ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

非意図的に副生成する臭素系ダイオキシン類の包括的なリスク管理とTEF提示(平成 29年度)
A comprehensive risk management and presentation of toxicity equivalency factors for unintentional brominated dioxin-like compounds

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 5-1705
研究課題コード
1717BA001
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
臭素化ダイオキシン類,臭素化塩素化ダイオキシン類,排出源対策,毒性等価係数
キーワード(英語)
Brominated dioxins, Mix bromochloro dioxins, Emission source control, Toxic equivalency factor

研究概要

 臭素系ダイオキシン類は、難燃剤の中で最も生産量の多い臭素系難燃剤を取扱う動脈・静脈産業を中心として、塩素化ダイオキシン類の排出基準に相当する値を大幅に超過する排出事例が国内外で散見されている。環境省は排出実態調査を継続しているが、排出源や測定対象物質は現状の分析法の限界から網羅できていない。また、適切なリスク管理には、世界保健機構(WHO)と国連環境計画(UNEP)の専門家会合が要求している通り、毒性等価係数(TEF)を補完する必要がある。
 申請研究では、(1)スクリーニング性と物質包括性を兼ね備える包括的迅速検出法を開発して、環境省と連携して排出実態調査を実施する。また、(2)環境中で検出される毒性未知の臭素系ダイオキシン類の魚類・哺乳類毒性情報を補完して、リスク管理に資するTEFを算出する。(1)では、申請者らが開発した塩素化ダイオキシン類と臭素化ダイオキシン類を分別評価する生物検定スクリーニング法とGCxGC-HRToFMSによるハロゲン化ダイオキシン類の網羅検出法を最適化して、包括的迅速検出法を開発する。開発手法の適用によって、これまでの環境省調査を拡充して重要排出源スクリーニング及び重要排出源における挙動・消長に関する詳細調査を包括的に実施する。(2)では、排水や排出ガスで検出される異性体を対象として、魚類急性・生殖毒性評価や哺乳類行動毒性評価に基づくTEF評価を実施する。終局的には、重要排出源におけるリスク管理方針を提示すると共に、排出インベントリー整備や排出削減に向けた技術・政策の検討に資する基礎データとして取りまとめを行う。
 臭素系ダイオキシン類は、WHO-TEFによるリスク管理が提言され、国際的にも塩素化ダイオキシン類と同様に取り扱う方針が示された。申請研究は、包括的迅速検出法による国際的な臭素系ダイオキシン類対策推進への貢献や、WHO/UNEP専門家会合による臭素系ダイオキシン類独自のTEF設定に際しての毒性学的知見の提供も狙いとする。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

 本研究では、臭素系ダイオキシン類を対象として、環境省やWHO/UNEPが推進する化学物質管理政策への貢献を目的とした政策貢献的モニタリングと毒性評価を実施する。具体的には、次のサブテーマを実施して当該目的を達成する。

サブテーマ1:臭素系ダイオキシン類の包括的迅速検出法の開発と政策貢献的モニタリング
 サブテーマ1では、生物検定スクリーニング法とGCxGC-HRToFMS等網羅検出法についてそれぞれ最適化を行い、TEFスキームに基づく臭素系ダイオキシン類を含むダイオキシン類縁化合物の包括的迅速検出法を開発する。当該検出法による政策貢献モニタリングを環境省と連携実施して、重要排出源スクリーニングや重要な各種排出源における詳細調査を実施してリスク管理に資する実測データを得る。終局的には、サブ2及び3で得られるTEFを考慮した重要排出源における臭素系ダイオキシン類のリスク管理方針を提示すると共に、排出削減に向けた技術・政策の検討に資する基礎データとして取りまとめを行う。

サブテーマ2及び3:排水及び排出ガスで検出される臭素系ダイオキシン類の魚類及び哺乳類毒性評価
 サブテーマ2では、メダカによるOECD TG212「魚類の胚・仔魚期における短期毒性試験」に準拠した毒性試験を用いて、2,3,7,8-TCDDを基準とした臭素系ダイオキシン類の急性毒性及び繁殖毒性に基づくTEFを算出する。サブテーマ3では、マウスによる行動柔軟性や社会的優位性等を評価指標とする行動毒性試験を用いて、2,3,7,8-TCDDを基準とした臭素系ダイオキシン類の高次脳機能障害に基づくTEFを算出する。サブテーマ2及び3では、環境中で検出される評価重要度の高い臭素系ダイオキシン類4異性体を対象として、リスク管理に資する実際的なTEFを整備する。

今年度の研究概要

サブテーマ1:臭素系ダイオキシン類の包括的迅速検出法の開発と政策貢献的モニタリング
 包括的迅速検出法を開発するため、塩素化/臭素化ダイオキシン類を分別して検出する生物検定法スクリーニング法とハロゲン化ダイオキシン類を対象としたGCxGC-HRToFMS等網羅検出法の最適化を行う。環境省水・大気環境局及びダイオキシン対策室と打合せを行い、臭素系ダイオキシン類の排出実態調査の計画立案を行う。調査施設をリストアップし、排水や排出ガス、下水流入水などの各種施設に応じた採取試料を決める。環境省を通じて試料採取の許可が得られた施設を対象として、包括的迅速検出法による政策貢献モニタリングを開始する。

サブテーマ2:排水で検出される臭素系ダイオキシン類の魚類毒性評価
 2,3,7,8-TCDDを対象として、メダカによるOECD TG212に準拠した毒性試験を実施する。化学物質曝露は、受精卵から仔魚に成長するまで実施し、エンドポイントは、ふ化以前が心拍数・血管形成・血流異常、ふ化後がふ化率・奇形率・生存率・遊泳行動とする。曝露後のふ化個体の一部は、60日齢まで飼育して、エンドポイントとして表現型の性と遺伝的な性の一致性を確認する。さらに曝露後のふ化個体は、繁殖試験も実施して、エンドポイントとして産卵数・受精率・受精卵のふ化率も求める。各エンドポイントの効果濃度や最小影響濃度を算出する。

サブテーマ3:排出ガスで検出される臭素系ダイオキシン類の哺乳類毒性評価
 2,3,7,8-TCDDを妊娠12.5日目のマウスに単回投与して、胎仔脳への移行量を評価する。次いで、同じく2,3,7,8-TCDDを妊娠12.5日目のマウスに単回投与して、出生後の仔マウスを対象として行動柔軟性や社会的優位性等を評価指標とする集団型全自動・記憶学習測定システムIntelliCageによる行動毒性試験を実施する。各エンドポイントの効果濃度や最小影響濃度を算出する。

外部との連携

愛媛大学

課題代表者

鈴木 剛

  • 資源循環領域
    資源循環基盤技術研究室
  • 主幹研究員
  • 農学博士
  • 生化学,化学
portrait

担当者