- 研究課題コード
- 2222BY009
- 開始/終了年度
- 2022~2022年
- キーワード(日本語)
- テストガイドライン,ヨコエビ,細胞毒性試験,標準化,優良試験所基準
- キーワード(英語)
- test guideline,amphipod,cytotoxicity test,standardization,good laboratory practice
研究概要
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年十月十六日法律第百十七号)(以下「化審法」という。)では、個々の化学物質に対してその有害性と暴露情報に基づくリスク 評価を行い、 そのリスクに応じた適切な措置を講じることとして おり、その評価において用いられる毒性試験方法 及び試験を実施する試験施設について、部局長通知等において規定している。これらの試験方法及び試験施設は、OEC における国際的なデータ相互受入れ(Mutual Acceptance of Data:MAD 制度) を考慮し、原則として OECD のTest Guideline 及び OECD GLP Practice(以下「GLP原則」)の内容を反映することとしており、この OECDの TG 及び GLP 原則 の内容は我が国の化学物質管理施策と密接に関係している。
OECDのTGにおいては、技術の進歩や動物福祉への取組等の社会的情勢の変化に伴い、頻繁に改正案 や、新規のTG案が提案されており、これらの内容について技術的な検証を行 った上で我が国の制度に取り入れ対応していくことは、化学物質管理施策を国際的に整合がとれたものとしていく上で非常に重要となっている 。また、我が国発の取組として、OECDのTG における難水溶性の化学物質の有害性 評価の 試験方法 について、リスク評価の際に必要となる有害性情報を得るための試験として不十分で あることから、新たに、ヨコエビを用いた試験法の開発を行ってきており、今後 OECDのTG登録のための取組を進めて行く必要がある。
更に、我が国においてMAD制度を維持するためには、GLP監視当局として、GLP原則により制定されたGLP基準に試験施設が適合していることを確認するための試験施設への査察 を 実施 することが必要であるとともに、他国のGLP監視当局の評価を行い OECD GLP作業部会への報告を行うことも必要となっている。
以上のような背景を踏まえて、本業務では我が国がOECDのMAD制度に的確に対応していくために、 改定案等への対応と我が国発のヨコエビを用いた底質試験法のOECD TG化に向けた検討を総合的に行うこと及び GLP監視当局活動への支援を目的とする 。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
(1) OECD TG203 改定を受けた FET試験の活用等に関する検討
1.FET試験の活用可能性の検討
予備試験へのFET試験の活用可能性を検討するため、FET試験の結果と従来のTG 203による魚類急性毒性試験結果との比較を行う。
魚類急性毒性値が既知の毒性作用の異なる 10種の化学物質についてゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いた FET 試験(OECDのTG236に準拠)を行い、比較検討する。検討に用いる化学物質については、環境省担当官と相談の上で決定する。
2.TG203の試験条件の検討
TG203の今後の更なる改正に向けた議論に対応するため、エンドポイントの半数瀕死状態濃度への変更や試験時間短縮に関する検証実験を行う。魚類初期生活段階毒性試験結果又は繁殖等の慢性毒性値が既知の3種類の化学物質を使用し、供試魚としてメダカ(Oryzias latipes)を用いた魚類急性毒性試験を実施し下記の項目を検討する。検討に用いる化学物質については、環境省担当官と相談の上で決定する。
イ)瀕死につながる症状を示す魚体を致死と見なして、半数瀕死状態濃度を算定し、半数致死濃度と比較する。
ロ)試験時間短縮(96時間から24〜72時間への短縮)した場合のLC50等の違いを比較する。
ハ)症状と慢性影響(初期発達、繁殖等)との関連性を検証する。
ニ)動物福祉に配慮した供試魚に対する人道的な殺処分方法(麻酔剤及びその他2種以上の方法)についての比較検証を行い、魚類の生態毒性試験を実施する試験施設に対して情報の提供を目指す。
(2) ヨコエビを用いた底質試験法のOECD TG化に向けた検討
我が国で開発・検討を行ってきた、難水溶性化学物質を対象としたヨコエビを用いた底質試験法について、2021年のOECD WNT会合や、2021年のVMG-eco会合等において寄せられた各国の意見及び 2021年に提案したSPSFに対して各国等からの意見について対応し、2022年のTG承認を目指すために、必要な検証のための試験を実施し、TG案を適切な時期に環境省に対して提出する。
(3) OECD新規TG等に関する検証業務
OECDにおいて新規TGとして現在議論されているニジマスのエラ細胞株を用いた試験法、ウキクサ試験等について、化審法における導入可能性について検討を行い、必要に応じて実験的な検証を行うとともに、OECD加盟国からよせられる新規生態影響試験法の検証のためのリングテストの依頼に対して、環境省担当官と相談の上対応する。
(4) OECD/WNT 及びVMG-ecoへの専門家の派遣
OECD/WNT(2022年4月パリ)及びVMG-eco(2022年11月パリ)に外部専門家を派遣する。派遣に際して、それぞれの議題に対する対応方針を整理し、必要に応じて資料作成・当日の説明を行う。外部専門家に対しては、謝金を支給する。
(5) 学会発表
(1)〜(3)のいずれかの研究成果はSETAC(2022年11月米国ピッツバーグ)へ研究員を派遣し成果を発表する。
(6) 専門家ヒアリングの実施
上記の(1)〜(3)項の試験実施方法等に関して専門的な見地からの助言を聴取するため、専門家(関東地方在住2名以上)に対してヒアリング(各 1 回以上、2 時間程度)を開催(Web会議を想定)する。専門家に対しては、謝金を支給する。
(7) GLP監視当局活動への支援
1.GLP基準適合試験施設への査察支援業務
GLP 基準適合性確認のために環境省が実施するGLP基準適合施設への査察(2施設)を支援する。支援に当たっては、GLP基準の内容を熟知した上で、業務を実施すること。具体的には、各GLP基準適合施設が提出する試験報告書等の内容を精査し、GLP基準適合性を確認するために必要な情報の整理を行う。また、環境省担当官の査察に同行し、査察結果の指摘事項を整理した上で、指導案を取りまとめた資料を作成する。環境省担当官が指定する査察に同行する専門家(1査察あたり各2名)に対して旅費法に準じた旅費及び謝金を支給する。
2.GLP適合性検討会の開催支援
環境省が委嘱した 7 名の検討員が参加する環境省が開催する GLP 施設の適合性評価を検討する検討会(Web 会議による開催を予定、2回、各3時間程度を想定、検討員 7 名)の開催を支援する。具体的には、検討員との日程調整、資料の作成、Web 会議システムの準備、議事録作成を行う。
3.OECD GLP作業部会活動に対する支援
・ インドGLP監視当局への現地評価に対する支援2022 年7月又は 8 月に実施されるインドGLP 監視当局に対する現地評価に派遣される評価員に対して、日本国内での支援活動を行う。
具体的には、現地評価実施に伴いインド査察当局から送付された資料について前述の GLP原則からの逸脱の有無を確認する評価員の作業を補助する。また、OECDに提出する報告書の作成を補助する。
・ 日本の化学物質 GLP 受診予定の現地評価への準備支援
2023 年に日本の化学物質GLP(厚生労働省、経済産業省及び環境省)が受審する現地評価に対する準備を支援する。具体的には、化学物質 GLP に関する法令、通知及び説明資料等の英訳(A4、100 枚程度)を行う。
(8) 生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー等の開催
化学物質審査規制に関する国内外の動向について、化学物質関連事業者等への情報提供を行うとともに、生態毒性試験法に関する技術的事項について、民間試験機関等への情報提供を通じた能力向上を図ることを目的として、公開のセミナー及び意見交換会を開催する。
1.生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー
請負者はセミナーの開催運営計画を策定の上、日程調整、Webシステムの準備、講演者への依頼手続き、参加者募集・申込受付、セミナーの配付資料の作成及び参加者への配信、当日参加者の確認、及び司会・進行等セミナーの開催・運営に必要な一切の業務を行う。
セミナーは化学物質審査規制の動向と生態毒性試験法に関する技術的事項について実施する。セミナーの開催に際しては、環境省担当官と協議の上決定した講演者(3名、1人あたり1時間の講演)に対して受取の可否を確認した上で、謝金を支給する。
なお、開催日時、内容等について、予定しているものは以下のとおり。
ア)開催日時、場所等
日 時:令和4年 11 月〜令和5年3月頃(1回、5時間程度)
場 所:オンライン会議システムによるリモート開催
事務局として 30 名程度収容できる部屋を用意し、Webシステムを利用できるようにすること。講演者で事務局での参加を希望する場合、旅費法に準じて事務局までの旅費を支給することとする。
応募人数:1,000 名(応募者のみ、講演者、関係者は含まない)
資 料:A4版 100 頁程度(ファイル交換サーバにて配信、資料の作成に当たっては環境省担当官と協議の上、内容等を決定すること。)
講演者:外部講演者3名及び環境省1名(外部講演者は環境省担当官と協議の上、選定する)
イ)セミナー内容(案)
・化審法の最新状況について
・化学物質規制に関する国際動向について
・OECD TG及びGuidance Documentの最新の状況について
・生態毒性試験実施に当たっての留意点について 等
2.GLP試験施設との意見交換会
請負者は、生態毒性 GLP試験施設(8施設を予定)と専門家(2名)及び環境省担当官との意見交換会(Web会議による開催、1回、3時間程度を想定)を開催するための運営計画を策定の上、開催案内の送付、日程調整、Webシステム手配、参加者募集、専門家への参加依頼、資料の作成(A4版、30 頁)、Webシステムの使用、事務局としての20名程度収容できる部屋の準備、及び議事進行・資料説明等の開催・運営に必要な一切の業務を行う。参加者は各試験機関、環境省担当官等を含め 50名程度とする。
3.本業務の成果に関する情報提供
1.の生態影響に関する化学物質審査規制/試験法に関するセミナー及び2.のGLP試験施設との意見交換会において、上記(1)〜(3)項の業務で得られた成果について、環境省担当官と内容を協議の上、発表資料を作成し、情報の提供を行う。
(9) 報告書の作成
上記(1)〜(8)項について、その内容を取りまとめ、報告書を作成する。
今年度の研究概要
同上
- 関連する研究課題
- 26421 : PJ2_脆弱性を考慮した生態系影響の有害性評価と要因解析に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(イ政策対応研究)
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)