「第21回全国環境研究所交流シンポジウム」報告
上野 隆平
平成18年2月22~23日にかけて「大気環境研究の現状と将来 -都市大気汚染・越境大気汚染・酸性雨-」をテーマに,第21回全国環境研究所交流シンポジウムを当研究所の大山記念ホールを会場として開催した。本シンポジウムは,「環境研究に関する研究発表,意見交換を通じて地方環境研究所(以下,地環研)と国立環境研究所(以下,国環研)の研究者間の交流を図り,共同研究等の新たな展開に役立てると共に,環境研究の一層の推進を図ることを目的とする(全国環境研究所交流シンポジウム実施要領)」という趣旨で実施しているもので,第1回の昭和61年以来,毎年,第4四半期に開催している。なお,当初は「全国公害研究所交流シンポジウム」との命名で始まったが,「公害」から「環境」へという時代のすう勢に合わせて,「全国環境・公害研究所交流シンポジウム」,そして現在の「全国環境研究所交流シンポジウム」とその名称が変遷している。
今回のシンポジウムテーマは,全国環境研協議会加盟機関へのアンケート結果に基づき決めたものであるが,「大気汚染」については昨年来,国環研の研究者からもテーマとしての要望があり,それも反映したものとなった。当日のシンポジウムは,添付のプログラムにあるように,国立環境研究所PM2.5・DEP研究プロジェクトの若松伸司プロジェクトリーダーによる基調講演「都市大気汚染研究の展望 ~国立環境研究所と地方環境研究所との共同研究を中心として~」に始まり,「光化学オキシダント」「SPM・有害物質」「酸性雨」の3つのセッションにおいて計27の講演及び活発な討論が行われた。
なお,シンポジウム両日の延べ参加者は263名に上り,シンポジウム終了後の見学会にも19名の参加を得,ナノ粒子健康影響実験施設等の所内研究施設を見学して頂いた。
【プログラム】
平成18年2月22日(水)
開会挨拶 国立環境研究所理事長 大塚柳太郎
来賓挨拶 環境省総合環境政策局環境研究技術室長補佐 片山雅英
基調講演 (座長:大原利眞)
「都市大気汚染研究の展望 ~国立環境研究所と地方環境研究所との共同研究を中心として~」
○若松伸司(国立環境研究所)
研究発表
セッション1: 光化学オキシダント (座長:大原利眞)
(1)「オゾン等の予報システムの現状と課題について」
○菅田誠治,大原利眞,宮下七重,早崎将光(国立環境研究所),江原 孝(茨城県霞ヶ浦環境科学センター),武藤洋介(埼玉県環境科学国際センター),石井康一郎(東京都環境科学研究所)
(2)「日本における光化学オキシダント等の挙動解明に関する研究」
○山川和彦(京都府保健環境研究所),若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・地方環境研究機関(C型)共同研究グループ
(3)「大阪平野におけるオキシダント濃度の解析-海風前線の影響について-」
○吉村 陽(兵庫県立健康環境科学研究センター),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(4)「夜間にオキシダント濃度が下がらない原因について」
○三原利之 (岐阜県保健環境研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所)」,若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(5)「平均気温,日照時間とオキシダント濃度の長期変動について」
○田中孝典(島根県保健環境科学研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所),若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(6)「光化学オキシダント濃度の上昇に対する高層大気の影響」
○山﨑 誠(福岡市保健環境研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所),若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(7)「光化学オキシダント高濃度時におけるヒートアイランドの状況」
○飯田信行(神奈川県環境科学センター),飯村文成 (東京都環境科学研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所),若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(8)「オキシダント濃度月別出現パターンの広域的分布」
○森 淳子(長崎県衛生公害研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所),宮下七重,若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所C型共同研究グループ
(9)「光化学オキシダント高濃度現象と比湿および 7Beとの関係について」
○大石興弘,田上四郎,岩本真二(福岡県保健環境研究所),山川和彦(京都府保健環境研究所),若松伸司(国立環境研究所),国立環境研究所・C型共同研究グループ
(10)「光化学オキシダントとNOx・SPMとの関連及びウイークエンド効果の検証」
○大野隆史(名古屋市環境科学研究所),板野泰之(大阪市立環境科学研究所)
(11)「光化学オキシダントが農作物におよぼす影響」
○米倉哲志 (埼玉県環境科学国際センター)
セッション2: SPM・有害物質 (座長:畠山史郎)
(12)「2004年春に沖縄で捕集された大気エアロゾルの有機組成分析」
○佐藤 圭(国立環境研究所),李 紅(中国環境科学院),畠山史郎(国立環境研究所)
(13)「宮城県におけるPM2.5自動測定結果について」
○中村栄一,菅原隆一,高橋正人,加賀谷秀樹(宮城県保健環境センター)
(14)「群馬県におけるSPMの組成と挙動」
○飯島明宏,熊谷貴美代,田子 博(群馬県衛生環境研究所)
(15)「都内大気中VOCの多成分モニタリングとその排出源の推定について」
○星 純也(東京都環境科学研究所)
(16)「離島及び山間地における大気中POPs及びPAHs濃度の季節変動」
○村山 等,鈴木貴博,家合浩明,旗本尚樹,富永泰子,渋谷信雄(新潟県保健環境科学研究所)
2月23日(木)
セッション3: 酸性雨 (座長:村野健太郎)
(17)「千葉県における大気中ガス状アンモニア濃度分布」
○横山新紀(千葉県環境研究センター)
(18)「パッシブ簡易測定法(N式)による酸性ガスの測定」
○西川嘉範(大阪府環境情報センター)
(19)「フィルターパック法による粒子・ガス成分濃度 -第4次調査第1年次調査結果-」
○山本匡利1,松本利恵2,野口 泉3,志田義美4,川村 實5,藍川昌秀1,全国環境研協議会酸性雨調査研究部会(1兵庫県立健康環境科学研究センター,2埼玉県環境科学国際センター,3北海道環境科学研究センター,4福島県環境センター,5長野県北信保健所)
(20)「乾性沈着量推計ファイルの開発と沈着速度の分布図作成」
○野口 泉(北海道環境科学研究センター),松田和秀(明星大学)
(21)「フィルターパック法を用いた降水中主要成分の洗浄比観測」
○福崎紀夫(新潟県保健環境科学研究所),伴 聡美((財)新潟県環境衛生研究所),前田正人((財)上越環境科学センター),戸塚 績((元)酸性雨研究センター)(座長:清水英幸)
(22)「酸性雨自動測定結果の評価指標と降水特性」
○仁平 明,高橋正人,中村栄一,北村洋子,加賀谷秀樹(宮城県保健環境センター)
(23)「降水成分に反映される地域汚染」
○北村洋子,佐久間 隆,小泉俊一,木戸一博,加賀谷秀樹(宮城県保健環境センター)
(24)「富山県における酸性雨の経年変化について」
○溝口俊明,鳥山成一,奥村秀一,藤崎 進,日吉真一郎,山崎敬久,木戸瑞佳,中村篤博(富山県環境科学センター)
(25)「九州地方における酸性雨調査結果」
○友寄喜貴(沖縄県衛生環境研究所),森 淳子(長崎県衛生公害研究所),全国環境研協議会・酸性雨調査研究部会九州支部
(26)「酸性雨・越境大気汚染問題の現状と今後」
○村野健太郎(国立環境研究所)
閉会挨拶 国立環境研究所理事長 大塚柳太郎