- 予算区分
- 1MF-2301
- 研究課題コード
- 2325BA004
- 開始/終了年度
- 2023~2025年
- キーワード(日本語)
- 災害・事故への対応,化学物質リスク,環境法,情報基盤,自治体連携
- キーワード(英語)
- Measures to accidents and disasters,Chemicals risk,Environmental law,Information system,Collaboration among local governments
研究概要
近年、気候変動や施設の老朽化などさまざまな要因により自然災害にともなう事故や災害への懸念が高まっているが、中でも化学物質の流出等によりリスク懸念が生じた場合への対応は遅れている。提案者は、環境研究総合推進費S-17課題「災害・事故に起因する化学物質リスクの評価・管理手法の体系的構築に関する研究(代表:鈴木規之)」で災害・事故に起因する化学物質リスクへの一連の科学的手法を集約しつつある。また、同1-1904課題「災害・事故に起因する化学物質流出のシナリオ構築と防災減災戦略」(代表:三宅淳巳)では主に化学工場における事故事例とリスク評価に関する情報蓄積を進めた。
今後の対応においては法制度的な手当てもまた不可欠である。水質汚濁防止法など一部の現行法で事故時の措置が定められているが対応範囲は限られる。また、環境法令と産業保安、消防などの関連する法制度の連携は必ずしも十分でない。S-17課題では事故事象の推移、シナリオに沿った情報取得と活用を可能とする情報基盤のプロトタイプ構築を進めたが、実用的な情報基盤として構成する必要がある。この際に1-1904課題の成果であるリスク情報プラットフォームとの連携が有効である。
これらの背景を受けて本研究では1) 災害・事故における化学物質リスクの管理に関する法制度についての分析を行い、今後の制度化における方向性を示し、2) S17情報基盤およびリスク情報プラットフォームを基礎として将来の制度のあり方にも対応し得る実用的情報的基盤を平時からの連続性を意識して開発する。この目的を達するため、3)行政および研究機関との机上演習により現実の行政課題と研究課題を連動させるべく進め、対応の考え方の全体フローをまとめる。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
サブテーマ1では、災害・事故時における化学物質の環境リスクの管理を目的とする日本の現行の法制度を分析し、事業者や地方公共団体へのヒアリング等も通じて現行法制度の課題を洗い出す。また、災害・事故時における化学物質の環境リスク管理に係る法制度の整備を進めてきたアメリカ合衆国ならびに欧州連合(EU)など主要国の法制度の調査・分析を行う。分析・評価軸選定は先行研究を参照し、サブテーマ2および3の知見を踏まえる。これらにより、災害・事故時における化学物質の環境リスクの管理を目的とする法制度の理念型を提示し、今後の法制度のあるべき方向性への提言を行う。
サブテーマ2では、サブテーマ1の検討状況や机上演習等からのフィードバックを踏まえて情報基盤システムの修正・拡充を進め、STPD(See-Think-Plan-Do)サイクルにより情報基盤の強化を進める。状況別メニュー等の再構築の検討、産業事故の知見を集積したリスク情報プラットフォームとの連携、推進費S17で作成した情報基盤では不十分な外部公開情報の利用拡大、スマホ・タブレットへの対応による利用者・利用機器の拡大などを進める。また、机上演習でのフィードバックを踏まえ、新たに指摘される改善点への対応を継続的に進め、実用的な情報基盤へ改良していく。
サブテーマ3では、地方環境研究所等との机上演習を毎年度に行い、サブテーマ2の情報基盤へのフィードバックを行う。サブテーマ1で分析を進める制度への意見も聴取しフィードバックを行う。また出来る限り環境省および地方自治体の行政部門との机上演習を行い同様に進める。サブテーマ1、2間の連携と進捗のための議論を両サブテーマとともに行い、制度と技術双方の研究の有機的な連動をはかる。これらにより、災害・事故に伴う化学物質リスクに対処するための諸知見を平時とも連動するよう集約し基本的な考え方とフローを提示する。
今年度の研究概要
サブテーマ1では、化学物質の放出を伴う災害・事故を経験した事業者や地方公共団体を対象としたヒアリングを引き続き実施する。先行研究の分析結果、およびサブ2・3からのフィードバックなどに基づき、災害・事故時における化学物質の環境リスクの管理を目的とする主要国の法制度の分析・評価項目を同定し、分析・評価を実施する。
サブテーマ2では、関連機関の実務者が参加する机上演習のフィードバックを踏まえて、機能強化、システム改修、情報拡充などの作業リストを作成する。より優先度の高い項目より順次システム改修および情報収集を進める。机上演習やサブテーマ1の進捗状況を踏まえて、継続的にフィードバックの整理や作業リストの更新を進める。
サブテーマ3では、環境省および地方自治体の行政担当者とともに、初年度のサブ1,2の成果に基づく机上演習および地方環境研究所との第2回机上演習を実施する。地方環境研究所の対応にかかわる方法論と全体の対応の考え方とフローの準備を開始する。
これらをあわせて、災害・事故に伴う化学物質リスクに関連する法制度の横断的分析を通じた将来のあり方の提言、関連機関との机上演習を通じて実用性を検証した総合情報基盤を提供し、災害・事故に伴う化学物質リスク対処の基本的な考え方とフローを提示する目標で進める。
外部との連携
明治学院大学、都留文科大学、横浜国立大学
- 関連する研究課題
- 26424 : PJ5_包括健康リスク指標と包括生態リスク指標の開発に関する研究
- 26434 : PJ6_緊急時における化学物質のマネジメント戦略研究
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)