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2003年11月28日

循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究(中間報告)
平成13〜14年度

国立環境研究所特別研究報告 SR-60-2003

1.はじめに

表紙
SR-60-2003 [17.4MB]

 大量生産、大量消費の社会は負の遺産として大量廃棄をもたらしたと言われている。問題解決への解の一つが循環型社会の形成を進めることであるが、技術的、制度的な多くの課題を克服していかなけばならない。本研究では、循環型社会への転換を支援するための評価手法や基盤システム整備に関する研究を一つの核にすえるとともに、発生から再資源化・処理及び処分に至るまでの様々な局面での廃棄物問題についての対策技術やシステムの開発、評価を重要な研究対象とし、さらに、有害物質の管理やリスク管理を念頭においた現象解明から制御に関する研究もカバーしている。環境保全を図りつつ、一次資源利用と廃棄物発生を抑制し、再利用する物質の流れを創り上げ、適正な廃棄物の管理を行うことを研究の目標として、平成13年度より5カ年計画で以下の4課題に取り組んでいる。

(1) 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

 物質のフローを経済統計と整合的に記述・分析し、循環の度合いを表現する手法、資源の循環利用促進による環境負荷の低減効果を総合的に評価する手法、地域特性にあった循環システムの構築を支援する手法、及び循環資源利用製品の安全性を評価する手法を開発し、これらを諸施策の立案・実施・達成状況評価の場に提供することにより、さまざまな主体による効果的な「循環」の実践の促進に貢献することを目指す。

(2) 廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

 循環型社会の基盤となる技術・システムの確立に資することを目的として、熱的処理システムの循環型社会への適合性評価手法の開発、有機性廃棄物の資源化技術の開発及びシステム評価、最終処分場の容量増加技術・システムの開発、最終処分場の安定度や環境影響を適切に評価し、それらを促進又は改善する手法の開発を行う。

(3) 資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

 循環資源や廃棄物に含有される有害化学物質によるリスクを総合的に管理する手法として、不揮発性物質を系統的に把握する検出手法及びバイオアッセイ手法を用いた包括的検出手法を開発する。これらの手法も利用して、臭素化ダイオキシン類に関連する有機臭素系難燃剤の挙動と制御手法、有機塩素系化合物を含有する廃棄物の分解手法を開発する。

(4) 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

 し尿や生活雑排水等の液状廃棄物に対して、地域におけるエネルギー消費の低減及び物質循環の効率化を図るため、窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽システムの開発、浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発、開発途上国の国情に適した浄化システム技術の開発、バイオ・エコエンジニアリングと物理化学処理を組み合わせた技術システムと地域特性に応じた環境改善システムの最適整備手法の開発を行う。

2.研究の概要

(1) 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

1) 産業連関表と連動したマテリアルフロー分析手法の確立
 産業連関分析及びマテリアルフロー分析の手法を活かしながら、経済活動のいわゆる静脈部門におけるものの流れを産業連関表を介して経済統計と整合のとれた枠組みの中で捉えるための手法開発とデータ整備を行った。また、マテリアルフローに着目して循環型社会の達成の度合いを計量する指標の開発を行った。このため、先行研究で開発した多次元物量投入産出表の枠組みを、経済活動の静脈部分に適用し、廃棄物やその他の副生成物のマテリアルフローを記述できるように拡張した。また、産業廃棄物の発生量、処理量、処分量を業種別、廃棄物の種類別に推計し、これを産業連関表と組み合わせることで、経済活動との関係を分析した。その結果、家計による財・サービスの消費が誘発する産業廃棄物の発生量は約1億トンであり、家計から直接に排出される一般廃棄物量の約3倍にあたること、最終処分量でみると、公共・間の資本形成による誘発量、とくに建設活動の寄与が大きいことなどが明らかとなった(図1.1)。一方、物質循環の促進にあたっては、現状把握と目標の設定・進捗管理のための適切な指標の設定が必要である。このため、マテリアルフローを洩れなく捉えることを意識しながら、捉えるべき物質循環の形態を分類した上で、それぞれの形態の特徴を検討し、それをもとに物質循環の指標について提案を行った。その結果、「物質利用時間」、「物質利用効率」、「使用済み製品再資源化率」、「使用済み製品再生利用率」、「直接物質投入量」、「国内排出物量」の6つの指標を提案(図1.2)し、これらが物質のライフサイクルの要所要所を捉えたものとなっていることを示した。なお、これらの「循環の指標」の検討成果は、平成15年3月に閣議決定された「循環型社会形成推進基本計画」の物質フローに着目した数値目標の策定に活用された。

図1.1 最終需要別の産業廃棄物発生量・最終処分量への寄与
図1.2 物質循環の6つの指標

2) ライフサイクル的視点を考慮した資源循環促進策の評価
 リサイクルは本当に環境によいのかといった疑問に応えるため、資源の採取から製品の生産、流通、使用、その廃棄に至るまでの一連の過程を総合的にとらえて環境への影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を用いることにより、循環の技術や社会システムの効果を総合的に評価する研究に着手した。社会的関心の高いプラスチックのリサイクルのための各種技術について、技術情報の収集を行ってその特徴を明らかにするとともに、こうした技術にLCAを適用する場合には、システム境界の考え方が重要であること、とくにこれらの技術から得られる再生原料は、直接に比較しうる同等の性状の原料がない場合が多く、用途をさらに追跡して、既存の製品と比較できるところまで評価範囲の拡張を行う必要があることを明らかにした。また、自動車、家電製品などの耐久消費財を対象に、廃棄や長期使用に関わる各主体の意識や行動の把握・分析を行った。例えば、修理・リユース行動へ導いて廃棄行動を減らす可能性について、これらの行動意識は必ずしも高くないこと、意識の高い人でも行動を断念せざるを得ない状況があること、リユースが必ずしも使用年数を長くさせていないことなどから、望まれる効果が得られにくい状況があることが示唆された。一方、自動車や家電製品の使用・廃棄後のマテリアルフローについて、部品の再使用や中古製品の輸出に着目して情報収集を行った。廃家電等だけでなく、廃プラスチック等についても、リサイクル目的の輸出が急増していると考えられ、これに伴う環境問題が懸念されることから、主たる輸出先であるアジア諸国の専門家を招いた会合を開催し、この問題に関する今後の共同研究体制整備に着手した。

3) 循環システムの地域適合性診断手法の構築
 本研究は、地域の循環資源関連情報を、地理情報システム(GIS)等の情報技術を活用して統合的に分析し、資源循環システムの地域への適合性を診断するシステムを具体的な関係主体と協力して開発しようとするものである。対象地域を埼玉県に設定し、建材と建設解体廃棄物の流通、発生、再生品需要に関する地理情報を収集して、県内外における地理的なマテリアルフローをGIS上に作成した(図1.3)。建材の調達における移動範囲は、産出場所や重量、運搬性、貯蔵性等の特性に制約されていた。建設解体廃棄物に対する破砕等の中間処理能力は建築工事等の需要地に多く分布するが、それ以外の地域からの発生は、まず近隣の処理能力を有する場所に移動して一次処理され、さらに幹線道路等を通じて需要地まで運ばれると考えられた。建設解体廃棄物の物流モデルを構築して実態と比較したところ、ある場所で発生した廃棄物が移動する範囲は、主に中間施設等の拠点の分布とそこに達するまでの移動時間に支配されることが示唆された(図1.4)。また、需給の適合に係わる要因として、中間/再生処理業者の受入条件と比較して、利用側が材料として要求する品質項目のほうが多く、需要に合わせた循環資源の選択と品質変換技術を導入する必要があることを示した。さらに、これらの情報を用いて、地域レベルのリサイクル率、環境影響や経済波及効果等、資源循環システムの地域適合性を診断する手法の開発を進めた。

図1.3 埼玉県内のコンクリート塊の移動
図1.4 所沢市から幹線道路を用いて3時間で移動できる範囲

4) リサイクル製品の安全性評価及び有効利用
 様々なタイプの廃棄物の利用法を拡大するためには、その利用や処理過程において安全性を確保すると同時に環境負荷を最小限にすることも重要である。それらの研究の一環として、再生建材を中心としたリサイクル製品の安全性評価方法の確立、および有効利用を促進するための環境安全管理制度のあり方などについて検討した。即ち、スラグを有効利用する際の環境安全性を確保するための試験方法を設計・開発するために、各種試験(全含有量試験、酸抽出量試験、アベイラビリティ試験、単一バッチ試験、pH依存性試験、拡散試験、シリアルバッチ試験、カラム試験)を適用し、溶出挙動などを特性化し、酸抽出量の把握による直接摂食の影響把握試験とシリアルバッチ試験による短期および長期溶出フラックスを把握する方法を提案した。さらに、品質のばらつきの要因を解析し、環境安全性からみた品質の管理手法の考え方を提案した。リサイクル製品の安全性を担保しながら利用していくための管理制度について、国内外の制度比較を行い、様々な安全管理の視点を抽出した上で管理制度の枠組みを設計し、利用状況・利用用途をふまえた管理フローを提案した(図1.5)。また、木材系廃棄物の利用法拡大の事例的研究として、その炭化物の有害ガス吸着能を室内空気汚染対策に利用するための炭化物ボードの作成や利用法の検討のほか、VOC簡易測定法、変異原性試験、免疫毒性試験、発がんプロモーター試験などの安全性評価に関連する試験法の確立に努めた。

図1.5 スラグの環境安全管理の枠組み

(2) 廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

1) 循環廃棄過程における環境負荷の低減技術開発に関する研究
 循環型社会に適合した廃棄物処理技術は、技術とコスト、リスクなどを総合した観点から環境負荷物質の排出を最大限抑制可能であることが要求される。そこで、熱処理からの環境負荷削減技術として、ダイオキシン類排出抑制のための排ガス高度処理材料の基本的な処理性能と支配因子を検討した。活性炭および活性コークス各種材料間で平衡吸着量に10倍以上の違いがあり、これには材料の比表面積と径1nm以下のミクロ孔が重要な因子であることを見出した。また、ガス化溶融プロセスの灰試料を用いた加熱実験により、灰の炭素含有率とダイオキシン類生成量との関にほぼ比例関係が成立することを見出した。このことを負荷物質排出のデータベース化に応用可能と考えられた。次に、有機臭素化合物の物理化学パラメーターを精密に測定した。とくに、ブロモフェノール類の水への溶解度に関し、図2.1に示すように臭素数が1つ増えるのにともない溶解度が約1/10に減少する置換効果を見出した。1-オクタノール/水分配係数は高臭素数の物質ほど大きく、溶解度と傾向を異にした。水への溶解度にもとづき推算したヘンリー定数は臭素数に依存せずほぼ一定値であったほか、溶解度水準のほぼ等しい他の多環芳香族ほかの非極性物質と比較すると、1/100~1/1000程度の低い値となる特性が明らかになった。このように、臭素系難燃剤関連化合物について基本的な物性データベースを蓄積し、潜在的に環境負荷となる有害化学物質および資源回収の対象となる物質が、処理・資源回収プロセスまたは環境中においてどのような挙動をとるかを解析・評価する上で有用なツールが得られた。

図2.1 ブロモフェーノール類の水への溶解度に対する臭素数の影響とクロロフェノール類との比較

2) 資源循環技術・システムの開発
 有機性廃棄物の資源化を促進するために性状的問題(高含水率・腐りやすい)への適用技術および地域資源循環にマッチングした資源化要素技術やシステム開発が重要である。そこで有機性廃棄物の資源化要素技術として、乳酸発酵、水素発酵およびメタン発酵等の炭素や水素回収技術、ならびにアンモニア回収技術の開発を進めた。生分解性プラスチックの原料要件から供使乳酸菌L.maniphotivolunsを選定し、その最適な発酵条件(培養pH5.0,微量元素Mn)を明らかにした。これらの条件を基に生ごみからの乳酸発酵・回収特性に関するセミパイロット規模による実験を行い、図2.2に示す乳酸に関する物質収支を明らかにし、生ごみからの乳酸回収の実用化を判断する情報を示した。バイオガス回収プロセスとして乳酸発酵資源化残差のベンチスケール高濃度湿式メタン醗酵処理をおこなった。96日間の馴致(延投入残渣量604gwet)後、約30gwet/dayで連続的に生ごみ投入する実験(pH無制御)を164日間行い、その間の物質収支解析からCODCr分解率は66%、質量ベースの残渣分解率は72%となり、残渣の分解率としては非常に高いことが示された。一方、有機性廃棄物のメタン発酵処理で副次的に発生する高濃度アンモニアは、脱窒素プロセス追加によるコストの増加を招くばかりではく、高速メタン発酵に対して多大な阻害を与える。わが国の窒素収支のアンバランスを解決するための技術として、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)粒子によるアンモニアの直接除去・回収プロセスの基礎的および実証的研究を行い、水中からのアンモニアの吸収・除去およびMAP粒子からの脱着反応の物質収支、またこれらの反応の量論的関係および示差熱・熱重量関係を明らかにし、加熱MAP粒子からのアンモニアガス・結晶水放出と加熱MAP粒子へのアンモニア再吸収反応が完全に可逆的であることを示した。

図2.2 生ごみ20kgからの乳酸回収量及び物質収支

3) 最終処分場容量増加技術の開発と適地選定手法の確立
 最終処分場残余容量の逼迫と新規陸上処分場建設の困難性から、処分場容量の増加技術や海面最終処分場の役割、及び海面最終処分場の安全性を確保するための適地選定に関する研究が必要である。そこで本研究では、海面最終処分場のライフサイクルにおける環境負荷量(LCA)ならびに海面処分場内における物質および水分の移動とその収支の把握により処分場のリスクを評価し、環境影響評価を行う手法を確立する。最終処分場のライフサイクル過程における環境負荷量については、評価項目を消費エネルギー、二酸化炭素とし、海面と陸上処分場の特長を比較した(図2.3)。その結果、エネルギー消費量は海面、陸上それぞれが1m3当たり668MJ、420MJ、二酸化炭素は、50kg、38kgとなり、エネルギー消費量が1.6倍程度、二酸化炭素発生量が1.3倍程度海面処分場の方が大きくなった。海面処分場のような広域処分システムにおいては、積出基地と輸送に関する環境負荷の寄与が大きいことを示した。また、水処理部分に対してはスケール効果や集排水構造から海面最終処分場の優位性が高いことが判明した。海面処分場の安全性確保については、暗渠工法の集水効果を確認するため断面二次元解析を実施した結果、排水暗渠設置後の数日で保有水が集水暗渠の位置まで低下していることが確認できた。また、月降雨量100mm程度を想定した降雨強度を与えても、この水飽和度分布に大きな変化はみられなかった。解析では、浸透ベクトルを可視化することで、保有水や雨水浸透水が集水暗渠に向かって移動していることが確認できた。一方、排水暗渠を敷設することにより、解析側面に向かっての流線ベクトルは確認されなかった。水位を低下させただけでは、系外へ向かっての流線を残す可能性が否定できないが、本工法によって系外へと向かう流線をほぼ皆無の状態にすることが可能になることが確認できた。

図2.3 海面及び陸上最終処分場における環境負荷量の内訳

4) 最終処分場安定化促進・リスク削減技術の開発と評価手法の確立
 安定型廃棄物処分場に搬入される廃棄物の硫化水素発生のポテンシャルを簡易に評価できる手法を開発すること、資源化処理残渣(シュレッダーダスト)および都市ごみ焼却灰の混合埋立物に関する安定化促進型の最終処分場建設に関する新しい技術を開発すること、最終処分場の安定化を評価するために既存の安定化指標に加えて新たなバイオ指標を検討すること、そして埋立処分場における微量汚染物質の長期的な挙動予測に資する基礎的な知見を得ること、を研究目的とする。安定廃棄物の硫化水素発生の簡易判定および迅速判定手法を提示した。また、安定廃棄物から抽出される有機物の特長と硫化水素発生の関係を明らかにした(図2.4)。特に石膏ボードに使用される約0.5%のグルコース糊が廃石膏ボードからの硫化水素発生に関与している可能性が指摘された。安定化促進技術の開発では、運転初期のセルの挙動から、通気は微生物分解を促進し、温度を急激に上昇させること、浸出水の循環のみではテストセル内の廃棄物層の温度上昇ないことが判明した。また、セル内の水分センサーから水分の移動を数値化できることを示した。既存処分場の安定化評価については、簡便な熱画像計測によるメタン放出地点の検出と閉鎖型チャンバー法によるフラックス計測の組合せにより、不均一に分布する地表面メタンフラックスの迅速な計測が可能になり、メタンフラックスと地表面温度の相関を用いて温度分布図と限られたフラックスの測点より、埋立地全体の地表面メタン放出量が推計できることを示した。また、遺伝子的手法による新たなバイオ指標選定手法の可能性を示した。微量汚染物質の長期挙動については、人工汚染土壌からのphenanthreneとpyreneの溶出が十分な時間経過後には吸着平衡支配になること、吸熱反応性であることを明らかにした。また、共存物質として溶存性フミン物質(DHM)の添加によりPOPs溶出濃度が上昇し、コロイド状のPOPs-DHM複合体の存在が示唆された。一方、焼却灰主体の埋立処分場のボーリングコア調査からのDXNsは、同族体パターンから下層ほど高塩素化体の割合が高くなることを示し、その理由がPOPsの収着のDHM親和性にあるとした。

図2.4 安定廃棄物抽出液の硫化水素の発生特性

(3) 資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

1) バイオアッセイによる循環資源・廃棄物の包括モニタリング
 循環資源や廃棄物、土壌、排水、排ガスなどに含有される有害物質を、バイオアッセイ法により包括的に、かつ簡易に検出する測定監視手法を開発すること、また、ダイオキシン類縁化合物把握にむけたバイオアッセイ手法の適用と未知物質の探索を行うことにより、循環廃棄過程における塩素化ダイオキシン類以外の制御対象物質群候補をスクリーニングすることを研究目的としている。この2年間の目標設定としては、難分解性の残留性有機化学物質(POPs)の代表的物質であるダイオキシン類やPCBに対して、酵素免疫測定系アッセイ(ELISA)及びAhレセプター結合アッセイCALUX(Chemical-ActivatedLuciferaseGeneExpression)の導入と前処理系の開発を含めたモニタリング手法検討及び循環資源・廃棄物試料への適用を行うことが挙げられ、実試料として、フライアッシュ及び廃PCB油を対象としたモニタリング研究を実施した。窒素雰囲気下におけるフライアッシュ脱塩素化処理過程でのバイオアッセイ手法の導入をはかるため、脱塩素化処理実機装置の処理前原灰と処理灰と、ラボ装置による中間的脱塩素化試料に対して、CALUXを適用し、毒性等量値(バイオ-TEQ)を求め、ダイオキシン類の化学分析値と比較した結果、化学分析値とバイオアッセイ値間に類似の傾向が認められた(図3.1)。バイオアッセイ値は化学分析値に比べて1.1~5.5倍の範囲にあり、脱塩素化処理での条件スクリーニングあるいはモニタリング手段としての有効性が認められた。フライアッシュ試料のCALUXによる定量下限をマトリックスの異なる3種のフライアッシュ試料を用いて検討した結果、20~40gの試料を前処理した場合の定量下限は高めの見積もりにおいても1pg-TEQ/gであると考えられた。PCB処理への応用研究も進めており、フライアッシュ同様の44%硫酸シリカゲル加熱還流法を用いることにより、PAHsが排除でき、PCB濃度にして数ppm程度相当のTEQモニタリングがCALUXにて十分可能であることがわかった。さらに、廃棄物処分場浸出水試料を対象とした広範な生物試験手法(バイオアッセイバッテリー)の標準化について検討した結果、急性毒性、遺伝子毒性、内分泌撹乱性、生態毒性などの幅広い毒性が検出可能であり、濃縮、抽出等の前処理を行わなくとも試験別で有意な差のある毒性が検出されることが分かった。これらの成果に基づき、処分場管理のためのスコアリング手法を提案した。

図3.1 フライアッシュ試料の化学TEQとCALUX及びERODにより求めたバイオ-TEQの比較

2) 有機臭素化合物の発生と制御に関する研究
 ヒトや環境での蓄積傾向が確認されつつある有機臭素化合物を緊急の検討対象とし、その主たる発生源、環境移動経路をフィールド研究から確認し、制御手法を検討することを目的としている。中長期にわたる計画的な対策策定のための基盤情報を得ることを目的に、テレビに含まれる臭素系難燃剤の年間の廃棄フロー量を推計した。その結果、非代替シナリオでは、近年のテレビの出荷台数はほぼ一定であるにもかかわらず、テレビカバーに含まれて使用済みとなるBr量は2020年度まで増加し続け、2000年度比で3.7倍となることがわかった(図3.2)。非臭素系難燃剤シナリオは、最短期間で非臭素系難燃剤に代替が進む場合を想定したものであるが、全Br量のピークが2010年度頃になると予測され、2000年度比で2.6倍の全Br量であった。したがって、仮に迅速に代替が進んだとしても、2000年度の2.6倍の量を適正にリサイクル・処理することが必要になることがわかった。7か所の廃棄物埋立処分場(一般廃棄物処分場6か所、産業廃棄物処分場1か所、いずれも管理型埋立地)において、浸出水処理施設の前後で浸出水試料を採取した。そして、採取試料水中に存在する臭素系難燃剤については、PBDEsの同族体および異性体などの測定を行った。7か所の埋立処分場浸出水から、ポリ臭素化ジフェニルエーテルが検出された。その主要異性体はPBDE-47、-99および-100であり、それらの3異性体の合算濃度は最大4ng/L(平均0.56ng/L)であり、テレビケーシング材の細破砕物からの溶出も確認された。2臭素化のPBDEに対する水溶解度を実験的に求めたところ、塩素化ダイオキシン類と比較して102~106倍であり、水に対する移動性はかなり高いことが確認された。

図3.2 廃テレビに含有される臭素量の予測

3) 循環資源・廃棄物中有機成分の包括的分析システム構築
 現在汎用されている有害化学物質の分析法は多くがガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を利用したものであるが、この方法は基本的に、熱的に安定で、かつ300℃位までの温度域においてある程度以上の蒸気圧を持つ物質に限定される。一方、循環資源や廃棄物で対象とする化学物質には、不揮発性物質や熱的に不安定な物質も多く含まれており、これらに有効な手法として液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を中心とした有機成分の包括的分析システムの構築を目指している。廃棄物関連化学物質の現在のLC/MSによる感度を明らかにするため、55物質を選び、APCI(AtmosphericPressureChemicalIonization:大気圧化学イオン化)、ESI(ElectroSprayIonization:エレクトロスプレーイオン化)の感度を評価した。有機臭素化合物の感度は他の化合物より2、3桁低く、ニトロ化物の一部は1、2桁低い。これらの物質は一般にイオン化エネルギーや酸度が高く、かつプロトン親和力や電子親和力が低い。溶媒イオンを介してイオン化が進むAPCI、ESIではイオン化はほとんど起こらない。そこで、低感度の化合物を高感度で測定するための新たなイオン化法としてSGDI法(インスプレーグロー放電イオン化法)を開発した(特願2002-184622(平成14年6月25日))。このイオン化装置は、市販のLC/MSのAPCIイオン化装置に、グロー放電電極、放電電源を付加して製作し、スプレーガスにアルゴンを用いたものである。SGDIとAPCIによるニトロナフタレンの感度を比較したところ、SGDIによるイオン強度、S/N比はAPCIに比べ、それぞれ約30倍、約50倍大きかった。このように芳香族ニトロ化合物などの物質で、従来のLC/MSのイオン化法に比べ数倍から数百倍の感度が得られ、これまでLC/MSで測定できなかった物質の範囲を大幅に縮小できることが期待される。

4) 循環資源・廃棄物中ダイオキシン類やPCB等の分解技術開発
 中期計画の前半においては、最近開発されつつあるPCB分解技術における分解機構の解明、電解還元などによる有機塩素化合物の分解技術開発を中心に研究を行った。とくに前者では、PCB処理においてはPCB消失の確認をしただけでは、安全性の担保は完全とは言い難く、解機構の解明やPCB以外の有害物質有無の確認が重要である。ここではパラジウム・カーボン(Pd/C)触媒分解法と紫外線分解法におけるPCBの分解機構を解明することにより、PCBの安全で、安定的な分解処理手法を確立することを目的とした。連続してオルト、メタ、パラへ塩素が置換している2,3,4-トリクロロビフェニル(#21)からの主な一脱塩素化体は光反応ではオルト位が脱離した3,4-D2CB(#12)で、触媒反応ではパラ位が脱離した2,3-D2CB(#5)であった(図3.3)。次に光反応、触媒反応ともメタ位脱離が起きていた。また光反応では、塩素が転位した反応生成物(2',3,4-T3CB)も見られたが主要な経路ではなかった。デカクロロビフェニル(#209)の分解反応では、光反応、触媒反応とも反応開始後、#207、#208が同程度出現しており、オルト位から脱塩素した#206は検出されなかった。脱塩素化はオルト位では起こりにくく、メタ位またはパラ位からの脱塩素が主反応と考えられた。その後も、オルト位の塩素が脱離しない形で反応が進み、オルト位にのみ塩素が置換されている#54となる。光反応では#54以降は転位反応による経路が主となっており、不安定なオルト位から容易に安定な位置へ転位した後脱塩素が起きると考えられた。電解還元で生成させたラジカルアニオンをメディエータとする脱塩素化法によって1-クロロナフタリンおよびPCBの脱塩素化が確認された。反応速度はメディエータ濃度に比例するので、メディエータ前駆体(NaphthaleneやBiphenyl等)の濃度調整によって反応速度を制御することが可能となる。PCBの脱塩素反応も迅速に進むが、置換位置によって塩素の脱離しやすさが異なることも明らかとなった。

図3.3 光反応及びPd/C触媒反応における分解経路の比較

(4) 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

1) 窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽、消毒等維持管理技術システムの開発
 生活系液状廃棄物からの栄養塩類除去は富栄養化防止上重要な課題である。この栄養塩類の中で我が国が100%輸入に依存しているリンの内外収支をみても、水域への負荷は著しく高く(図4.1)、その効率的な除去が必要なこと、また、リンは枯渇する資源として米国が輸出禁止していることから、その除去・回収・再生資源化技術の開発は極めて重要な位置づけにある。それ故、公共用水域の汚濁負荷の60%程度を占める生活排水の対策として下水道と双対する浄化槽の高度化技術開発は必要不可欠である。これらの点を踏まえ、窒素、リン除去機能を有さない合併処理浄化槽のリン資源回収型高度処理システム化への転換を図る開発研究を行った(図4.2)。その結果、合併処理浄化槽へ吸着脱リン法を付設し、かつ、循環脱窒を組込むことにより、全窒素濃度は10mg・l-1以下、全リン濃度は4ヶ月~12ヶ月の長期間1mg・l-1以下の水質が達成できることがわかった。さらに、破過したリン吸着担体からリンを回収するための効率的な脱離条件を検討し、脱離液として7%-NaOHが適正なこと、吸着担体から80%以上の脱離効率を得る場合、脱離液は吸着担体量の数倍程度の量が必要で、かつ、この脱離液を3回繰り返し使用できることを明らかとした。これらの知見に基づきリン回収・再生ステーションの構築が可能となった。

図4.1 我が国におけるリンの内外収支フロー
図4.2 窒素,リン除去・回収型高度合併処理浄化槽,消毒等維持管理技術システムの開発

2) 浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発
 高度処理浄化槽の生物膜法を活用した浄化システム管理技術として窒素除去に重要な硝化反応を担うアンモニア酸化細菌等の硝化細菌の分子生物学的手法を用いた混合微生物生態系での迅速検出法及び浄化機能の高度化を促進させる有用微小動物の生物膜等への高密度定着化手法の開発を行った(図4.3)。その結果、硝化機能は高いがrRNAを十分に含まず、かつ、FISH法では認識が困難なアンモニア酸化細菌に対しては機能遺伝子をターゲットとしたinsituPCR法で認識できることが明らかとなり、アンモニア酸化細菌の分布特性の解析が行える可能性を導いた。また、処理水の透明度向上、余剰汚泥の低減に有用とされる輪虫類Philodinaerythrophthalmaは穀物残渣としての米糠の添加で増殖能が飛躍的に向上すること、すなわち、増殖促進成分が含有されていることを明らかとした。また、浄化槽にP.erythrophthalmaを植種すると同時に米糠を増殖促進成分として添加することにより、短期間で104N・ml-1以上のレベルに高密度定着化できること、個体数の低下時には増殖促進成分の添加により再び高密度定着化が図れること(図4.4)、個体数増加とともに処理水の透明度は著しく向上することが明らかとなった(図4.5)。さらに、P.erythrophthalmaは増殖促進成分を主要基質とすることで大量培養可能なことおよび大量培養後、グリセロールを添加し-80℃に凍結乾燥することで長期保存が可能であることがわかり、シーディング剤としての活用手法の目途をつけることができた。

図4.3 浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発
図4.4 P.erythrophthalmaの個体数密度の変化
図4.5 P.erythrophalmaの個体数密度の変化

3) 開発途上国の国情に適した省エネ・省コスト・省維持管理システム技術の開発
 生活排水等の液状廃棄物に対して、省エネルギー、省コスト、省維持管理システムをアジア太平洋地域の開発途上国を含めた各国に移転可能な技術として、土壌・湿地等の生態系に工学を組み込んだ生態工学が重要な位置づけにある。この生態工学の中で、食料生産と窒素・リン除去資源リサイクルを可能とした、水耕栽培等による浄化方法と、東南アジアで非常に有効なラグーンの開発を行った。その結果、タイ王国における一般的な食用野菜のクウシンサイ(パックブン)とクレソンを水耕栽培植物として用いたアジア工科大学の植栽水路におけるCOD、SS、全リンの除去能はクウシンサイにおいて各々10、14、0.034g・m-2・day-1、クレソンにおいて各々8.3、10.8、0.022g・m-2・day-1であり、水耕栽培植物による浄化の可能なことを明らかにした。また、植物の重金属含有量は通常の野菜と同等であり、食用として問題ないことも明らかとなった。なお、本手法は二枚貝、水生昆虫、カエル、小魚などの食物連鎖生態系からなる多自然型浄化法であると同時に、湖沼周辺の景観の改善や周辺住民への環境教育の場としての役割を演ずることが示唆された。さらに、ラグーンシステムについては、タイ王国ペプリロイヤルプロジェクトとの共同調査において、嫌気ラグーン、好気ラグーンの適正配置において流入生活排水のBOD、全窒素、全リンの除去率は各々90%、72%、86%となり、高い浄化能力を示すことが明らかとなった(表4.1)。このラグーンシステムの最終ラグーンに、魚類を導入することで懸濁物の除去効率が高まると同時に、汚泥減量効果が高まることが明らかとなった。高次捕食者によるラグーンシステム処理の効率化やコンパクト化の可能性が示唆された。

表4.1 タイ王国Royal Projectラグーンシステムの浄化特性

4) バイオ・エコと物理化学処理の組合せを含めた技術による環境改善システムの開発に関する研究
 バイオ・エコエンジニアリングによる生物処理と物理化学的処理を組み合わせた、窒素、リン除去の高度化、資源化プロセスの要素技術と負荷削減による有害藻類発生低減化効果や資源循環の両立を図るための評価技術からなるベストミックス化システム開発は重要な位置づけにある。物理化学的処理の要素技術としてラジカル反応を利用した電気化学的処理パイロットプラントによる実証化試験を行うとともに、バイオエコエンジニアリングおよび物理・化学的処理の組み合わせを含めた技術の性能評価として、湖沼シミュレータによるアオコなどの有害藻類の発生抑制の解析評価に基づく地域特性に応じた最適整備手法確立の開発を行った。その結果、ラジカル生成作用に基づく電気化学処理は生活排水などを高速で処理可能であり、窒素はN2ガスとして、リンは厚密性の高い沈降容易な汚泥に含有され高度に除去可能なことが明らかとなった。また、霞ヶ浦で大きな問題となっている有害藻類としてのオシラトリアの冬季における優占化は高温下での増殖能と同時に、低温下で窒素、リンを吸収し増殖することが重要な要因であることが明らかとなった(図4.6)。これらのことから、オシラトリアの増殖抑制には年間を通しての窒素、リン除去方式の高度処理システムによる負荷削減対策が必要であり特に冬季に能力が低下するエコエンジニアリングにおいては、低温に強い植物種の導入などが極めて重要であることが明らかとなった。

図4.6 ミクロキスティス属とオシラトリア属の競争に及ぼす水温の影響

3. 今後の検討課題

(1) 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

 国全体のマクロなものの流れに関する情報を経済活動部門ごとにとらえるための基盤整備に関しては、静脈部門のデータを、動脈部門のマクロな資源フローに関するデータとマスバランスを整合させつつ結合することが当面の課題である。また、「循環の指標」については、「循環型社会形成基本計画」に盛り込まれた3つの数値目標を補う指標の開発、とくに循環型社会形成への取組みとマテリアルフローとの関係の記述や、地域レベルへの適用などが課題である。また、廃棄物処理・リサイクル技術の環境負荷低減効果の評価については、収集した情報をもとにLCA結果のとりまとめを進め、容器包装リサイクル法などの法制度の運用、見直しなどに活用可能な情報を提供する。耐久消費財などを対象とした資源循環の促進のための各種施策に関する研究については、これまで実施した現状把握をもとに、より適正な管理のための政策提言につなげていくことが課題である。一方、資源循環システムの地域への適合性の診断に関しては、事例的に作成した県内外における主に建設資材や産業廃棄物の地理的なマテリアルフローに、一般消費財や一般廃棄物を含めた全ての物質情報、ならびに人口構成等の社会情報を加え、地域資源循環情報基盤として充実させてゆくことが課題である。また、これら情報を利用して、循環資源物流を最適化し、地域循環の適正さを評価する手法を、国レベルではなく地域レベルに適合させる、手法の改良と具体化が課題である。リサイクル製品の安全性評価及び有効利用に関しては、溶融スラグの有効利用の際の環境安全性確保のために、今後、スラグ製造、有効利用状況の継続的調査、有害物質のリスク管理と資源回収の両面からの制御戦略、長期的利用過程での品質劣化現象の環境影響に及ぼす影響とその評価手法の確立、提案した環境安全管理制度の枠組みの政策的反映方法等について検討する必要がある。また、利用法の開発が遅れている木材系廃棄物においては炭化物としての利用法の拡大、有害物質の挙動の把握から当該物質の含有量の低減化に関する研究が必要である。

(2) 廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

 熱処理からの環境負荷削減技術に関しては、ダイオキシン類代替物質を対象に得られたデータにもとづき、ダイオキシン類の高度処理特性および複数の物質が共存する実際の条件での処理特性を明確にする。有機臭素化合物の物理化学パラメーターに関しては、ジフェニルエーテル類など使用実績の多い臭素系難燃剤を対象とし、高臭素化物質であるため物性測定の一般に困難な物質のデータの蓄積を図り、処理過程における挙動解析や環境進入後の運命予測などに応用する。資源循環技術・システムの開発については、乳酸発酵残渣の利用、滅菌問題、固液分離技術を検討すること、水素発酵ではガス発生量の増加と安定化を検討する。また、最吸着MAP粒子の固液分離・乾燥アンモニアの脱着を検討する。最終処分場容量増加技術の開発と適地選定手法の確立については、処分場再生を含めた既存処分場の有効利用、前処理等による埋立廃棄物量の大幅な削減等の検討、ならびにライフサイクル評価の算定方法の精緻化を行う。また、海面処分場廃棄物層内の不飽和水移動をガスの移動にも着目し、酸素を取り扱ったモデルを構築する、また、これらの水分移動モデルで解析された結果を基に、外海との物質移流拡散量を求め、環境影響評価量を評価する手法を構築し、適地選定手法に組み込む。最終処分場安定化促進・リスク削減技術の開発と評価手法の確立については、安定廃棄物の硫化水素発生ポテンシャルを基準化するための評価手法の精緻化を図り、廃石膏ボードの硫化水素発生能を実証レベルで評価する。また、3つのテストセルの条件である好気性セル、嫌気性セルの安定化促進効果を評価し、好気性セルにおける最適通水・通気条件を明らかにする。さらに、いろいろなタイプの処分場に微生物群集構造解析を適用し、比較検討する。微量物質の最終処分場におけるDXNsの挙動については、DHMとの相互関係を明らかにする研究をさらに進め、DXNsの移動の支配因子を明らかにする。

(3) 資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

 バイオアッセイモニタリングについては、今後、ダイオキシン類縁化合物検出アッセイについては廃棄物や汚染土壌、底質などの媒体別に段階的な分画を行って幅広いデータ蓄積を図り、未知活性物質検索を継続するとともに、前処理を含めた簡易モニタリング手法としての洗練を行う。バイオアッセイバッテリーについては、バッテリー選択やスコアリングについてさらに検討を加え、包括的な毒性評価に最適な運用システムを提案するとともに、処理対策に結びつく知見獲得を目指す。埋立処分場浸出水から、ポリ臭素化ジフェニルエーテルが検出されたが、このような水系進入の重要性を示すデータとともに、浸出水処理過程での一定の除去を示す研究成果も出されつつある。今後、気系進入やリサイクル系の挙動と併せ、その分解方法と分解過程の挙動について検討を進める。分画された試料をLC/MSで高感度検出する基本的な方向は今回の研究で定められたので、今後は実試料を使った実験を重ねることにより、その有効性を高めていく。廃PCBをパラジウム・カーボン触媒および光照射で分解する場合、触媒法ではオルト位が脱離しにくく光分解ではオルト位が脱離しやすい等、両分解法による反応機構の違いについて解明できた。今後は、電解還元や微生物分解(好熱菌)についての検討を継続するとともに、PCB異性体混合時の反応性の違い等未解決の点を明らかにするとともに、PCN等他の物質で技術の有効性を検証する。新たに金属ナトリウムによる分解機構を解明し、前2法と比較する。また、PCB処理施設における解体現場など室内環境中PCBを迅速かつ容易に測定するための簡易モニタリング法の開発を行う。

(4) 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

 窒素、リン除去・回収型高度処理浄化槽、消毒等維持管理技術システムの開発では、イニシャルコスト、ランニングコストのミニマム化、衛生面としての消毒法も考慮し、浄化槽の高度処理化へ向けての操作条件の適正化およびリン回収拠点としてのリン回収・再生ステーションでリン回収実証試験を行い、窒素、リン除去・回収型高度処理システムを導入したモデル地域を確立するための指針を立案する。浄化システム管理技術の簡易容易化手法の開発では、窒素除去の効率化に関わる硝化細菌、脱窒細菌の混合微生物生態系における微生物群集の構造解析、微生物群集構造と浄化機能との関係を解明するための解析手法の研究を推進し、正確で汎用可能な浄化システム管理技術としての熟成を図るとともに、浄化システムの機能向上化に貢献する有用微小動物等を浄化システムの管理現場で容易に活用可能とするための適正手法を立案する。開発途上国の国情に適した省エネ・省コスト・省維持管理システム技術の開発では、これまでの研究成果を踏まえ、水耕栽培の植栽密度、諸管理条件の適正化と浄化機能やラグーンシステムでの高次捕食者の汚泥減量化に対する検討、さらに、食料としての安全性評価などを重点課題として研究の進展を図り、水耕栽培浄化システムやラグーンを用いたエコエンジニアリングシステムの開発途上国への技術導入を確立化する。バイオ・エコと物理化学処理の組合せを含めた技術による環境改善システムの開発に関する研究では、これまでの研究成果を踏まえ、有毒アオコの発生抑制には、バイオ・エコと物理化学処理の適正な組み合わせ負荷削減が効果的であると期待できるのでラジカル反応過程等の機構解明の研究、処理水の藻類増殖能試験、安全性試験を実施し、各処理システムの面的整備について、負荷削減効果と安全性の側面からの評価を今後の重点的な研究推進課題とする。現状では、海洋環境における石油汚染に関しては、具体的な達成すべき濃度基準が設定されていない。そのため、バイオレメディエーション実施時において、例えば石油の毒性の軽減や生物生息地の回復等を指標とした浄化の目標設定の検討が必要である。


〔担当者連絡先〕
独立行政法人国立環境研究所
循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
センター長  酒井 伸一
(電話 029-850-2806 FAX 029-850-2808)




〔課題別担当者〕

(1) 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究

循環型社会形成推進 ・廃棄物研究センター
循環型社会形成システム研究室長  森口 祐一
Tel. 029-850-2540  Fax. 029-850-2572

(2) 廃棄物の循環資源化技術、適正処理・処分技術及びシステムに関する研究

循環型社会形成推進 ・廃棄物研究センター
最終処分技術研究開発室長  井上 雄三
Tel. 029-850-2836  Fax. 029-850-2694

(3) 循環資源・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究

循環型社会形成推進 ・廃棄物研究センター
センター長  酒井 伸一
Tel. 029-850-2806  Fax. 029-850-2808

(4) 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究

循環型社会形成推進 ・廃棄物研究センター
バイオエコエンジニアリング研究室長  稲森 悠平
Tel. 029-850-2400  Fax. 029-850-2582

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