- 予算区分
- 基盤研究(A)
- 研究課題コード
- 2427CD004
- 開始/終了年度
- 2024~2027年
- キーワード(日本語)
- 高エネルギー降下電子,化学気候モデル
- キーワード(英語)
- Energetic Electron Precipitation,Chemistry Climate Model
研究概要
太陽活動に伴いオーロラ帯に降り込む「放射線帯電子」が中層大気に及ぼす影響について、磁気圏から中層大気までの一連の因果関係を様々な地上・衛星観測をもとに多角的明らかにする。まず、「あらせ」等の衛星観測、リオメータ、EISCAT_3D、全天カメラなどの地上観測と波動-粒子相互作用シミュレーションをもとに、宇宙空間および大気圏での電子密度・エネルギー分布を求めて降リ込み電子の動態を明らかにする。また、複数の大気微量分子を同時に測定できる多周波ミリ波分光計をノルウェーのトロムソに設置し、北極域のトロムソと南極域の昭和基地からの観測をもとに数時間の分解能で1日内の分子の変動を捉え、降り込み電子との相関から高エネルギー粒子起源の現象を抽出する。化学的に安定で大気輸送の指標となる一酸化炭素(CO)も継続的に観測し、輸送起源の影響も評価する。さらに、化学輸送モデルMIROC等を用いたシミュレーションと観測データの比較、あるいは観測結果を境界条件としたシミュレーションにより下層大気を含む全球的な「環境への影響評価」を行う。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
高エネルギー粒子の降り込みの地球環境への影響、その原因から結果までを連続的なモニタリングデータや観測結果を境界条件とした化学気候モデルによるシミュレーションをもとに明らかにする。まず原因となる高エネルギー電子の降り込みの動態を「あらせ」等の衛星観測やレーダー/リオメータ、高感度全天カメラで押さえる。衛星観測からは、擾乱を受けて変化する磁気圏の状態がわかるとともに、観測点につながる磁力線上の電子のエネルギー分布と降り込み電子フラックスの推定を行う。一方、結果の側の大気分子応答は、ミリ波同時観測で観測されるオゾンとNOの時系列変化から求める。強度が強いオゾンスペクトルからは数分の時間分解能で降り込み電子の時間変化と直接比較可能な連続データが得られる。両者の相関から、降り込みから大気応答までの時定数や降り込み量と分子増減量との間の関係等を観測的に絞り込むことに挑む。下方輸送に伴う長期的な影響については、オゾンデータの成層圏成分の高度別時間変動や化学的に安定で鉛直輸送のよいトレーサと考えられているCOのデータを用いる。また水平移流を妨げる極渦の境界部を観測点が横切る前後でNOの柱密度に急激な時間変化が見られることがあるため、気象場や化学輸送モデル、衛星観測から導出される極渦境界との相対的な位置関係にも留意して長期的な変化を調べる。
今年度の研究概要
名古屋大学では、トロムソに搭載する多周波同時観測装置の設計/製作、トロムソでのライダー/レーダーによる中間圏気象場の定常観測、光学機器によるオーロラ観測を行う。また、スペクトルリオメータ(昭和基地とKevo/Abisko)による電子密度の観測、磁気嵐時の高エネルギー電子のモデル化(1次元)[三好]とWACCMとの結合を進める。NIESでは、MIROC化学気候モデルを用いたキャリントンイベントの大アンサンブル実験を行い、特に下層大気への影響を解析する。
外部との連携
名古屋大学(研究代表者 水野 亮 教授)
極地研究所