Climate Risk and Opportunity Management in Southeast Asia Pacific (CCROM - SEAP) Executive Director
  • 高間剛 氏 Stockholm Environment Institute (SEI)/su-re.co CEO
  • Retno Gumilang Dewi 氏 バンドン工科大学 Center for Research on Energy Policy Head
  • Daniel Murdiyarso 氏 Center for International Forestry Research (CIFOR) Senior Scientist
写真2~10 発表者ら

内容まとめ

まず、気候変動への「適応」という考え方自体が耳慣れない方も多いのではないかと思います。私たちにとっては、気候変動が進まないようにするために温室効果ガス排出量を削減するなどの緩和策だけでなく、すでに起こってしまっている、あるいはこれからどうしても避けられない気候変動による影響に対する対応策(適応策)をとっていくことも大切な取り組みです。(詳しくはこちらもご一読ください。環境儀『「適応」で拓く新時代!~気候変動による影響に備える~』http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/61/02-03.html

今回の、「気候変動への適応と緩和策の連携」のセッションでは、多数のスピーカーから、アジアの異なる地域での適応と緩和の事例についての発表がありました。一部だけ紹介すると、日本以外の地域での事例としては、デング熱の拡散の抑止策についての研究や、“Sustainable-resilient”(持続可能でしなやかな*)な農業ビジネスに関する事例、インドネシアが低炭素社会へいたるための道のりの研究などがありました。日本に関連する事例としては、「気候変動適応情報プラットフォーム」(http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/)の取り組みや、ICTを活用した環境モニタリングとまちづくりの連動に向けた研究などが紹介されました。
(*resilientの和訳には複数の解釈があるので、これに限定するわけではありません)

気候変動への適応は今後ますます重要になっていきます。特に、発表中では“vulnerable people”(脆弱な人々)という表現がありましたが、環境変化に影響を受けやすいような生活をしている人々にとっては生活を脅かす課題ともなり得ます。
今後は、研究のスケール(グローバル、ローカル)や、手法などの統合の必要性が示唆され、また、様々なステークホルダーの連携や協働もますます需要が高まることでしょう。

共同声明/Joint Statement

このセッションの最後に、NIES、東大IR3S、AITの三機関が主体となって、気候変動に関する今後の研究連携に向けた共同声明を作成しました。その声明の中では、アジア太平洋地域において、主に取り組んでいくミッションとして4点が挙げられました。

  • 気候変動に関する最新の研究情報や解決策について共有する仕組みを構築してくこと
  • この地域の社会的要因も考慮した統合評価モデル(将来予測のためのツールのこと)を開発すること
  • 学術機関のネットワーク構築について議論すること
  • 専門家や研究者だけでなく、市民、企業、政策決定者など様々な関係者に対して気候変動に関する研修プログラムを実施すること

終わりに

2日間の会議を通して、多種多様な背景・分野の研究者たちが研究成果について発表、議論を行いました。今後は、継続してそれぞれの研究を進めていくとともに研究ネットワークをより強化して結びつけることと、これらの成果を束ね、政策に繋ぎ、人々の実際の生活に還元していけるように工夫していくことが研究コミュニティの役割としてますます求められることでしょう。しかし、それは研究者だけでは到底できません。立場を超えた協力が必要です。NIESもそうした取り組みの一助となるような研究活動を引っ張っていけるよう、挑戦を続けていきます。

(文 杦本友里・芦名秀一 研究事業連携部門)
(写真 杦本友里)