- 予算区分
- 基盤研究(B)
- 研究課題コード
- 2427CD003
- 開始/終了年度
- 2024~2027年
- キーワード(日本語)
- 火山噴火,化学気候モデル
- キーワード(英語)
- volcanic eruption,Chemistry Climate Model
研究概要
大規模な火山噴火は気候やオゾン層に深刻な影響を与える。20世紀後半の事例では、数年にわたり成層圏の硫酸エアロゾル濃度を激増させ、成層圏の高温化、対流圏と地表の低温化、オゾン層破壊をもたらした。2022年1月のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ(HTHH)海底火山の大噴火では、エアロゾル増加量は大きくはなかったが、成層圏へのH2O注入量が観測史上最高となる前代未聞の事象となった。成層圏におけるH2Oはその放射特性により、成層圏の低温化、対流圏と地表の高温化をもたらすことが予想される。また、循環の変化や光化学過程を通して、オゾン層にも前代未聞の影響を与えうる。本研究では、“観測”データである複数の全球大気再解析データにおいて、気温変化、循環変化がどのようにとらえられているか分析し、その変化が定量的にどの程度妥当か検証をおこなう。また、全球化学気候モデルによる数値実験をおこない、HTHH噴火特有のH2O激増による放射強制やHOx量の変化を計算し、それらの変化が気候やオゾン層へ及ぼす影響を明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
HTHH噴火後の3年程度の間に、成層圏・対流圏の気温と子午面循環、オゾン層がどのように変化したか、観測データと数値モデル実験の両面から明らかにする。観測データとしては、日本気象庁の最新の再解析データJRA-3Qおよび一世代前のJRA-55、ヨーロッパ中長期予報センターECMWFの最新の再解析データERA5、および、米国NASAのMERRA-2を用いて、運動方程式、熱力学の式等の̅各項を評価する。また、気温、オゾン、水蒸気等については衛星観測データも用いる。数値モデルとしては、NIESの化学気候モデルを用いる。SPARCの化学気候モデルイニシアティブ(CCMI)内において議論し決定されたプロトコルに従い、HTHH噴火時の水蒸気やエアロゾルを入力した数値シミュレーションを行う。化学気候モデルの結果が再解析データや他の観測データとどの程度整合的か、オゾン層の変化が化学過程(気温効果、HOx反応など)、循環変化のどれにどの程度よっていたか、オゾン量変化の非断熱加熱変化への影響を明らかにする。なお、大気の内部変動による年々変動の大きい中高緯度地方への影響を評価するため、多数のアンサンブル実験を実施する。これとは別に、火山噴火のない場合の独自実験を別に行っておき、その実験結果の気温場のみを火山噴火の影響実験に同化して影響が循環のみに作用するようにした実験、および逆に循環のみを同化した実験を行い、それらの結果を火 山噴火の影響実験(火山噴火の影響が気温にも循環にも及ぶ実験)と比較することで、噴火影響の気温と循環への分配を推定する。
今年度の研究概要
再解析データを用いて、HTHH噴火後について、運動方程式、熱力学の式等の̅各項を評価する。また、SPARCの化学気候モデルイニシアティブ(CCMI)内で決定された共通のプロトコルに従い、NIES化学気候モデルによる数値実験を行う。
外部との連携
北海道大学(研究代表者 藤原 正智 教授)