- 研究課題コード
- 2426AO001
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- ナノプラスチック,吸入曝露,健康影響,標準粒子
- キーワード(英語)
- nanoplastics,inhalation exposure,health effects,standard particles
研究概要
近年ヒトからのマイクロプラスチック(MP)検出の報告例が目立つようになった。ヒトの場合、食事由来とinhalation由来の曝露はほぼ同程度と試算されており、inhalationの寄与の大きさが窺える。これまでのエアロゾル研究からナノ粒子は肺胞への沈着率などの観点から、ミクロン粒子と比較して健康リスクが増大することが分かっている。現在のところInhalation由来の9割以上のMP個数濃度は1-10μmの粒子が占めると試算されている。ナノプラスチック(NP)検出技術の進展がここ数年著しく、より夥しい数のNPの存在の判明やそれに伴った健康影響が懸念される。NPの生体への影響については、不純物・粒径・合成法・修飾法などの影響などもあり汎用されるポリスチレン(PS)の毒性についてもはっきりとした事はまだわかっていない。<1μm粒子の動物への曝露実験の報告は申請時点の調べではPSのみであり、そのうち吸入曝露を行なった文献は1件のみという状況であった。環境中で多いと考えられるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を含むその他の樹脂についての評価は、市販の標準粒子が存在せず尚進んでいない。本課題参画者が独自に開発したNP粒子作製法では、汎用樹脂5種(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、PP、PS、ポリ塩化ビニル(PVC))のNP粒子作製が可能であり、?不純物を含まない?形状の均一性が担保されている?一般的な製品と同等の組成・物性を示すといった標準粒子としての条件を満たす。本課題では、PSに加えこれら他4種のポリマーを同じ製法を用いて合成できる点に特に価値を置いており、細胞実験と動物への鼻部曝露等を通して、全く新しい基礎的なNP毒性情報を得ることを目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
標準粒子の作製(サブ1)と動物・細胞試験(サブ2)の構成となっている。まず初年度はサブ1が作製手法確立済のPS粒子を用いて、粒径が体内分布・蓄積性・有害性に与える影響について解析する。2年目からはサブ1が初年度に取り組むPE,PPなど新たな蛍光標識化標準粒子を用いて、樹脂の材質の違いに主眼を置いて解析を行う。個別の樹脂の曝露実験から得られたデータは樹脂の混在する実環境中のNP有害性について予測していく上で有用な情報となることを期待する。動物への曝露実験は鼻部曝露装置を用いて行う。また、最終年度にかけて、環境中劣化を反映した粒子の作製及びその蓄積性・影響把握へと展開していく。さらに粒径・材質依存的な臓器への蓄積性、大量合成の可否などを総合的に鑑みて取り組むべき曝露NPを選定の上、全身曝露チャンバーを用いた亜慢性曝露による影響評価系の構築についても試みる。
今年度の研究概要
サブ1ではPS粒子での蛍光標識粒子を作製(作製方法・標識方法ともに確立済)し、サブ2へ提供するほか、そのほかの樹脂の粒子の蛍光標識方法を確立する。また熱分解GC–MSによる組織中NP定量手法を検討する。一方でサブ2ではまず、鼻部曝露装置の整備および曝露条件の確立を進め、曝露実験時の曝露量評価を行う。次に、標準PS粒子に対する種々の曝露(単〜複数回:鼻部曝露)・経過スケジュールを経た臓器前処理サンプルのサブ1への提供および蓄積性の解析を進める。呼吸・肺機能評価システムを用いた気道収縮・換気量・呼吸数等の計測をはじめとし、生理機能への影響解析を行うとともに、高感受性モデル解析・細胞レベルの取込みメカニズムについて検討を進める。
外部との連携
大阪大学
- 関連する研究課題
- : 資源循環分野(ア先見的・先端的な基礎研究)
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)