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沿岸環境・生態系デジタルツインの開発と実践(令和 6年度)
Development and implementation of the estuarine and coastal ecosystem digital twin

予算区分
S-23-1
研究課題コード
2428BA001
開始/終了年度
2024~2028年
キーワード(日本語)
沿岸環境,沿岸生態系,統合評価モデル,見える化,デジタルツイン
キーワード(英語)
coastal environment,coastal ecosystem,integrated assessment model,visualization,digital twin

研究概要

 現在の日本の沿岸域では、総量削減等の水質改善に向けた従来施策に加え、栄養塩類管理や藻場・干潟の保全・再生等の豊かな海に向けた新たな施策・取組みが重層的に行われているが、生物多様性・生産性への効果は明らかにされておらず、定量的評価手法の開発が求められている。また、ネイチャーポジティブに向けたOECM・自然共生サイトの促進のため、その効果や価値を市民・民間等に分かりやすく伝える「見える化」も必要とされている。
 上記ニーズに対してS-23では、沿岸域の様々な施策・取組みの効果や気候変動の影響等をエンド・ツー・エンドで予測・評価するとともに、予測・評価結果をバーチャル空間上で分かりやすく可視化する沿岸環境・生態系デジタルツインを開発する。テーマ1はデジタルツインの開発と実践の中核を担い、サブテーマ(1)はプロジェクト全体を総括してデジタルツインの基幹となる統合評価モデルと見える化技術を開発する。統合評価モデルの開発では、個別研究成果の結集を図り、流動・水質・底質モデルをベースとして低次-高次生態系網、藻場・干潟、養殖場、人工構造物などの要素モデルを結合する。また、近年の新たな施策・取組みとして、サブテーマ(2)は栄養塩類管理によるボトムアップ効果に、サブテーマ(3)は生態系管理によるトップダウン効果に着目して現場観測に基づく評価手法の開発を行い、テーマ2〜4で開発されるOECM・自然共生サイトの評価モデルとともに統合評価モデルに組み込む。
 見える化技術の開発では、沿岸環境・生態系の構造や変化、施策・取組みの効果・価値を市民・民間等が直感的・視覚的に正しく理解することが可能なバーチャル空間を作成する。水質や底質、生物種やバイオマスなどの数値情報から現実に近い上空・水中映像を創り出すための機械学習技術を開発する。
 デジタルツインの実用性を高めるため、開発過程において活用実践を行い、市民・民間等からのニーズを幅広く収集して開発に反映する。サブテーマ(4)はその中核として「市民参画プラットフォームにおける再生ビジョンの構築」の実践の場を設け、再生ビジョンの検討に必要となる社会科学的な情報やツールを整備・開発するとともに、構築された再生ビジョンと検討の過程においてステークホルダーの構成やデジタルツインの影響・効果を解析する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 様々な施策・取組みの効果や気候変動の影響等をエンド・ツー・エンドで予測・評価する統合評価モデルと、予測・評価結果をバーチャル空間上で分かりやすく可視化する「見える化」機能を搭載した沿岸環境・生態系デジタルツインを開発する。開発プロセスにおいて、実海域の施策・取組みのケーススタディや市民参画プラットフォームでの活用実践を並行して行い、行政や市民・民間等からのニーズを幅広く収集して開発に反映することで、多様なステークホルダーの理解醸成と合意形成を支援するデジタルツインプラットフォームを構築する。
・水質総量削減の検討や藻場・干潟等の機能・サービス評価、気候変動の影響予測など既存の個別要素モデルや施策評価ツールを結集し、沿岸域の水環境及び生物多様性・生産性の統合評価モデルを開発する。
・沿岸域における新たな施策・取組み(OECM・自然共生サイト、栄養塩類管理、生態系管理)について、現場調査に基づく評価手法・モデルの開発を行い、統合評価モデルに組み込む。
・水質・底質や光量などの環境データ、及び植生や生息動物の種や個体数・バイオマスなどの生物データから実際の上空・水中画像に近いバーチャル海洋空間を作成する機械学習技術を開発する。
・デジタルツインの開発プロセスにおいて、実海域の施策・取組みのケーススタディや市民参画プラットフォームにおける再生ビジョンの構築等の活用実践を並行して行い、行政や市民・民間等からのニーズを幅広く収集して開発に反映する。

今年度の研究概要

国立環境研究所が代表機関であるサブテーマ(1)では、
・既存の沿岸環境・生態系に係る個別要素モデルを収集し、モデル間の結合に着手する。
・現地観測等により機械学習の教師データを収集するとともに、学習技法の選定に向けた検討と性能試験を行う。
・バーチャル空間における生物の活動や動作、水質や底質などの表現方法を検討し、画像データの収集・制作に着手する。
・他のサブテーマと共同して、市民・民間等の開発ニーズを収集する。

外部との連携

国立環境研究所(代表)、大阪大学、大阪公立大学、東京大学、いであ株式会社、兵庫県環境研究センター、東京工業大学、長崎大学、海辺つくり研究会、国土技術政策総合研究所、神奈川大学、理化学研究所、東京都環境科学研究所、埼玉県環境科学国際センター

課題代表者

東 博紀

  • 地域環境保全領域
    海域環境研究室
  • 上級主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 土木工学,農学,水産学
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担当者