- 研究課題コード
- 1921CD018
- 開始/終了年度
- 2019~2021年
- キーワード(日本語)
- 気候変動適応策,社会生態学,熱帯化,サンゴ群集,藻場
- キーワード(英語)
- Climate Change Adaptation Strategy,socioecology,tropicalization,coral community,macroalgal community
研究概要
大型海藻や造礁サンゴは生態系基盤を成し、生態学的・社会経済的な価値が高い。しかし日本の温帯域沿岸では、気候変動の影響によって南方からサンゴが分布を拡大する一方で、海藻の藻場が衰退している。これらの変化は日本の沿岸生態系の構造や機能に影響し、地域の社会経済へも影響すると予想される。本研究課題は、海藻、サンゴ、関連する魚類群集の生態学的研究、およびそれらの生物群集の生態系サービスや利用形態に関する社会経済学的研究を組み合わせることによって、将来の気候変動のもとでの最適な生態系管理方法を策定する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
四国南西部をモデル地域として、海藻とサンゴ、生息する魚類について、以下の研究目的に取り組む。
【目的1】 水温勾配等の環境条件に応じた生態系変化と生物間相互作用の影響、さらに気候変動による短期的・長期的な温度変化による水平分布の変化、土地利用の変化に由来する光透過度の変化による鉛直分布の変化を解析し、三次元の分布変化を推定・予測する。
【目的2】 対象の生態系の生態系サービスについて、”熱帯化”の進行度合いや異なる生態系の管理方法による変化を定量化し、ステークホルダー間の利害関係を理解する。
【目的3】 気候変動の将来気候シナリオに応じた、対象の生態系の変化とそれに伴う生態系サービス変化についての将来予測を行い、変化に対する適応策を提案する。さらに、予測結果に応じたステークホルダー間の利害関係の変化を予測し、公平な利益配分のための判断材料を提供する。
今年度の研究概要
【A気候・環境データの収集・整備】
気候変動の基準となる水平・鉛直方向の海水温データを得るために、統計学的ダウンスケーリング手法を適用し、長期観測データと高空間解像度データを合成する。さらに、海水温の将来予測値として、気候モデル の将来予測値(RCP2.6、RCP8.5)を整備し、同様に高解像度化する。
【B海藻、サンゴ、魚類の分布記録の収集・整備】
対象海域について、研究対象の生物群の出現記録(在・不在)をデータベースや論文、紀要、報告書などの文献が新たに見つかっており、追加の入力・整備作業を行う。
【C海藻、サンゴ、魚類の分布の野外調査・野外実験】
前年度に引き続き、対象生物群の分布の緯度勾配と空間的相互作用、それらの年変動を捉えるための調査・実験を行う。高知県の南西端から東方の4地域、愛媛県の柏島以北の5地域、さらに各地域内に設けた各2~5サイトを設け、対象生物群の分布状況を調べるビデオトランセクト調査を行う。カメラは鉛直方向(海藻、サンゴ)と水平方向(魚類)の2台を1セットとし、カメラに取り付けた水深データロガーと海面に浮かせたGPSで3Dの位置情報を記録しながら遊泳し撮影する。また、ビデオカメラで移植した海藻を撮影し、魚類による植食圧の評価を行う。
【D社会経済学的研究】
海藻藻場やサンゴ群集が提供する生態系サービス(生物多様性、食料源、炭素貯留、沿岸地域の生活、経済、リクリエーションなど)を特定する。また、それらの生態系サービスに関連する経済的価値を評価するために、統計情報およびweb情報を利用した調査を行う。
【E統合的解析・予測】
上記の各パートから得られるデータから生態学・社会学を統合する予備的な解析を行う。
(研究の見通しはコロナ影響により大きく影響を受け、大きな変更・縮小がありうる)
外部との連携
共同研究者:Garcia Molinos, Jorge(北海道大学)、中村洋平(高知大学)
研究協力者:Ojea, Elena(University of Vigo, Spain)