- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 2529CD001
- 開始/終了年度
- 2025~2029年
- キーワード(日本語)
- 北極海,アラスカ北極圏,永久凍土,放射性炭素,アルケノン
- キーワード(英語)
- Arctic Ocean,Alaskan Arctic,permafrost,radiocarbon,alkenone
研究概要
完新世の北極陸域・海洋における高解像度の変動実態はほとんど明らかにされていない。ティッピングポイントを超えた場合、グローバルスケールで様々な事象が連鎖的に応答し、気候システムにおいて不可逆的な影響を与えるとされている。本研究では、最新の年代決定技術と複数の古気候プロキシーを駆使して、過去の温暖期における海氷、永久凍土、海洋循環等の変動実態を詳細に復元し、気候不安定化のメカニズムの解明をめざす。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
完新世北極圏における海陸の高解像度の環境変動実態はほとんど明らかにされていない。
最近の温暖化研究では、ある閾値(ティッピングポイント)を超えた場合、グローバルスケールで様々な事象(海氷、永久凍土、海洋循環など)が連鎖的に応答し、気候システムにおいて不可逆的な影響を与えるとされている。将来の気候を正確に予測するためには、過去の温暖期におけるティッピングエレメント(海氷、永久凍土、海洋循環等)の変動実態の把握が必要である。しかし、北極域では、高精度な年代モデルからなるエレメント解析に適した古気候記録(水温・気温)が極めて乏しい。本研究では、完新世の代表的な温暖期を対象に、最新の年代決定技術と複数の古気候プロキシーを用い、ティッピングエレメントを高い時間分解能で復元し、完新世の極端な温暖期における気候不安定化のメカニズムの解明をめざす。
今年度の研究概要
本研究は、チュクチ海、ボーフォート海の海洋コア並びに湖沼・永久凍土の地球化学分析、微化石等の分析を基に行う。本年度は、陸域環境復元のパートについては、チュクチ海、ボーフォート海の水深200-400mの深度で採取された海洋コア(ピストンコア、マルチプルコア)について、有孔虫化石、バルク有機炭素、ブラックカーボンの14C年代測定によるコアの年代モデルの開発を開始する。それと関連して、有機分子レベルでの超微量放射性炭素分析の開発に向けた検討実験を進める。並行して、有孔虫化石、貝形虫化石のMg/Ca、酸素同位体比による古水温推定に関する検討を開始する。また、海氷藻類のバイオマーカーであるIP25を用いた海氷復元に向け、分析方法の検討を開始する。一方、陸域環境復元のパートについては、アラスカツンドラ(ノーススロープ)で採取された永久凍土のバルク有機炭素、植物遺体、昆虫化石、グラファイトチャコールなどの年代測定を実施するため、湖沼堆積物試料の前処理実験についての検討を開始する。加えて、湖沼堆積物における藻類起源である有機分子古水温プロキシーのアルケノンについて、LC/MSによる分析条件、試料前処理を含めた基礎実験を開始する。さらに、ノーススロープ地域での湖沼堆積物の採取に向け、アラスカ大学研究者との調整、現地の湖沼選定に向けた調査、許可申請および予備調査を行う。
外部との連携
弘前大学、金沢大学、北海道大学、アラスカ大学、信州大学、国立科学博物館
- 関連する研究課題
課題代表者
内田 昌男
- 地球システム領域
物質循環観測研究室 - 主幹研究員
- 博士(農学)
- 化学,地学,理学