- 研究課題コード
- 2525TZ002
- 開始/終了年度
- 2025~2025年
- キーワード(日本語)
- 大気モデル,高解像度シミュレーション
- キーワード(英語)
- atmospheric model,high-resolution simulation
研究概要
本セミナーは、大気汚染物質シミュレーションの高精度化に向けた取り組みを具現化するために実施する。具体的に討議される題目に関しては、IからIIIの3点とする。
I.エアロゾルモデリングの高度化に向けた素過程改良の指針
観測データの充実と同化手法の改良によってエアロゾル時空間分布の再現性は向上してきた。しかし、母体となるエアロゾルモデルの高度化を実施することで、更に再現性が向上することが期待できる。このために、現状のエアロゾルモデルの素過程の取り扱い方に注目し、大気モデルNICAMやそれ以外のモデルで用いられているモジュールを比較することで、NICAMが次に改良すべき点を議論する。
II.高解像度モデリングと同化手法の計算機負荷のバランス問題
高解像度化と同化手法の改良はどちらもエアロゾル時空間分布の再現性の向上にとって重要であるが、両方の改良を実施すると計算機負荷が非常に大きくなってしまう。限られた計算機資源を用いる中で、どちらの過程により優先するか等、計算機負荷と再現性のバランス問題を議論する。
III.エアロゾル・雲・降水過程の相互作用の高度化に向けたモデリング
エアロゾル時空間分布を決定する雲・降水過程のモデル高度化を通じて、エアロゾル時空間分布の再現性を向上させる。このために必要な取り組みとして、現状のNICAMや他のモデルでの雲・降水の取り扱いの改善を目指すために、次のステップとして何をすべきかを議論する。例えば、新しい衛星データを用いて、エアロゾル・雲・降水過程の相互作用の現象理解を進めるために、具体的に何をすべきかを議論する。
なお、上記のIからIIIに関連した若手研究者による発表枠も設定する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
日本側代表者が所属する国立環境研究所(NIES)と、相手国側代表者の所属研究機関である中国科学院大気物理研究所(CAS/IAP)とは、エアロゾルのデータ同化手法開発において、深い協力関係を築いてきた。しかし、大気汚染物質の時空間分布をより高精度に捉えるためには、データ同化手法開発だけではなく、母体の数値モデルや関連物質との相互作用の更なる高度化も必要となる。例えば、大気汚染物質の濃度を決める雲・降水過程の影響評価も必要となる。そこで、本セミナーでは、これらの高度化に取り組む専門家が集まり、特に東アジアでの大気汚染物質の時空間分布の高精度再現に向けて、解決すべき問題点を洗い出し、優先すべき課題を精錬する。本セミナーでは関連参加者が実現可能な範囲を同定し、両国で利用している大気汚染物質シミュレーションモデルの高度化を着実に加速させる手立てを議論することを目標とする。
日本側からは若手特任研究員と博士課程学生の2名が参加する。中国側からは若手の准教授1名と学生2名も参加する。本セミナーでは若手研究者の発表機会も設け、意見交換の場においても発言機会を設けることで、国際舞台での経験を重ねてもらう。これによって、今後、当該分野を牽引し、日本と中国の共同研究を継続的に実施できる研究者を養成することも目標とする。
今年度の研究概要
1年課題のため、研究概要に記載した内容と同じである。
外部との連携
中国科学院大気物理研究所(中国側代表機関、代表者はDai Tie教授)、東京大学大気海洋研究所
備考
本課題は、独立行政法人日本学術振興会の二国間交流事業セミナー(中国(CAS)とのセミナー)でにて実施する。
課題代表者
五藤 大輔
- 地域環境保全領域
大気モデリング研究室 - 主幹研究員
- 博士(理学)
- 化学,物理学