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令和6年度OECDにおける生態影響の新規試験法に関する開発・検討及びGLP監視当局活動への支援業務(令和 6年度)
FY2024 Contract work on the development and validation of new ecotoxicity test methods in OECD and the support for GLP inspection activities

研究課題コード
2424BY002
開始/終了年度
2024~2024年
キーワード(日本語)
OECDテストガイドライン,魚類急性毒性試験,GLP,国際協力,ヨコエビ,ミジンコ
キーワード(英語)
OECD Test Guideline,fish acute toxicity,good laboratory practice,international cooperation,amphipod,water flea

研究概要

化審法では、個々の化学物質に対してその有害性と曝露情報に基づくリスク評価を行い、そのリスクに応じた適切な措置を講じることとしており、その評価において用いられる毒性試験方法及び試験を実施する試験施設について、厚生労働省、経済産業省及び環境省において各部局長通知等で規定している。これらの各部局長通知に記載されている試験方法及び試験施設は、経済協力開発機構(OECD)における国際的なデータ相互受入れ(Mutual Acceptance of Data の枠組み(以下「MAD制度」という。)を考慮し 、原則としてOECDのTest Guideline(以下「TG」という。)及びOECD GLP Practice(以下「GLP 原則」という。)の内容を反映することとしており、このOECDのTG及びGLP原則の内容は我が国の化学物質管理施策と密接に関係している。
OECDのTGは、技術の進歩や動物福祉への取組等の社会的情勢の変化に伴い、頻繁に改正案や新規のTG案が提案されており、これらの内容について技術的な検証を行った上で我が国の制度に取り入れ対応していくことは、化学物質管理施策を国際的に整合がとれたものとしていく上で非常に重要である。また 、我が国発の取組として、OECDのTGにおける難水溶性の化学物質の有害性評価の試験方法について、リスク評価の際に必要となる有害性情報を得るための試験として不十分であることから、ヨコエビを用いた試験法の開発を行ってきており、今後OECDのTG登録のための取組を進めていく必要がある。
さらに、日本を含めた各国において、リスク評価試験に用いる試験動植物に関しては国内種を推奨種とする傾向があり、 OECDのTG指定種外の試験動植物についても化学物質に対する感受性についての知見を持つ必要もある。また、我が国においてMAD制度を維持するためには、GLP監視当局として、GLP原則により制定されたGLP基準に試験施設が適合していることを確認するための試験施設への査察を実施することが必要であるとともに、他国のGLP監視当局の評価を行い、OECD GLP作業部会への報告を行うことも必要となっている。
以上のような背景を踏まえ、我が国がOECDのMAD制度に的確に対応していくため、TG改定案等への対応、我が国発のヨコエビを用いた底質試験法のOECD TG化に向けた検討、及び既に化審法のリスク評価項目として用いられている魚類急性毒性試験等の改定に係る検討業務、並びに世界の趨勢である動物福祉の観点から、生体を用いた試験に代わり今後リスク評価に使用される可能性のある培養細胞を用いた試験法についての開発検討、ミジンコ繁殖試験等に国内種であるタマミジンコ属Moina Species等の総合的な使用等の検討、及びGLP監視当局活動への支援を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

(1)OECD TG203改定を受けたニジマスエラ細胞株試験の活用等に関する検討
 魚類毒性試験法を定めるOECDのTG203は令和元年6月に改正された。その改正においては、動物福祉の観点から、予備試験として生体を用いない試験を積極的に活用することや、今後の試験のエンドポイントとして活用するために、瀕死症状の観察項目が明記された。これら背景を踏まえて、以下の業務を行う。
 i)ニジマスエラ細胞株試験の活用可能性の検討
予備試験へのニジマスエラ細胞株試験の活用可能性を検討するため、メダカ(Oryzias latipes)を用いた魚類急性毒性試験(TG 203)及びゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いた魚胚急性毒性試験(FET試験、TG236)(以下「FET試験」という。)を実施済みの5種程度の化学物質についてニジマスエラ細胞株試験を実施し、魚類急性毒性試験及びFET試験の結果との比較を行う。
 ii) TG203の試験条件の検討
 メダカを用いて以下の検討を行う。
 イ)試験時間を短縮(96時間から24〜72時間への短縮)した場合、もしくは延長(96時間から5〜14日に延長)した場合のLC50等の違いを比較する。
 ロ)致死と関連性がある症状と慢性影響(初期発達等)との関連性を検証する(TG210を令和5年に実施した物質を除き3物質程度について実施する)。

(2)ヨコエビを用いた底質試験法のOECD TG化に向けた検討
 日本がフランスとリードしているヨコエビを用いた底質試験法について、以下のとおり実験的検証を行う。
 i)国内外の試験機関と、参照物質2物質程度について、複数試験機関での検証試験を行う。プロトコル案及び試験手順、化学品の手配、化学分析についても実施機関の支援を行う。
 ii)OECD VMG-ecoでの経過報告時に寄せられた意見を聴取し、プロトコル案等に反映する。
 iii)OECD VMG-ecoの元で形成された専門家グループ等で、各国の専門家とTG化に向けた協議を行う。

(3)OECD新規TG等に関する検証業務
 OECDにおいてTGとして新たに追加された、もしくは現在議論されている試験法のうち、化審法における導入可能性を検討すべきウキクサ等の水草を用いた試験法等について、必要に応じて実験的な検証を行うとともに、OECD加盟国から寄せられる新規生態影響試験法の検証のためのリングテストの依頼に対応する。

(4)OECDに新規に提案すべき試験法についての情報収集及び検証業務
 化審法のリスク評価において必要性が増している国内種を用いた試験法について、国内産無脊椎動物(ミジンコ等)の既存の試験法への生物種の追加や、国内の海産・汽水産無脊椎動物を用いた試験法についての情報収集を行うとともに、提案に向けて必要な試験法プロトコル案の作成や必要な検証事項の整理等を行う。

(5)OECD/WNT及びVMG-ecoへの専門家の派遣
 OECD/WNT(令和6年6月パリを想定(6日程度))及びVMG-eco(令和6年11月パリを想定(3日程度))に外部専門家(各1名を想定)を派遣する。派遣に際して、それぞれの議題に対する対応方針を整理し、必要に応じて資料作成・当日の説明を行う。

(6)専門家ヒアリングの実施
 上記の(1)〜(4)の試験実施方法等に関して専門的な見地からの助言を聴取するため、専門家(2名以上を想定)に対してヒアリング(各1回以上、2時間程度)を開催(Web会議を想定)する。ヒアリングの対象とする専門家は、化学物質GLP及びOECD TG、あるいはこれらに関連する分野についての専門的知見を有する者の中から選定する。

(7)GLP監視当局活動への支援
 i)GLP基準適合試験施設への査察支援業務
 GLP基準適合性確認のために環境省が実施するGLP基準適合施設への査察(2施設を想定)を支援する。支援に当たっては、GLP基準の内容を熟知した上で、業務を実施する。具体的には、各GLP基準適合施設が提出する試験報告書等の内容を精査し、GLP基準適合性を確認するために必要な情報の整理を行う。
 ii)GLP適合性検討会の開催支援
 環境省が委嘱した6名の検討員が参加する環境省が開催するGLP施設の適合性評価を検討する検討会(現地及びWeb会議のハイブリッド方式による開催を予定、2回、各3時間を想定、検討員6名のうち2名程度が現地参加を想定)、会場は20名収容を半日確保、プロジェクタやスクリーン等の会議備品を用意)の開催を支援する。具体的には、検討員との日程調整、資料の作成、Web会議システムの準備、議事録作成を行う。
 iii)環境省職員に対するGLP教育の実施
 環境省担当官が指定する環境省職員(1名程度)について、GLPに関する教育(講師1名あたり1回2時間以内)を環境省内で実施する。

(8)生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー等の開催
 化学物質審査規制に関する国内外の動向について、化学物質関連事業者等への情報提供を行うとともに、生態毒性試験法に関する技術的事項について、民間試験機関等への情報提供を通じた能力向上を図ることを目的として、公開のセミナー及び意見交換会を開催する。
 i)生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー
セミナーの開催運営計画を策定の上、日程調整、Webシステムの準備、講演者への依頼手続き、参加者募集・申込受付、セミナーの配付資料の作成及び参加者への配信、当日参加者の確認、及び司会・進行等セミナーの開催・運営に必要な一切の業務を行う。セミナーの内容は、化審法の最新状況や、化学物質規制に関する国際動向、OECD TG及びGuidance Documentの最新の状況、生態毒性試験実施に当たっての留意点などに関するものを想定している。
 ii)GLP試験施設との意見交換会
生態毒性GLP試験施設(5施設を予定)と専門家2名及び環境省担当官との意見交換会(Web会議による開催、1回、3時間を想定)を開催するための運営計画を策定の上、開催案内の送付、日程調整、Webシステム手配、参加者募集、専門家への参加依頼、資料の作成(電子媒体A4版、30頁程度)、Webシステムの使用、事務局として20名程度収容できる部屋(プロジェクタやスクリーン等の会議備品を含む)の準備、及び議事進行・資料説明等の開催・運営に必要な一切の業務を行う。
 iii)本業務の成果に関する情報提供
 上記の生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー及びGLP試験施設との意見交換会において、上記(1)〜(4)の業務で得られた成果について、環境省担当官と内容を協議の上、発表資料を作成し、情報の提供を行う。

(9)報告書の作成
 上記(1)〜(9)について、その内容を取りまとめ、報告書を作成する。

今年度の研究概要

同上

関連する研究課題

課題代表者

山本 裕史

  • 環境リスク・健康領域
  • 領域長
  • Ph.D.
  • 化学,生物学,土木工学
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担当者