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それぞれの職責

巻頭言

森口 祐一

 本年4月1日付で循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長を拝命し,半年余りが過ぎた。今年度末で独立行政法人としての第1期中期計画期間が終了し,次期に向けての舵取りが求められる大事な時期にバトンを受け取った。文字どおり重責ではあるが,周囲の多くの方々に支えられ,忙しくも充実した日々を送らせていただいている。

 酒井伸一初代センター長のもと,発足以来4年間,循環型社会形成システム研究室長としてセンターの一端を担ってきたとはいえ,センターの活動の全貌を理解していたとは言い難く,にわか勉強で職責を果たすべく努力している。「職責」というような言葉は研究者には似合わない,とお叱りを受けるかもしれないが,「責」を担うという気概と緊張感は持っていたい性分である。

 それは,研究者としては明らかに異端といえる道を辿ったためかもしれない。今から思えば,研究者の何たるかがろくにわからないまま,研究者という職への一歩を踏み出したといえる。研究者を志したというよりも,環境問題のために自分が一番貢献できそうな職は何か,と生意気なことを考えてこの道を選んだ。国家公務員試験を受け,厚生省や環境庁へと官庁訪問もした。縁あって当時の国立公害研究所に採用されたが,2年後には環境庁で行政を学ぶ機会を与えられ,さらに2年後にはパリのOECD(経済協力開発機構)事務局へ赴任し,1年2ヵ月を過ごした。在外勤務の後,研究所へ戻ったが,真っ当な道を歩めば博士後期課程で研究に没頭する3年間に相当する期間を,環境行政,国際公務で過ごした計算になる。その後,研究者にとってのいわば免許といえる博士号を論文博士で取得したが,研究者の王道を歩まれた方々からみれば,無免許運転まがいの行路と映るだろう。

 専門分野,といえるほど深く掘り下げた研究テーマを持っているのかと自問自答することもあるが,部分と全体のつながりを見るシステム思考は,環境問題にとって重要な要素であると考える。これは,学ぶというよりも,On the jobで身についた感がある。廃棄物処理が水処理とともに主流とされる衛生工学科の卒業ではあるが,廃棄物を専門としてきたわけではない。大気汚染,温暖化,エネルギー,資源と回り道をし,物質フロー研究を経て,循環型社会・廃棄物という分野に本格的に取組むことになった。循環型社会に,「社会」という語が入っていることの重みを感じることが多いが,当研究所の「社会系」(入所当時の総合解析部,現在の社会環境システム研究領域を中心とする研究分野)に長く在籍してきたことの経験を活かしていきたい。

 このように,他とは違うキャリアパスを歩ませていただいた経験を最大限活用することも,また職責であると考える。当センターは政策対応型調査・研究センターとして位置付けられ,行政との密接な連携を求められる部署である。霞ヶ関との適度な距離を保ちながら,学術的な研究成果を通じて政策の立案や実施に密接に関われる点で,国立環境研究所ほど恵まれた職場は珍しいだろう。むろん,政策とは一見無縁にみえる基礎研究の場としても,申し分ないところである。その多様性と自由度が,国立環境研究所の宝であり,「学問の自由」を尊重し,それを存分に生かした研究に没頭することも,有る意味での職責なのだと感じる。

 本来は,循環型社会研究,廃棄物研究の将来展望や抱負を述べるために与えられた紙幅であったかもしれないが,思うところを述べさせていただいた。組織形態の変わり目にあっても,それにいたずらに翻弄されることなく,これまで培われてきたこの組織の長所を最大限に生かして,環境問題の改善・解決に向けた知的活動に勤しむことが,責務であり,喜びでもある。今後ともご支援をお願いしたい。

 (もりぐち ゆういち,循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長)

執筆者プロフィール:

マニアというほどではないが,鉄道を好む。都内各地での仕事が多いこともあり,短時間の乗り換えは,もはや特技の域。つくばエクスプレスの開通で新たな最短ルートを探索中。趣味はボウリング,のはずだが,最近足が遠のいている。